ひとり井戸端会議

主に政治・社会・法に関する話題を自分の視点から考察していきます。

最低投票率は必要なのか?

2007年04月20日 | 憲法関係
 前回に引き続き、今回も憲法改正に関して書いていきたいと思います。

 最低投票率。国民投票法案が衆院を通過した途端、俄かに聞く機会の多くなった言葉です。これは、憲法改正の国民投票に際して、改正が行われるには、一定の投票率を設けるべきだ、というものですが、現在参院で審議されている同法案には、このことについて何ら規定が置かれていません。そこで、野党や一部メディアが、最低投票率を設けるべきだという主張しています。

 もちろん、国民投票の当日に、天災などの不可抗力によって投票に行けない人が出てくるという可能性はあるでしょう。しかし、憲法改正に関する国民投票は、国政において日本が間接民主制を採用している中で、唯一の例外として直接民意を反映させるものです。国民が憲法改正について、直接意見を表明するということは、民主主義国家において、極めて重要なものであると思います。

 思うに、それ程重要であるにも関わらず、投票に(行けないのではなく)行かないのであるならば、彼らは投票に行く国民に、自己の意思を「白紙委任」したものと解すべきだと。そして、これは民意を反映させようとしなかった(怠った)国民が責任を負うべきであり、法案で配慮をする必要はない、と。更に、行けなかった国民にまで配慮をしていては埒があかないと思います。

 ここで、仮に最低投票率のハードルを60%に設定した場合を考えましょう。

 そうすると、もし55%の18歳以上の国民が投票に行ったとしても(投票に行った国民が憲法改正に賛成か反対かは別として)、これでは投票自体無効となってしまいます。そうなると、主権の行使をした国民が、主権を行使しなかった国民に従わなくてはならないということになります。これでは、何のために憲法の条文が改正に関して規定しているのか、その意味が没却されかねません。

 加えて、すでに与党などから指摘されていることですが、最低投票率を定めた場合、護憲派が投票のボイコットを呼びかける可能性も考えられます。この他の選挙では投票を呼びかけて、憲法改正には投票に行くなとは、矛盾も甚だしいですが、何よりも、フェアな投票を期待することが難しくなると思います。

 通説でも、憲法96条の言う「過半数」とは、「有効投票の過半数である」(衣川光正編著『憲法の要点』学陽書房 2002年 196頁、芦部信喜著『憲法』岩波書店 2001年 355頁)と解されている以上、最低投票率を設ける必要はないのではないでしょうか。

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