ひとり井戸端会議

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とてつもない欺瞞

2010年11月24日 | 憲法関係
防衛次官通達、「憲法上問題ない」…内閣法制局(読売新聞) - goo ニュース

 防衛省と内閣法制局は22日の参院予算委員会理事会で、政治的発言をする部外者を自衛隊関連行事に呼ばないよう求めた防衛次官の通達について、「憲法で保障された表現の自由等との関係で問題となるものではない」との見解を示した文書を提出した。
 文書は、「通達は隊員にあてて示されているもので、一般の国民の行為を規制しようとするものではない」と記している。



 これを欺瞞と言わずして一体何というのか。この通達が「民間人の」表現の自由を侵害することは明らかである。開いた口が塞がらない。

 以前、「恣意的な通達は許されない」で書いたように、通達というのは、行政内部での意思の統一を図り、国家意思の分裂を防ぐ目的をもって発せられるものである。したがって、民間人を直接拘束する法的な力は存在しないし、そもそも民間人を通達をもって拘束するのは許されない。

 この記事には「通達は隊員にあてて示されている」とあるが、それは通達なのだから当然であって、問題は、そうした通達によって、結果的に民間人の言論が規制されるという事態が生じているということである。

 確かに、表現の自由といえども絶対不可侵のものではないだろう。しかしながら、表現の自由とは「こわれ易く傷つき易い」権利(芦部信喜『憲法』)と言われ、民主主義を支えるのに欠かせないものとされる。したがって、表現の自由は可能な限り保障されなければならないとするのが憲法の立場であるとされる。

 また、確かに今回の通達の発端となった発言とされる、「一刻も早く菅政権をぶっつぶして」という挨拶はいささか過激なものであっただろう。しかし、この挨拶をもって「政治的発言」をするような団体ないしは個人を自衛隊の行事に参加させないよう通達を発するのは論理の飛躍も甚だしいものだ(何故ならば、民主党政権批判と政治的発言とでは両者の概念の幅は余りにも異なるため)。


 そもそもだ。当該通達の対象は自衛官であったとしても、「政治的発言(=民主党批判)をするような民間人」をターゲットにしたものであることに変わりはないのであるから、この通達は言うなれば自衛官をクッションとして通達と民間人の間に挟むだけに等しく、やはり結果として民間人の言論封殺をもたらすのは間違いないのだから、当該通達が憲法に照らして問題がないとするのは詭弁でしかない。


 だいたい、揚げ足取りになるが、仙谷氏は当該通達の意図について、「防衛省で規律を保持する」ためであると述べるが、ならば自衛隊基地の外で拡声器で基地内に聞こえるように「民主党政権なんかぶっ潰せ!」と叫ぶことだって自衛隊の「規律保持」の面からすれば大いに問題があると思うが、その意図からすればこのような場での「政治的発言」も通達によって封殺しなければならないだろう(この場合、公務執行妨害罪等別の犯罪になる可能性はあるが)。当然のことながら、自衛隊の基地の外で「反自衛隊」活動という政治活動をしている民間人も通達によって排除されなければならない。

 もっと言えば、いくら自衛官といっても、ネットや新聞報道、テレビ等で「民主党政権」に対する「政治的発言」をいくらでも耳にする機会があると思うが、こうした場合も民主党の理屈でいけば「規律保持」の面から問題があると言えるが、これらは良くて自衛隊基地内での、しかも民間人の「政治的発言」がダメな理由は一体何なのか?



 このように、当該通達はこれを正当視できる理由は皆無である。したがって、こんなファシズム紛いの通達は速やかに撤回しなければならない。撤回しないならば、民主党はファシズム政党だと堂々と表明しなければならない。

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