ひとり井戸端会議

主に政治・社会・法に関する話題を自分の視点から考察していきます。

国旗損壊罪について

2012年05月31日 | 民事法関係
日の丸損壊罪の法案提出=自民(時事通信) - goo ニュース

 自民党は29日、日の丸を傷つけたり汚したりする行為を罰する国旗損壊罪を創設するための刑法改正案を衆院に提出した。現行法が外国国旗の損壊罪を定める一方、日の丸の損壊を処罰対象としていないことを問題視した。
 法案では、日本を侮辱する目的で日の丸を損壊・除去・汚損した場合、2年以下の懲役または20万円以下の罰金を科すとしている。



 まず、賛成か反対かということについて、結論から先に言うと、賛成よりの反対です。その理由について、少し長くなりますが、述べていきたいと思います。


 最初に、この法案と関係する刑法上の規定を挙げてみましょう。

 現行刑法では、外国国章については、92条において外国国章損壊罪が設けられており、外国国章が自己の物であるか否かに関係なく、「外国に対して侮辱を与える目的」で、外国国章を損壊、除去、汚損した者は、2年以下の懲役または20万円以下の罰金刑に処されることになっています。

 ここから分かることは、自民党の法案は、構成要件および法定刑にについて、同条の規定と歩調を合わせたものと言えるでしょう。


 また、刑法では、器物損壊罪についても規定しています。器物損壊罪の場合には、その法定刑は3年以上の懲役または30万円以下の罰金ですので、自民党案よりも重いものになっています。ただし、器物損壊罪は、その客体は「他人の所有物」に限定されていますので、自己所有の国旗(日章旗)を損壊しても、器物損壊罪で罰するのは不可能です。

 とはいえ、同時に刑法は自己の物の損壊等について262条で規定していますが、同条は差押えを受けた物件等、すなわち、自己の所有物であっても、その処分が他人の権利にも関係する場合に限定されていますので、同条で日章旗の毀損等を罰せるとしても、たとえば日章旗が差押えの対象になっている場合等に限られますので、その効果は非常に限定的でしょう。



 ところで、しばしば外国国章の損壊等が罰せられるのに、日章旗の損壊が罰せられないのはおかしいという指摘がありますが、外国国章の損壊行為を処罰することにしたのは、そうした行為を罰しないとなると日本の外交上問題があるので罰することにしたというものですから、立法の趣旨が異なるので、同じ国旗といえども、同列に比較して論じるのは無理があります。

 したがって、日章旗の損壊行為の処罰を正当化する理由にはならないと考えるべきです。



 翻って自民党案を見てみると、それは外国国章損壊罪の日章旗バージョンと言えるでしょう。また、日章旗は国旗なので(国旗及び国歌に関する法律1条1項)、これを損壊等する場合には国家の法益が侵害されていると考えられるでしょうから、したがって、法益としては国家的法益の保護に属するものでしょう。

 しかしながら、ここで問題となるのが、①何をもって「侮辱をした」と判断するのか、ということと、②先述した他の類似する規定と競合した場合、すなわち日章旗の毀損行為が複数の刑法上の規定に該当する場合、これをどうやって処理するのか、それから、③そもそも刑法上にかかる規定を設けることが妥当なのかどうか、という点だと思います。


 ①ですが、この場合に参考になるのは侮辱罪(刑法231条)の規定でしょうか。同条の侮辱罪が成立するかは、侮辱行為を行った者が侮辱や軽蔑の感情を抱いていたかどうかは関係なく、その侮辱行為の客観的な意味によって決定されますから、自民党案が成立した場合、たとえば反日デモ(これも、何をもって反日とするのかが問題ですが。)に参加し、そこで日章旗を焼いたり踏みつぶしたりすれば、日章旗の毀損と言えるので、処罰されることになるでしょう。

 ②についてですが、たとえば他人の日章旗を使って反日デモに参加して国旗を毀損した者がいた場合、器物損壊罪と国旗(日章旗)損壊罪の両方が競合し、他人の物についての器物損壊罪のほうが成立しますが、国旗(日章旗)損壊罪の立法趣旨からして、このことは容認できるのか。

 最後に③ですが、国旗(日章旗)損壊罪の立法趣旨からして、刑法に規定を設けるよりは、国旗及び国歌に関する法律を改正して、ここに規定すべき内容のものではないかと思います。

 しかしながら、これをしてしまうと、一般法(刑法)の規定と特別法(国旗及び国歌に関する法律)の規定とでは、特別法の規定が優先的に適用されるため、②で示した例では、日章旗が他人の物であっても国旗(日章旗)損壊罪が優先して成立するため、器物損壊罪よりも罰則が軽くなってしまうという弊害が出てくるのが問題です。



 以上は自民党案に好意的な立場からの問題提起ですが、個人的には、当然ですが、自国の国旗を破ったりする行為には腹が立ちますし、そのような行為をする者の人間性を疑いますが、こうした行為はあくまでも倫理的非難に留めるべきで、刑法上の処罰まで持ち出すのは行き過ぎだと思います。

 それに、もしこの自民党案が成立したとしても、おそらく今まで日章旗を損壊してきた連中は、あの手この手を駆使して、法の抜け穴を探るに違いありません。

 たとえば、日章旗に似せた旗を同じように損壊しても、結局自民党案では罰せられないですし、私としては、正面から日章旗を通じて日本を侮辱する行為よりも、このような日章旗のパロディを作られ自国を侮辱されるほうが腹が立ちます。

 このような連中の対応は、式典等で君が代の斉唱を拒絶する日教組の教師が、君が代にそっくりの、日本を侮辱する英語のパロディ曲を作って、これを歌って君が代を歌っているように見せかけた「前科」からして、容易に想像がつきます。

 なので、結局このような法案が成立したところで、連中の悪態が改善されることを期待するのは無理ですし、むしろ連中の反日行為を勢いづかせかねないか危惧しています。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。