ものぐさ屁理屈研究室

誰も私に問わなければ、
私はそれを知っている。
誰か問う者に説明しようとすれば、
私はそれを知ってはいない。

レイダリオ「Principles For Dealing With The Changing World Order: Why Nations Succeed Or Fail 」その1

2022-04-15 12:00:00 | 着眼大局


レイダリオの新刊をようやく読み終わった。576ページと大部な著作で、これもそのうち翻訳が出るだろうが、普通、日本語にすると大体2倍から3倍の分量になるので、下手をすると三分冊になるのかもしれない。しかし、贔屓の引き倒しで敢えて言うと、この本はmust・readである。

贔屓の引き倒しというのは、現在の世界情勢に関する分析が、読んでいて笑っちゃうくらい私の考えていることと同じだからである。勿論、レイダリオ氏と私ではその立ち位置が異なり、読み筋のベクトルも異なるので、それがまた色々と考えさせられる記述も多く、そういう意味では非常に啓発的な充実した読書体験であった。

現在、世界はロシア・ウクライナ紛争(正確にはロシア・NATO紛争と呼ぶべきだろう)で喧しいが、こうした紛争や戦争というものは、歴史の大きな力によって起こるべくして起こっているので、例えばプーチンさえいなくなればこの紛争が終結するといったおめでたい話ではないだろう。こうした紛争だとか戦争だとかは、言わば海面上の泡沫であって、その下には滔々と流れている大きな海流が存在する。この著作は、現在進行中の、その歴史の大きな流れのうねりについて考察した啓発的な著作として、お勧めするものである。さらに、出来れば、内容を立体的に理解する上で、前に挙げた柄谷行人氏の『帝国の構造: 中心・周辺・亜周辺』と合わせ読みをすることを強くお勧めする次第である。



内容については、以下の動画が網羅的ではないにしてもわかりやすくまとめている。

【投資の帝王】レイダリオ新刊!投資の歴史と、帝国の栄枯盛衰について


最後にこの動画では、分散投資を推奨しているのは私には疑問であるが、以下、そのあたりの問題意識も混ぜて、直近の幾つかの主要トピックを関連付けて、少し私見を述べてみよう。

まずは、ロシア・ウクライナ紛争であるが、私はマスコミの報道姿勢や政府の行動についてはドン引きで眺めている。そこには諦めの混じった複雑な思いがあるのだが、予想通りだからでもある。日本の国益を考えたら、この紛争には巻き込まれないことが第一だと思うのだが、どうしても”ポチ”としての習性から抜け出すことが出来ないためか、今回もしっぽを振ってアメリカ側に付いて、ロシアに対する制裁組に加わったのは周知の事実である。今回の岸田政権の行動は、私の目には、かって「イラクに大量破壊兵器がある」というアメリカのプロパガンダに、いち早く賛成の手を挙げた小泉政権の行動と、二重写しになって映る。

私が言いたいのは、「ブチャの虐殺」は、「イラクの大量破壊兵器」と同様確認されていないと言うことである。

例えば、この記事の内容は実に真っ当なことを言っていると私には思われるのだが、どう思われるであろうか。


The Bucha Genocide Is Not Confirmed

<ブチャの大虐殺は、現時点では額面通りに受け取ってはいけない。どうしても調査が必要です。アメリカのメディア、あるいは私たちが知っているレガシーメディアは、この主張を確認していない。CBSニュースや他のネットワークは、ウクライナ人の主張を取り上げ、証明された事実であるかのように発表したりテレビ放映したりしているだけである。

この底流にある問題は、欧米をロシアとの全面戦争に誘い込むために、ウクライナが数々の嘘と終わりのないプロパガンダを押し付けてきたことである。実際、米国の一部のメディアは表立って戦争を呼びかけている。

第三次世界大戦や核の対立につながりかねない戦争に突入させようとする人たちを信用できますか?


事実は確認されていない。

ロイターは、関係者の話として、ペンタゴンはウクライナのブチャでの残虐行為を独自に確認することができないと報じた。
米軍は、ロシア軍によるブチャの町の民間人に対する残虐行為に関するウクライナ人の証言を独自に確認できる立場にはないが、その証言に異議を唱える理由もない、と米国防総省高官が月曜日に述べた。

「我々は、あなた方と同じ画像を見ている。この残虐行為に関するウクライナの主張に反論する理由は全くない。明らかに、深く、厄介だ。我々は独自に確認することはできないが、そのような主張に反論する立場にもない」と、この高官は匿名を条件に語った。

この発言は馬鹿げている。彼らは見たものを理解しようとしているのだろうか?

ニューヨーク・タイムズも同様に確認できないと述べている。タイムズ紙は、まだ答えが出ていない疑問があると指摘する専門家の言葉を引用している。ニューヨークタイムズ、AP通信、その他の国際的な報道機関のジャーナリストがブチャや近郊の町に到着し、通りに散乱する私服姿の遺体や、庭に一緒に横たわる少なくとも9体の遺体を撮影しているのも事実だ。いくつかのケースでは、両手が背中で縛られていた。

ウクライナのイリナ・ヴェネディクトヴァ検事総長は、キエフ地方で民間人とみられる410人の遺体を収容したと、日曜日にフェイスブックに投稿した。タイムズ紙はこの数字を独自に確認することができなかった・・・・

誰が彼らを処刑し、縛り付けたのか。それらはウクライナ人なのか?

・・・戦争犯罪事件はハーグの国際刑事裁判所に提訴することができるが、起訴を成功させるのは険しい道のりだと専門家は言う。

国際法の専門家であるデイビッド・シェファー氏は、「法廷で証明するのは難しいだろう」と述べた。「状況は不明だ。誰が処刑したのか。誰が彼らの手を縛ったのか。これは非常に困難で詳細な調査を必要とするだろう」・・・。

・・・ロシア国防省は日曜日、ブチャで自軍が残虐行為を行ったという非難をすべて拒否し、町がロシアの支配下にある間、民間人は「一人も」負傷していないと述べた。この地域の写真やビデオ映像は、「ウクライナ政府によって演出されたもの」だという。

ロシアはこの非難を否定し、人々は自由に歩き回り、去ろうと思えば去れたと述べている。嘘であれば "挑発 "であるとしている。

ジャーナリストのグレン・グリーンウォルドはこうツイートした。ウクライナ当局が投稿した恐ろしいが文脈も証拠もない写真やビデオのために、感情的にアメリカがロシアと戦争することを要求し、第3次世界大戦を始めようと躍起になっているツイッター専門家とは全く対照的に、NYTは懐疑論を展開している。

アントニー・ブリンケン国務長官は、鍋をかき回すためにできることは何でもしている。国防総省が残虐行為を確認できないのに、それが証明されているかのように振る舞っている。これは無謀だ。>


日本の報道も同様で、判で押したように「鬼畜英米ならぬ鬼畜ロシアを罰する」勧善懲悪姿勢丸出しで報道しているが、ジャーナリズムの基本である”裏を取る”作業は、全く行われていないと言ってよいだろう。

例えばこの動画。

「“虐殺”はでっち上げ」駐日ロシア大使単独インタビューで語る【報道特集】


<私たちの仲間とかジャーナリストが、実際に何があったのか現地で住民に聞いているんですよ。遺体も見ましたよ。・・・私の仲間が取材した内容を信じたいと思うから言っているんですよ。>

この記者のロジックでは、単に証言があると言っているだけで、ハーグの国際刑事裁判所での戦争犯罪裁判となれば、証言内容の事実性が争われるであろう。果たして、彼に証言内容を裏付ける証拠の提出が出来るであろうか。出来ないであろう。この後、大使は推定無罪の原則の話を持ち出しているが、この意味が分かっているとも思えない。

誤解されるといけないので、ここで念を押して強調して置きたいが、何も私はロシアに肩入れをしている訳でも、ロシアの主張が全面的に正しいのだと言いたい訳ではない。紛争当事者の一方(ウクライナ)側の主張に、根拠もなく肩入し、そちら側に付く愚に疑問を呈しているだけである。まして、事は国益に直結する話なのだから。

やれやれ、これで日本は、この紛争の当事者となってしまった。その代償がどれほど高く付くのかは、今後思い知らされることになるであろう。


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