ものぐさ屁理屈研究室

誰も私に問わなければ、
私はそれを知っている。
誰か問う者に説明しようとすれば、
私はそれを知ってはいない。

ラリー・ウィリアムズのエピソード

2024-08-12 17:00:00 | 人の行く 裏に道あり 花の山
負けるトレーダーは彼自身を変えたいと思ってはいない。それは勝てるトレーダーがやることなんだ。ーエド・スィコータ


先日、株をやっている若い友人(STF氏の講演会に行った御仁である)に用事があって会った際、最近、STF氏について書いたブログの文章のアクセスが異様に増えているという話題を振ったところ、「ああ、それはたぶんこの動画のせいですよ」と、その場でタブレットを出して、松井証券の宣伝番組にSTF氏が出演した動画を見せてくれた。




観終わって、「STF氏も罪作りだなあ」とそのあと少し批判的なことを喋ったのだが、例によって、話がかみ合わない。

STFさんが昔書いていたブログでは、自分はファンダメンタル派だと言っていますよ

だから罪作りなんだよ

ということで、株の才能とプレゼンの才能は別だという話を、ラリー・ウィリアムズのエピソードやら→宇多田ヒカルの例まで持ち出して、色々と小一時間ほど説明したのだが、結局、怪訝な顔をされて終ったという顛末。やれやれ。

そしてその夜、この友人から、URLだけが記載されていた短いメールが送られてきた。クリックして、今頃になってアクセスが急増した本当の理由を知った訳だが、なるほどねえ。コピーライター顔負けの名キャッチ・コピーで、ここまで理解してくれれば、文章を書いた甲斐があったというものだが、一方で果たしてどれだけの人が二行目のの意味を理解したであろうかとも思う。まあ、甘く見積もって、数パーセントといったところだろうか。やれやれ。





で、結局のところ、私がSTF氏のプレゼンが罪作りだというのは、地動説というコンテンツを天動説のマナーでプレゼンするからである。言い換えると、テクニカル的な考え方を、ファンダ的な考え方の文法に則った語法でもって説明するからに他ならない。この意味合いで、いささか辛口の言い方をすればボケのプレゼンだからで、従って、私としてはどうしてもツッコミを入れざるを得ないということになる訳である。

この事は先に挙げた、ラリー・ウィリアムズの書いているエピソードの例が判り易いと思うので、最後に紹介しておこう。最初にこのエピソードを読んだ時は、飲んでいたコーヒーを吹き出してしまい、結局パソコンのキーボードを買い替える羽目に陥ったという、私にとっては、いわくつきのエピソードでもある。


先週末、フロリダでセミナーを講演していたジェイク・バーンスタインは、こんな興味深い話を披露してくれた。

何年か前、ジェイクがある証券会社の顧客の集まりで講演した時のことである。顧客達は主に牧場主や農場経営者、数人のトレーダーも混じっていた。講演が終わると、一人だけトレーディングで成果を上げている顧客がいて、その人に会ってみないかと誘われたのである。その顧客は、特に頭脳明晰というわけではないが、トレーディングでは必ず儲けているという話だった。

この農夫とジェイクはとても話のウマが合ったようで、老農夫はジェイクに自分がどんな取引システムを使っているのか知りたいか、と言った。「もちろん」とジェイクは述べ、「どんな手法なのか、ぜひ拝見したいですね」と答えた。そこで老農夫は、ポーク・ベリーのチャートを開き、糸のついた振り子を取り出した。チャートの上に振り子をかざすと、彼はジェイクに言った。

「このページの上で、振り子が上下に振れたら買い、横に振れたら売りなんだよ。ジェイク、見てしまったね、俺のシステムを」

この話を引き気味に聞いていたジェイクは、しばしの間考えて、尋ねた。

「それだけですか? 他に何もありませんか?」

「えーと・・・」とこの老農夫は口ごもり、答えた。

「もう一つあるけど、あんまり意味はないと思うね。その日の終わりで損をしていたら、そのトレードは仕切ることにしているんだ」



暴落はトレンド、トレンドはフレンド 12

2024-08-06 07:00:00 | トレンド・フォロー
今回の暴落について、したり顔で暴落の原因がどうとか、暴落の責任犯捜しとか、例によってマスコミやSNSが騒がしいが、今更のように市場というのは戦場であると思った次第。

今回は引用だけ。小林秀雄の言葉


今日の様な批評時代になりますと、人々は自分の思い出さえ、批評意識によって、滅茶滅茶にしているのであります。戦に破れた事が、うまく思い出せないのである。その代り、過去の批判だとか清算だとかいう事が、盛んに言われる。これは思い出す事ではない。批判とか清算とかの名の下に、要するに過去は別様であり得たであろうという風に過去を扱っているのです。
・・・・
 戦の日の自分は、今日の平和時の同じ自分だ。二度と生きてみる事は、決して出来ぬ命の持続がある筈である。無智は、知ってみれば幻であったか。誤りは、正してみれば無意味であったか。実に子供らしい考えである。軽薄な進歩主義を生む、かような考えは、私達がその日その日を取返しがつかず生きているという事に関する、大事な或る内的感覚の欠如から来ているのであります。
>(『私の人生観』


宮本武蔵の「独行道」のなかの一条に「我事に於て後悔せず」という言葉がある。これは勿論一つのパラドックスでありまして、自分はつねに慎重に正しく行動して来たから、世人の様に後悔などはせぬという様な浅薄な意味ではない。今日の言葉で申せば、自己批判だとか自己清算だとかいうものは、皆嘘の皮であると、武蔵は言っているのだ。そんな方法では、真に自己を知る事は出来ない、そういう小賢しい方法は、むしろ自己欺瞞に導かれる道だと言えよう、そういう意味合いがあると私は思う。
・・・・
 昨日の事を後悔したければ、後悔するがよい、いずれ今日の事を後悔しなければならぬ明日がやって来るだろう。その日その日が自己批判に暮れる様な道を何処まで歩いても、批判する主体の姿に出会う事はない。別な道がきっとあるのだ、自分という本体に出会う道があるのだ、後悔などというお目出度い手段で、自分をごまかさぬと決心してみろ、そういう確信を武蔵は語っているのである。
・・・・
 それは、今日まで自分が生きて来たことについて、その掛け替えのない命の持続感というものを持て、という事になるでしょう。そこに行為の極意があるのであって、後悔など、先き立っても立たなくても大した事ではない、そういう極意に通じなければ、事前の予想も事後の反省も、影と戯れる様なものだ、とこの達人は言うのであります。行為は別々だが、それに賭けた命はいつも同じだ、その同じ姿を行為の緊張感の裡に悟得する、かくの如きが、あのパラドックスの語る武蔵の自己認識なのだと考えます。
>(『同』


僕は政治的には無智な一国民として事変に処した。黙って処した。それについて今は何の後悔もしていない。大事変が終った時には、必ず若しかくかくだったら事変は起らなかったろう、事変はこんな風にはならなかったろうという議論が起る。必然というものに対する人間の復讐だ。はかない復讐だ。この大戦争は一部の人達の無智と野心とから起ったか、それさえなければ、起らなかったか。どうも僕にはそんなお目出度い歴史観は持てないよ。僕は歴史の必然性というものをもっと恐しいものと考えている。僕は無智だから反省なぞしない。利巧な奴はたんと反省してみるがいいじゃないか。>(『コメディ・リテレール 小林秀雄を囲んで』


暴落はトレンド、トレンドはフレンド 11

2024-08-04 17:00:00 | トレンド・フォロー


以前に、方針はすでに決めてあって、それは「ツナギ」を入れながらの両建てによる「売り上がり」で、リスク・マネージメント最優先で、ドテン狙いと書いたが、現在まで図のような売買経過となっている。

ここでは、「ツナギ」を入れながらの「売り上がり」に重点を置いて説明をしたいと思う。なお、売買したのは1570日経平均レバレッジETFで、結局、休みを入れられなかったということである。ポジポジ病は、なかなか治りませんなあ。

3月18日 5日移動平均線が25日移動平均線と重なったところで、大きな出来高を伴って長い陽線が出たので、ここは明らかにエントリー・ポイント。翌日寄り成りで0-10。

ここから、上昇すれば、ツナギを売り上がりで入れて行き、理念型で言えば取り敢えずは10-10のスクウェアを目指す訳である。これが第一工程。ここまでが上手くいけば、この時点で、利益は固定されることになるので、この後、上がろうが下がろうが問題ない訳である。最も信用分の金利手数料は取られることにはなるが。

そして、この後第二工程として、株価の動きを見ながら、買いを外して行って下げを取る訳だが、どうも無理っぽいと思えば、この第二工程は省いても良い。つまり、売り買いの玉を同時に手仕舞ってしまえばよい。買いが現物なら現渡しで清算すればよい訳である。

つまり、リスク・マネージメント最優先というのは、こういった利点があるからで、売ってしまわないで、ツナギを入れるなどという、なんでこんな複雑なことをやるのかというと、こうやって利益を確保・固定して、難しい局面を切り抜けて行くことが出来るからである。

例えば、10-10のスクウェアにした時点で下げを予想している訳だが、このあと踏みあげられて上がっていった場合でも、清算しないで、じっくりと待って下げだしたのを確認してから、売りを増やすなり、買いを外すなりをしていっても良い訳である。

言い換えると、これには地合いを読む技術と分割して玉を増減させるポジション・ワーク技術が必要とされる訳で、よくあるような片張りの一撃必中一点集中買いといったやり方とは、対極にある徐々に分割して売買してゆく方法である。

4月1日 長い陰線で5日移動平均線を上から下に抜ける。この日の陰線一本だけで上値と下値を切り下げたことになるので、ダウン・トレンド確定。5日移動平均線も右肩下がりになって来ているので、一先ず天井を打ったようだ。7-3

4月5日 前日に5日移動平均線の上に出たが、終値では結局超えらずにこの日に下値を更新。10-0

4月9日 5日移動平均線の上に出たので、ヘッジを入れる。10-2

4月15日 5日移動平均線に絡んでちゃぶついていたが、この日に短い陽線だが、5日移動平均線から下に離れたので、12-0。50日移動平均線に当たって跳ね返っているようにも見えるが、5日移動平均線と25日移動平均線の間隔が開き出しているので、まあ、大丈夫だろうと判断。

4月19日 下がってきて長い陰線、下髭が100日移動平均線に当たって跳ね返されたように見えること、25日移動平均線、75日移動平均線という節目で跳ね返ることなく下げてきたのでそろそろ反発しそうに思われること、最近にない巨大な出来高であることから底を打ったと判断、ここでエグジット。0-0

このあと、6月26日に再度エントリーしているが、これは現在も継続中なので、終わってからまた説明したいと思うが、基本的な考え方は同じである。

今回は5日移動平均線の傾きから言っても、前回と違って暴落と言って良いが、一番下の300日移動平均線で跳ね返されるかどうかに注目、また日柄から言えば、来週の後半または再来週の前半辺りが底打ちになると思われる。