音次郎の夏炉冬扇

思ふこと考えること感じることを、徒然なるままに綴ります。

マイケル本あれこれ

2010-01-04 02:33:42 | 本・雑誌
「好きこそ物の上手なれ」という格言がありますが、本当にそうだと思います。“ちい散歩”が大ヒットした地井武男も、“スイーツ”でメディアから引っ張りだこの芝田山親方(元横綱・大乃国)も、本人たちは決してビジネスにしようと思っていたわけじゃないんですね。前者はゆるーい感じが時代の気分にはまったのと、後者は男が甘党で何が悪いという風潮が定着してきたことが追い風になっていますが、何よりそれが「好き」で長年追求していたことがポイントなのです。何かのきっかけで、それに着目・起用する人がいてブレークしたわけですが、送り手の思い入れや知識が本物であることが伝わったからこそ人気が出たと。

ここ2ヶ月くらいで、ジャクソンズ~MJのオリジナルアルバムを集めるとともに、関連書籍もいくつか購入して読んできました。その中でもイチ押しなのが『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』でしょうか。タイトルの括弧書きが意味深ですが、決定版と呼ぶにふさわしい好著になっています。平易な文体でMJの幼少期から裁判までをカバーしている立派な評伝ですが、ただの編年記ではなく随所に鋭い論考を展開されています。家族や親子の問題に関心の高いワタシは、ジャクソンファミリーの相克、エホバの証人信仰の影響、マーヴィン・ゲイとの相似、などの考察に唸らされました。

著者の西寺郷太さんはノーナ・リーブスというバンドの現役ミュージシャンですが、少年時代からMJに魅せられコツコツと研究してきたそうです。音楽や映像だけでなく洋書など多くの資料を辿られていますが、昨年6月までの世間は「マイケル・ジャクソン」に冷淡で、著者のMJへの傾倒と偏愛もアナクロ扱いされていたとか。しかし、死後に昔のアルバムが爆発的に売れ始め、「THIS IS IT」も大ヒットと再評価の機運が高まるにつれ脚光を浴び、今ではラジオ(TBSキラ☆キラ)、雑誌(SPA)、ブログツイッターとクロスメディアで大活躍されています。特にSPA連載の関係でライオネル・リッチーへの取材の機会を得た際に、あの「WE ARE THE WORLD」の秘話を引き出し、最新の成果を前掲の著書の増刷分に反映させるなど、アクチュアルな活動と関西弁の軽妙なトークで、MJのみならず80年代音楽に関する当代きってのストーリーテラーとして注目が集まっています。

他に買って読んだマイケル関連本も紹介しておきます。

新版ムーンウォーク
唯一の自伝ですから一級資料として外せません。デビュー前の当事者しか知らない部分は貴重であり、モータウンの抑圧や自身の孤独な心情の吐露、完璧主義が昂じていく背景など興味深いのですが、いかんせん1988年の時点で終わっているところと、訳文がこなれておらず、冗長なインタビュー記事っぽくなっているのが難点か。

文藝別冊 総特集マイケルジャクソン
河出の追悼ムックには定評がありますが、丁寧なつくりで好感が持てました。(音楽評論家8名の分析競演はいかにも文芸の河出らしい)ライブレポートとオックスフォード大学でのスピーチ完全収録がGJ。巻末の年表も便利。

別冊宝島 マイケル・ジャクソン
宝島らしくポップなつくりだが少々雑な部分もある。大きな判型を活かした全アルバムレビューはベストアルバムにも目配りしていて親切。在米研究者である大和田氏の「“黒いアメリカ”が“白いマイケル”を支持し続けた理由」と新興宗教に詳しいライターの大泉実成のエホバとMJについての論考は秀逸。しかし、ストリームファンだったので巻末の小西&マッピーの対談が楽しみだったのに、読んでみたらスカスカの内容でがっかり。

『ライフ』誌特別編集 マイケル・ジャクソン追悼
幼少時からファミリーに食い込み信頼を得た「ライフ」誌が撮り溜めた貴重なプライベートショット満載。これを1000円で出すディスカバー社はエライ!! 父親ジョー・ジャクソンのガタイの良さや、MJ14歳当時のジャネットとの2ショットなどが印象的。83年の伝説となったモータウン25周年ライブのリハーサル時のMJのジーパン姿が惚れ惚れするほど格好いい。精悍で脚長くて色気に満ちている。

<番外編>
クインシー・ジョーンズ自叙伝
伝記・評伝フリークの私にとって、生涯ベスト3に入るかもしれない目茶目茶面白い本。いずれじっくりレビューしたい。

マーヴィン・ゲイ物語 ~引き裂かれたソウル
大好きなマーヴィンの評伝で、クインシーの本を読了後に衝動買い。現在読んでいるところ。

わが心のジョージア ~レイ・チャールズ物語
映画「レイ」は観ているが、クインシーとはティーンエイジャーからの付き合いがあるこの大御所も押さえておく必要がある。前掲のマーヴィン本と同じく吉岡正晴先生の訳本。


西寺郷太さんも敬愛する斯界の大家・吉岡正晴先生が、今年1000円以内(新書かな?)のマイケル本を上梓する予定だそうで、こちらも楽しみです。



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4 コメント

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そんなに読まれたのですか! (meici)
2010-01-05 16:56:49
MJ本は、JAZZ派の夫の目が気になって買えません。(苦笑)
MJの人生は人を惹きつけるんですねー。Leave me aloneと言われても。
私は彼がHistoryで、でっかい銅像になっちゃって、ミリタリー連れて走ってくるのはイヤなんですが、どうしてあんなになってしまったのでしょう?音二郎さんの研究成果を伺いたいです。

「クインシー・ジョーンズ自伝」は私も是非読みたいと思っておりました。相当面白いと聞いていたので。(夫の同意も得られそう)うつ病からの生還が気になるのです。
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本当にお薦めです (音次郎)
2010-01-06 21:37:48
>meiciさん、上記に加えて「マイケルジャクソン仮面の真実」を読み始めました。あの酷い裁判の真相が知りたかったのです。

クインシー自叙伝はいずれエントリー立てますが、面白さのあまりすぐに読了するのが惜しくてペースダウンしたほど。オススメです。

>うつ病
ああ、86年の静養ですか。あれは家庭問題もありましたが、超超ハードワークで頭が疲れまくったんでしょうね。風邪みたいなものでしょう。
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早速アマゾンへ (meici)
2010-01-08 18:20:39
ありがとうございます。自伝は即オーダーですね。

年末年始はTVでもいい音楽ライブがあって、Sade,Doobie Brothers, MJ 30th,Incogniteという80’s三昧でした。Incogniteはつい最近の来日ライブでしたが、サウンドは何故か懐かしい。ホーンセクションもご活躍で、華やかでした。acid jazz好きです。
私の場合、音楽の嗜好は全く進んでいないようです。
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音楽こそ新譜は要らない (音次郎)
2010-01-11 00:29:10
ドゥービー・ブラザーズは私も大好きです。シャデーもiPodに入ってます。アシッドジャズですか、懐かしいですね。私はもっと泥臭いのが好きですが。
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