音次郎の夏炉冬扇

思ふこと考えること感じることを、徒然なるままに綴ります。

『狭小邸宅』各論その3

2013-03-22 23:11:22 | 本・雑誌
豊川課長語録はいい。エンドユーザー向け営業の要諦が凝縮されていて味わい深いし、若い頃のことが思い出されて胸が熱くなる。

「駒沢通りは使うな、駒沢通りを平気で走る奴が売れたためしがない。路地でスピードを落とすな、慎重な運転は不安の表れだ、不安そうにしてる奴から買いたいと思うか。検討してくださいなんて言うな。検討もしないし買いもしない、自信がないって言っているようなもんだろ。売るんじゃない、買わせるんだ、客は自分が買いたいと思わない限り買わないー。」

含蓄があるというよりは、極めて実践的かつプラグマティックです。

私も営業会社にいた時は」「頑張ります!」は禁句だったし、「宴席で上司を満足させられない奴が売れるはずがない」という真理を叩き込まれたのを覚えている。

また、新人の頃「音次郎、今勝ってるのか?」と必ず訊かれた。たいてい他社と競合する商品なので、コンペチターとウチのどちらが優位な状況なのかという意味なのだが、最初の頃は「あ、五分五分かと思います」などと間抜けな答えを返して凄く怒られた。「人がどちらかを選択しようと迷っているときに、甲乙付け難いといっても本当に五分五分というのはあり得ない。たとえ50.0001対49.9999くらい微かな差かもしれないけれど、必ずどちらかに針が振れてるものなんだ」というのが、受注トップのプレーイングマネージャーだった我が師匠の教えだった。

たしかに、住宅なんて各社一斉に「今月決めてくれ」と猛烈に詰めてくる超短期決戦の世界。少しでも他社に劣後していれば、何かが起きない限りは、そのまま2位以下でゴールテープを切ることになる。負けに不思議の負けなし。ゼネコンみたいに一つの物件をジョイントで分け合うことが出来ればラクだが、住宅はオールorナッシング。2位じゃダメなんですよ、蓮舫さん。

商談の場において、三流の営業マンは自分とこの商品説明とアピールに終始。二流はセールストークをしつつ相手の反応を探る。一流はトーク3、観察7くらいの比重で、眼前のお客が競合と自社のどちらを気に入っているか、それは金額なのか、プランなのか仕様なのか、どの程度の差なのかまで読む。超一流になると、喋りながらも頭の中を高速回転させて、その場で逆転の布石まで打っているのだと。祖父と父が大学教員で、商売とはほど遠い世界でのんびり育った甘ちゃんの自分が 、社会の洗礼を浴び、このような営業のリアリズムを叩き込まれた。

次回は、豊川課長&松尾のコンビで「まわし」を鮮やかに決めた件りを読んでいきたい。

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