先日買った本を読み終えた.森達也・著『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』.
2016年,相模原の障害者施設で起こった殺人事件をめぐって,被告とその裁判の関係者,精神科医,メディアなどに取材し,彼の犯行動機を社会がどう受け止めたのかを,改めて考察するエッセイ集.そのなかで,法廷が事件の真相や背景を明らかにしないまま,死刑を宣告するための単なるセレモニーに成り下がっている現状と,被告がいかに異常な思想の持ち主であるかという点に,報道が過熱したことを批判する.終始インタビュアーとして振る舞うが,そのわりに饒舌な森のおもな問題提起は,この事件の本質を障害者への差別だと,私たちは勝手に決め付けてしまったのではないか,さらに,犯人が強く持っていたとされる,「生産性」が人間の値打ちであるという感覚を,誰もが真っ向から否定できるのかという,現代社会があいまいにし続けてきた,その急所とも言うべきデリケートな領域を突くもの.
森達也: U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面
講談社,2020,
ISBN978-4-06-520824-3
2016年,相模原の障害者施設で起こった殺人事件をめぐって,被告とその裁判の関係者,精神科医,メディアなどに取材し,彼の犯行動機を社会がどう受け止めたのかを,改めて考察するエッセイ集.そのなかで,法廷が事件の真相や背景を明らかにしないまま,死刑を宣告するための単なるセレモニーに成り下がっている現状と,被告がいかに異常な思想の持ち主であるかという点に,報道が過熱したことを批判する.終始インタビュアーとして振る舞うが,そのわりに饒舌な森のおもな問題提起は,この事件の本質を障害者への差別だと,私たちは勝手に決め付けてしまったのではないか,さらに,犯人が強く持っていたとされる,「生産性」が人間の値打ちであるという感覚を,誰もが真っ向から否定できるのかという,現代社会があいまいにし続けてきた,その急所とも言うべきデリケートな領域を突くもの.
森達也: U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面
講談社,2020,
ISBN978-4-06-520824-3
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