ケニチのブログ

ケニチが日々のことを綴っています

瀬山士郎「集合と位相」

2024-06-30 | 数学・科学
 先日買った本を読み終えた.瀬山士郎・著『集合と位相』.

 無限の濃度,コンパクト性を主な切り口として,集合・位相論の初歩を,改めて概観する一冊.トピックを厳選したシンプルな解説が分かりやすいが,抽象化された空間を扱う後半は,どうしても定理を定理で追う目まぐるしさになり,読者にも一定の忍耐を求める.それでも,もともと教科書として出されたものの改作なだけあって,重要な場面には,必ず丁寧な証明が付されているのは有難い.


瀬山士郎: 集合と位相 数学はいかに「無限」をかぞえたのか
講談社,2024,
ISBN 978-4-06-534671-6
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

益川敏英 死去

2021-07-30 | 数学・科学
 23日,物理学者・益川敏英氏が亡くなった.81歳.

 難しい議論をふっかけて周囲を困らせたという学生時代,「分からん」ときっぱり撥ね付けた教員との,その後の交流を語ったエピソードが好き.謹んでお悔み申し上げる.


外部リンク:
ノーベル物理学賞受賞 益川敏英さん死去 81歳 - NHK NEWS WEB (2021.7.29)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210729/k10013168691000.html
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大栗博司「数学の言葉で世界を見たら」

2020-11-22 | 数学・科学
 先日買った本を読み終えた.大栗博司・著『数学の言葉で世界を見たら』.

 数論から微積分まで,幅広いトピックを通して,数学の考え方と「語法」を,次世代の学習者に向けて解説するエッセイ集.現代が,人類史上で最良の時代であるとの序文に,いきなり同意できずぶつぶつ言いながら読み始めると,最初のテーマは条件付き確率である.難解な出だしだなあと思わせるが,その後も,RSA暗号や非ユークリッド幾何,ガロア理論など,意外に本格的な内容が続き,どうやら大学の教養課程くらいの読者層を想定しているらしい.肝心のテキストは,整然として分かりやすく,各分野の成立ちやエピソードを交えながら,基本となる発想と手法には厳密にアプローチしている.物理の専門家である氏ならではの,実用性への眼差しもある.また,本文中には必要最低限の数式しか現れず,その理解や体得はもっぱら読み手の自主的な取組みに委ねられているなど,親切にしすぎない構成にも好感.


大栗博司: 数学の言葉で世界を見たら 父から娘に贈る数学
幻冬舎,2015,
ISBN978-4-344-02740-4
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小柴昌俊 死去

2020-11-13 | 数学・科学
 昨夜,物理学者・小柴昌俊氏が亡くなった.94歳.

 氏が講師時代に出題したという,摩擦力についてのユニークな「記述問題」は,すべての現象が物理法則なしには成り立たないことを,いかにも研究者らしい明解な切り口で捉えたもので,印象深いエピソード.合掌.


外部リンク:
ノーベル物理学賞受賞の小柴昌俊さん死去 94歳 - NHK NEWS WEB (2020.11.13)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201113/k10012709941000.html
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

瀬山士郎「数学にとって証明とはなにか」

2020-07-20 | 数学・科学
 先日買った本を読み終えた.瀬山士郎・著『数学にとって証明とはなにか』.

 数学の正しさを支える基盤である「証明」について,幾何学と解析学を二本の柱に,いくつかの具体的な手法を例に引きながら,その「良し悪し」をも問う小論集.とりわけ,実数の連続性に係る一連の記述は,ていねいな解説で読み手を気遣いながらも,安易なイメージや言い換えに逃げずに,あくまで厳密さを守ったアプローチに一貫しているのは美点.


瀬山士郎: 数学にとって証明とはなにか
講談社,2019,
ISBN978-4-06-516952-3
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする