以前にも書いたように、スパーズ×サンズのシリーズは、事実上のファイナルと言っても過言ではない戦いである。
マブズが消えた今となっては、なおさらそうであろう。
しかし、その大事な戦いの結果が、選手たちのプレーではなく、リーグのお偉方の手によって左右されてしまったらどうだろうか?
バスケットボールの勝敗が、バスケットボール以外の理由で決められてしまう。
もしそんなことになれば、リーグは自らの手で自らの首を絞めているようなものだ。
事件はGAME4の終盤に起こった。
もう試合の大勢が決まり、サンズの勝利を誰もが確信したその時、ファールゲームにきたオーリーが、ドリブルで上がってきたナッシュを激しく突き飛ばした。
フルスピードで走っていたナッシュは、1m以上横に吹っ飛ばされ、スコアラーズテーブルに叩きつけられた。
ただタッチファールをして時間を止めればいいだけという場面で、だ。
アメリカでは、こういったプレーを「Cheap Shot(卑劣なプレー)」と呼ぶ。
プレーとは関係ない、意味のない場面での激しいファールや汚いプレーのことを言う。
選手たちは、正当なハードファールなら我慢するが、こうしたチープショットには怒りをあらわにする。
かの有名なロン・アーテストの観客殴打事件も、きっかけを作ったのはベン・ウォーレスに対するチープショットだった。
試合が決まったところで無意味なハードファールをしたアーテストに対して、ベンがキレたのだった。
ナッシュは言わずと知れた温厚な選手である。
NBAの中でもトップと言っていいぐらいだろう。
パーカーの頭突きで流血しても、ボウエンから股間にヒザ蹴りをされても、決して怒ることなく、それどころかボウエンを公に批判することすらなかった。
そのナッシュが、オーリーの一撃には激しい怒りをあらわにし、つかみかかった。
これは稀に見る珍しいことで、その行為はそれぐらい許せないことだったのだ。
しかしその時、ベンチにいたアマレとディオウが思わず立ち上がり、コートに一歩足が出てしまっていた。
ベンチの位置からスコアラーズテーブル脇に倒れたナッシュの様子を見るには、そうしないと前が邪魔で見えなかったからだ。
別に乱闘に参加しようと突進したわけではない。
でもこれで、アマレとディオウは次のGAME5に出場停止となってしまった。
スパーズはオーリーこそ出場停止になったが、オーリーは所詮15分程度しか出ないロールプレイヤーに過ぎない。
しかしサンズは、オールNBA1stチームの先発センターと、MIPのディオウを同時に失ってしまったのだ。
この事件の被害者はナッシュだったはず。
それが結果的には、加害者側のスパーズではなく、被害者側のサンズを苦しめる裁定となった。
まさに“やったもん勝ち”状態だ。
そもそも「ベンチプレイヤーが一歩でもコートに入ったら、即1試合出場停止」というルールは、90年代にニックス×ヒートの因縁対決で乱闘が頻発したため、乱闘の拡大を防ぐために作られた後付けのルールだ。
関わる人間が多くなれば、事態を収拾するのがより困難になるから、事前に厳しく縛りをつけようという意味で作られた。
だから乱闘時以外なら、ベンチプレイヤーがコートを踏み越えても罰せられることはない。
実はGAME4の同じ試合中、ジャンプしたフランシスコ・エルソンがジェームズ・ジョーンズの背中に落ちて、そのままコートに叩きつけられるというプレーがあった。
この時、ベンチにいたダンカンが同じようにリアクションし、ラインを踏み越えている。
出場停止を食らったアマレはこれを指摘して、「ダンカンも同じように出場停止処分にすべきだ」と主張したが、リーグ側の説明は、「そっちは乱闘に発展しなかったからいい」のだそうだ。
でも変じゃないか?
ラフプレーが起きた瞬間、一瞬のリアクションで思わず飛び上がったのは、本質的に同じ行為だったはず。
その後の経過が乱闘に発展したか、しなかったかで、お咎めなしと出場停止という雲泥の差が出てしまうのか?
じゃあ、その後エルソンがジョーンズにつかみかかっていたら、ダンカンは次の試合出場停止になっていたのだろう。
この時のダンカンも、ナッシュの時のアマレやディオウも、仲間がケガしていないかどうかを心配する余り、飛び上がって覗き込もうとしたに過ぎない。
その後興奮して乱闘に加わったのだったら、処分されてもしかるべきだ。
だが、ただの自然なリアクションに対して、出場停止という最も重い処分を自動的に課すというルールはおかしい。
どうしても処分したいなら、テクニカルファールや罰金で十分であろう。
しかしリーグ側は、処分が不公平だという議論に対し、「ルールはルール。公平かどうかではなく、(ルールに)正確かどうかが重要だ」と取り付くしまもない。
「ルールの条文を追うんじゃなく、ルールの本質を見て判断すべきではないのか」と抗議するアマレに、「現時点ではこれが妥当な判断だ」との返答。
現時点では???
そう、リーグ側もこのルールが実態にそぐわない結果を招いている事実を認識しているのだ。
おそらく来年のシーズンが始まる頃には、実態に合った形にルールが変更されているだろう。
だから「現時点では妥当」などというふざけた答えが返ってくるのだ。
今この段階で、「自分たちの制定したルールが間違いでした」とは言えないために、頑として「これが正しい」と主張しているわけだ。
これでもし、サンズが次のホームで星を落とすようなことになれば、シリーズはスパーズのものになってしまうだろう。
そしてその最大の勝因は、大事な大事なシリーズの分岐点となる、2-2のタイで迎えたGAME5に、アマレとディオウを欠場に追い込んだからということになる。
事実上のファイナルとも言うべき好カードの結果が、出場停止処分の影響によって決められてしまうのなら、せっかく盛り上がってきたプレーオフも、一気に興ざめとなってしまうだろう。
サンズにとって不幸だったのは、アマレと一緒に出場停止になったのがディオウだったことだ。
アマレを失うだけでも相当な痛手なのだが、もしアマレの代わりにセンターで先発させるとしたら、それはディオウしかいないからだ。
ただでさえ弱いインサイドを、メインの2人を欠いた状態で、リーグNo.1のポストプレイヤー率いるスパーズ相手に臨まなくてはならない。
これは致命傷と言っていい。
ナッシュは「(裁定は)バカげている」と吐き捨てながら、「アマレとディオウを欠いたゲームプラン(対応策)なんてあるわけがない。ただ精一杯、できる力を出すだけだ」と、ベストは尽くすが負けは覚悟の上とも取れる発言をしている。
お偉方の融通が利かないカチコチ頭が、ファンが最も楽しみにしている真剣勝負の魅力を、自ら台無しにしてしまった。
ドーン!
「仏のナッシュも怒るぞー!」
「落ち着きなさい、ナッシュ君」
「ルールはルールだ」
カチコチ頭のステュ・ジャクソン(スターンの右腕)
<おまけ>
鼻をケガしたナッシュを応援するファン
目の下をひっかかれたジノビリを応援するファン
オーリーの話ですが、「自分が2試合も出場停止になったのはナッシュが大げさにリアクションしたからだ」なんてほざいてるそうです(怒)!
このGAME5、内容は素晴らしかったそうですが、このオーリーの発言を知ってしまって素直に喜べません。
リーグのことについてはmanuさんのおっしゃるとおりだと思いますが、何よりもプレーヤーがフェアな気持ちでゲームに臨んでほしいです。
正念場のGAME6、ナッシュなんとかしろーーー!!
選手がPLAYしやすいようにするためじゃないのか?
観客がGAMEを楽しむためじゃないのか?
もっと考えて判断しないとプロじゃない。
これでスパーズ勝ってもつまらないです。
今年のPLAYOFFSはちょっと見る気が落ちました。
でもサンズは精一杯出せる力を出した感じでしたが・・・
うーん、オーリーのことは、もちろん決して擁護するわけではないのですが、ファール自体はそこまで悪質ではなかったんですよ。(自分で書いててなんですが・・・)
それよりも、ボウエンがナッシュの股間にヒザを入れたのとか、バロン・デイビスがフィッシャーにヒジ打ちしたとか、ファール自体はそっちの方が危険なんです。
だからオーリーのプレーは確かに褒められるものではないんですけど、2試合の出場停止の処分は重すぎると思います。
だって、先に挙げた2つは出場停止にすらなっていないんですから。
実際オーリーが2試合の出場停止を受けたのは、つじつま合わせの結果です。
サンズの選手を2人も出場停止にしなきゃいけなくなったから、リーグ側はバランスを取ってオーリーを2試合にしたわけです。
そうしないと何となくバランスが取れなくておかしくなってしまうと考えたからでしょう。
なのでオーリーにしてみたら、確かにファールはしたし、テクニカルとか退場になってもそれは仕方ないけど、2試合も出場停止になるほどのことではないだろ、となるわけです。
だから、ナッシュが事を大きくしたばっかりに、自分がここまで重い処分を受けることになってしまったと言ってるわけです。
これに関しては、“オーリーもリーグのお偉方の被害者である”ということができます。
そのことはわかってあげて下さいね。
スイマセン、長くなりました。
選手やファンを置き去りにして、お偉方が自分たちの正当性をただ主張しているに過ぎません。
こんなことでファンの反感を買ったら、せっかくのNBA人気に水を差すような結果になってしまいます。
ちょっと違いますが、以前にメジャーリーグがストライキに入って、一時野球の人気が落ちたという時期がありました。
今は復活して人気も元通りになっていますが、そのストライキ中はファンを無視して、リーグのお偉方と選手会側がにらみ合っていたわけです。
でも、MLBが盛り上がるのも、選手が高い年俸をもらえるのも、それはファンがいっぱいいてこそ成り立つわけです。
そのことを忘れてファンを置き去りにし、賃金闘争をしていた結果、一時的な“野球離れ”が起きたんですね。
今回の件はそこまで大きな話ではありませんが、NBAが盛り上がってるのもファンあってのことです。
ファンは超人的なプレーや真剣な名勝負が見たいのに、リーグが自らその楽しみを取り上げてしまうなんてことは、自分で自分の首を絞めているようなものです。
誰のためのプロスポーツなのかってことをよーく考えて欲しいですね。
とりあえず次のGAME6で、復帰したアマレとディオウが奮起して、サンズがアウェイ勝利をもぎ取ることを期待しましょう!
やられたのがナッシュだったので、普段の3割り増しぐらいで感情的になってました(反省)
ごめんね、オーリー。
「罪を憎んで人を憎まず」とはいい言葉ですねぇ。心に染みました。
肝に銘じておきます!
サンズには勝って欲しいんですが、どうなるでしょうねえ~
アマレがファールトラブルにならないように祈ります。
どんな結果であれ、GAME6がいいゲームになればいいなあと期待しています。