高田博厚の思想と芸術

芸術家の示してくれる哲学について書きます。

リルケの明るい空間  歴史というもの 

2023-07-01 22:50:50 | 日記

リルケの明るい空間 



 
リルケの「神さまの話」は以前から持っていたが、ようやくいま読んでいるところであり、「マルテの手記」に息が詰まった後では、ありがたい作品だ。リルケが「若き詩人への手紙」で、ヤコブセンの「ニイルス・リイネ」の読み方を指導しているが、それはそのまま「神さまの話」に言うことができると思う。リルケの思想の裾野、土壌というものを感じる。そして、空間が広く明るい。これがあのマルテを書いた詩人の出発点かと思うと、救われる気がして、ありがたいのだ。ゆっくり読んでいて、急ぐ気がしない。この後のリルケに息が詰まる時には、ここに戻ればよい。一緒に生きることのできる明朗な空間がある。
 
 
歴史というもの 
 
「話」のなかにあるが、海に張り出した高層の住居群は、他処に行き場を無くすまでに区域を制限された人々の、必然から成ったものであり、結果は壮麗でも動機は生の必要であった。風流が動機なのではありえない。断崖に嵌め込んだような住居群もそうであろう。観光気分の印象は実体を欺くものである。仮借ない生の厳しさ、時に非人間的・反人間的な状況の苛酷さ、それでもそこに生まれる人間の生活と自然との調和美。異なった人種と風土の生む歴史と感覚にたいし、我々は注意深く謙虚であるべきであり、その前に先ずその歴史的感覚に気づかなければならない