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マックいのまたのMalt Whisky Distillery

モルト好きで株式公開/上場(IPO)の経営戦略,マーケティング,M&Aを支援する経営コンサルタントのプライベートブログ

ウィスキーのモノ作り 5

2013-10-28 12:38:24 | グルメ

最初は樽の話、2回目はブランド?の話、3回目はブレンドの
話、4回目は品質管理の話、今回は市場の話です。


長らく経営に携わっていると、市場を「しじょう」と読むクセが
ついていて疑いもしないようになっていますが、小学生の頃に
漢字を勉強すると「しじょう」と「いちば」とでは、どう違うん
だろう?なんて素朴な疑問をもったものでした。

今回は、市場を「いちば」と読み、さらに「いち」と「ば」に
分けて考えます。

市(いち)はセリの意ですから、商品が評価されることです。高い
評価を得るために、名前をたくさん露出したり、特徴を列挙して
間口を広げたり、コンテスト受賞で信用を高めたり、といった
営業努力が行われます。ウィスキーは商品という形で流通します
ので、これは当然の経営努力です。

場(ば)は、場所の意ですから、その広さや集まっている人の数の
ことです。いわゆる経済でいう「しじょう」の意です。ウィスキー
は嗜好品ですので、ひとりの消費者を捕まえれば、「誰が何と
言おうと俺にはこれが一番旨い」というのが基本であり、この
ボリュームを層(レイヤー)で捉えれば、究極のウィスキーを求め
て50年もの長期熟成を経たシングルカスクこそ最上という人も
いれば(ちなみに私は飲んだことありません)、アルコールで酔っ
払えればウィスキーでも何でも構わないという人もいます。

すると商売成功の前提はターゲティングですので、これらのレイ
ヤーのなかのどこかの層を捕まえて「これが俺には一番旨い」と
言わせればよい、ということになります。

さて、ここで市と場を統合し漸く「しじょう」として考えることに
すると、最近のウィスキーってどうなのよ?というとき、どうやら
ハイボールが人気らしいよ、ということでボリュームの最前線の
嗜好が説明されます。

ここ数年のハイボール人気は、サントリーが仕掛けた販売促進が
当たったことによるものですが、そのプロモーションで提案されて
いる「角」で作るハイボールより、じつはシェリー樽熟成のウィ
スキーをベースに作るものの方が相性が良いのです。私の経験では
これまで何人もの方にお試しいただいて100%の同意率でした。

素人の私がひとりで薦めるより、プロのバーテンダーさんがお店で
お奨めして実際に美味しければ、ウィスキーの評価は高まりそう
です。そうしてボリュームの最前線の嗜好が甘めにシフトして
いきます。もちろんメーカはこれに対応してブレンドを変更する
でしょう。これで「ハイボールに最適」という特徴がひとつ増える
ことになるからです。

事業会社が市場を活性化させて顧客を獲得したいときに、顧客の
嗜好に合せて行うリニューアルがこうして行われます。間口を
広げて顧客に合せるということは、顧客の嗜好から抵抗を取り除
いて親しみを感じてもらおうという作業ですから、「甘く」に
なるのはウィスキーに限らず、クルマもアパレルも美容整形も
同じです。プチトヨタ、プチブランド、プチ整形。

しかしウィスキー市場というのは、巨大なアルコール飲料市場の
うちのプチ市場なのですね。正式にはニッチ市場といいます。
その元来間口の狭い市場が顧客に合せてブレンドを変えると、
あっという間に全体が「甘くなってしまう」のです。折からの
EU法の規制を受けるスコッチ・ウィスキーは、原則として
アルコール度を40度にせねばならず、加水を増やしてアル
コール割合が低下すれば、アルコールの辛さが減る分だけより
一層甘く感じられるという追い風も吹きます。またアルコール
に溶け込んでいた香味成分も減ります。

その結果、おしなべてマス・ボリュームを追うグローバル・ブラ
ンドはその出自たる個性を失い、失われた個性を嗜好していた
人々は行き場を求めてプライベート・ボトルを探検する旅に
出て、中間層が減少しました。

このような市場(この場合「しじょう」も「いちば」も同義)の
動向は、かつてオヤジの酒と揶揄された歴史を再び歩もうとして
いるようにも見えます。けだしウィスキーは、製造から出荷まで
長い年月を要し、市場の目先を追い続けることは経営上の負担が
大きいからです。かといって市場と時代の変化を無視し、唯我
独尊を貫けば前提となる商売が続かなくなってしまいます。これ
までも多くの蒸溜所が閉鎖や売却され、事業再編(とボトルの
中身が変わってしまう)が繰り返されてきました。

これらの経験を踏まえて意識する必要があるのは、人々がこの
酒に関心を寄せる「美味しさの原点が何処から来るのか」という
一点でしょう。間違いなく言えるのは、名前をたくさん露出した
り、特徴を列挙したり、コンテストで受賞を重ねることとは直接
無関係なところにあるということです。

「これこそがモルトだ」という未来永劫続くエッセンスを知る
人物は、製造を実践する人物のなかにいるはずです。

rosebank12yo.jpg

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ウィスキーのモノ作り 4

2013-10-25 18:02:25 | グルメ

最初は樽の話、2回目はブランド?の話、3回目はブレンドの
話、今回は品質管理の話です。

山梨県の北杜市という所、というよりも小淵沢といった方が
通りがいいかもしれません、にサントリーの白州蒸溜所があり
ます。ウィスキーを飲まない方でも、天然水のミネラル・ウォー
ターでご存知でしょう。

テーマがウィスキーですのでウィスキー・ベースで進めますが、
サントリーのウィスキーといえば山崎が有名で代名詞的存在です。

確かに山崎は京都と大阪の国境にあるサントリーのマザー工場
ですが、サントリーのウィスキーはブレンドを前提に製造して
いる要素が強いので、白州の原酒がなければサントリー・ウィ
スキーが成立しないのも事実でしょう。

ピートやミズナラの風味が強い山崎の原酒に対して、白州の
原酒は干草や白樺の風味が強い山林の霧や靄を感じさせるもの
で、市場に対しては「竹炭でフィルタリングすることで、この
特徴がでる」とアナウンスされます。

hakushu-heavypeated.jpg

さて、先日サントリーが運営するモルトバーで、白州1992
なるウィスキーを飲みました。バーのオリジナルボトルですので、
写真はありません。すみません。

これを飲むきっかけは、いつもの癖で「アルコール辛く、塩っ
ぽいウィスキーが飲みたい」という、いささか意地悪な注文を
してしまったのですが、驚いたことにこの1992年の白州モ
ルトは、想像をはるかに越えたアルコール辛さと塩味を持って
いて、思わず唸ってしまいました。ちなみにシングルカスク
ではなくてバッティングだそうです。もし今年瓶詰めしたの
ならば20年前の原酒ですから、長期熟成ウィスキー向けの
バッティング原酒かもしれません。

これまでの記事をお読みいただいた方は、この内容をご理解
いただけると思いますが、今日書きたいポイントは残念ながら
ここではありません。白州というウィスキーそのものについて
です。

メインの山崎に対して、どうしてもサブの位置づけになる白州は
伝統的なネーミングがされたシングルモルトも、山崎に対して
「おとなしい」印象があり、国内のニッカでいう余市に対する
宮城峡のような印象です。ウィスキーの世界ではスモーキーな
臭いをクセが強いといいますが、クセの強さを縦軸にとり、
アルコール辛い・甘いを横軸にとれば、興味深いマトリクスが
出来上がります。
        クセが強い
          |       
     余市   |  山崎
    (ニッカ)  | (サントリー)
辛い ----------------------------- 甘い
     白州   |  宮城峡
    (サントリー) | (ニッカ)
          |       
        クセがない

クセが強いかどうかは、ピート濃度や個性の強い樽の影響で
簡単に決まりますが、クセがないなかでの辛さや甘さは
麦の種類や酵母、シェリー樽等々の複数の影響が考えられる
ので、簡単に決まるわけでもありません。

そこで白州の竹炭処理が登場してきます。白州の12年や
17年といったオフィシャルボトルを飲んだ方なら、口当たり
の優しいウィスキーの印象を覆すメロウな柔らかさを感じら
れることでしょう。そして竹炭でフィルタリングしていると
説明されます。

ウィスキーが樽から瓶詰めされる前に、樽内の木屑や樽材の
隙間に挟んで液漏れを防ぐガマの穂などが混入しないように
ろ過処理をします。しかし、このろ過処理の際に、香味成分も
一部フィルターに掛かってしまうため、無ろ過のものに比べる
と豊かな香りはどうしても劣ります。

私が飲んだのは、そうするとシングルカスク原酒をバッティ
ング(混和)したものの、竹炭でのろ過処理をする前でかつ加
水処理(アルコール濃度を下げる)前の香味豊かなブレンド原酒
だったのではないか、という仮説が成り立ちます。そして、
このバッティング原酒は、オフィシャルボトルより美味しく
蒸溜所の個性がより伝わる”いい酒”だったとしたら?

これは推測ですがこういうことでしょう。サントリーにとって
山崎がマザー工場であり、ブランドの象徴であることは動かせ
ない事実です。一方、白州の原酒もブレンドに用いてサントリー
製品の重要な一部を構成するから品質は同じくらい重要。そう
すると、山崎と白州のシングルモルトを市場に出すときには、
互いに差別化をしなければ一般消費者に認知してもらうことが
難しいので、クセの強さ/弱さで分かりやすくポジショニング
する。もともと出来が悪い製品を良くすることはできないが、
元の出来がよければ、市場にあわせて位置決めを調整すること
はできる。そして竹炭でのフィルタリングは、世界中他のどの
蒸溜所でも行っていない。

作られるウィスキーが商品である以上、市場での認知を獲得し
なければ継続することができませんから、そのための品質管理
なら行われるべき必要なことということになりそうです。

個人的に私は、サントリーには山崎でブレンド用を基本に据えた
原酒をどんどん製造してもらい、白州ではシングルモルト用を
基本路線においた原酒をどんどん製造して、竹炭処理を用いなく
とも「白州って美味しいね」と言ってもらえるウィスキーを
作ったらどうかと思います。その原酒を用いてブレンドした
サントリー製品の方が美味しいだろうからというのと、製造
設備等を変更することなく、より美味しい商品の製造にすぐに
舵を切れるからです。

さて、その5はどうしましょうか。書きますか?(笑)

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ウィスキーのモノ作り 3

2013-10-24 16:09:23 | グルメ

前々回は樽の話、前回はブランド?の話、今回はブレンドの話
です。

ウィスキーは、同じ仕込みの原酒であっても、熟成庫の違いや、
同じ熟成庫の内でも樽がおかれた場所によっても違い、挙句の
果てには、樽ごとにひとつひとつ熟成スピードが違って味が
変わります。樽ごとに味が違うため、傑作も駄作も生まれます。

そのためシングルカスクで楽しむのに向いたものと、ブレンド
用に向いたものがある、ということでした。これは言い換えれ
ば、樽の個性を評価するか、様々な原酒をブレンドして総合的
な美味しさを評価するか、という大きな二つの方向性が認め
られます。

これを個性からバランスの順へポジショニングすると、シングル
カスク(単一樽)、シングルモルト(単一蒸溜所)、ピュアモルト
(複数蒸溜所)、ブレンデッド(グレーンウィスキーも混ぜる)
という順番になります。

これまで左側の2つの幅について触れてきたわけですが、今回は
これらの間に存在する、いわば中間製品のようなバッテッド・
モルトの話です。

酒は所詮嗜好品ですから、誰が何と言おうと俺にはこれが一番
旨い、というのが基本ラインですけれども、他方で社会や市場
で認められた有名銘柄という指標もあります。

右側2つのピュアモルトやブレンデッド・ウィスキーを作る場合、
レシピにしたがって複数種類の原酒を混ぜ合わせて作ります。
そのレシピの素晴らしいものがシーバス・リーガルとか、バラン
タインとかジョニー・ウォーカーとかというわけです。

しかしこのような有名銘柄を作る作業は、当然試験管のような
スケールではなく、桶に樽ごと入れて混ぜ合わせるようなボ
リュームですから、ひとつずつの樽から何%取り出して・・・
では間に合いません。

そこで均一な味の品質保証(裏返せば、原酒樽の個性をバランス
させておく)のためにバッテッド・モルトという中間製品(料理
でいう仕込みのようなもの)を、あらかじめブレンドして大量に
作っておきます。製品を製造するときには、これをレシピに従っ
て混ぜ合わせればよいわけです。

peaty&solty.jpg

さて、ここにニッカ・ウヰスキーのキーモルト・ピーティ&ソル
ティという製品があります。これがいわば今回の中間製品です。

元々キーモルトのシリーズは、家庭で気軽にブレンドを楽しむ
ためのブレンド用原酒という位置づけで、発売当初はシングル
カスク(!)だったのですが、途中からバッテッド・モルトになり
ました。

これが飲めるお店に行くと「麦芽の感想時に用いるピート(草炭)
の香りが強い「ヘビーピート麦芽」を使用し、さまざまなタイプ
の樽で熟成させた原酒をバッティング(混和)しました。」とあり、

続けて「nose(香り):ピート由来のスモーキーさ、燻製や潮の
ような香りが豊かに広がり、とても個性的。底に感じられる甘い
香り、樽熟成香、オレンジのような果実香。
plate(味わい):重厚な味わい、果実と樽の甘さにゆっくりとか
すかな塩味が加わる。
finish(余韻):やや土を伴った長い余韻。」とあります。

飲んでみると、確かにだいたいこのような味なのですが、ここに
書かれているうち、一部が強かったり、あるいはある部分は若干
違うような気がする、ということがあります。

これは結局、このテイスティング・ノートを書いたときのボト
ルがこういうものだったということで、私が飲んだときのもの
とは異なりますから、当然インプレッションも変わるということ
だと思います。

何がいいたいかといえば、先に書いた有名銘柄は、こういった
中間原酒を混ぜ合わせて製造されていますので、去年飲んだ
バランタインと今飲んでいるバランタインは味が違うことが
ありうるということです。

だから、ゴールドとかプラチナとか上級品が色々出ていますが、
そのときのその味はその時だけのもの、ご縁ということでしょう。

もしあるとき、最高に美味しいというものに当たることがあっ
たら、また次回同じ銘柄を頼もうなどとメーカを全幅信頼する
のではなく、同じ条件のボトルをオトナ買いすることが、唯一
絶対の正解ということになります。

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ウィスキーのモノ作り 2

2013-10-23 15:42:55 | グルメ

前回は樽の話。今回はブランド?の話。

先日、会員制量販店のコストコで、KIRKLANDというブランドの
スペイサイド・シングルモルト20年というウィスキーを発見
しました。またまた人気のシェリー樽フィニッシュです。

kirkland_sherry_finish_20.jpg

売り場には売り子さん(といってもいい年のオジサン)がいて、
「本場スコッチ・ウィスキーの20年ものだよ!私の感じでは
ウィスキー界のロールス・ロイス、あのマッカランの18年と
同等かそれ以上じゃないかというものだよ!」と熱心に試飲を
勧めていました。

私は笛吹峡のことがあったので、せっかくの機会だからと少し
試飲をさせていただいたら、確かにシェリーの風味はついて
いますが、シェリー樽で20年熟成させた深みはありません。
そこで、よくラベルを読んでみると「シェリーフィニッシュ」
と書かれています。

このフィニッシュとはどういうことかといえば、製品出荷前の
半年~1年程度シェリー樽で寝かしました、ということです。
つまりは、その前の約19年はシェリー樽とは違う別の種類の
樽で熟成させたということです。

今回は、樽の話ではないのでラベルの話に移行すると、この
ボトルに書かれているスペックは、以下のようになります。

・スペイサイド(ウィスキー蒸留地)
・シングルモルト(単一蒸溜所)
・スコッチウィスキー(スコットランド産)
・20年熟成(最低熟成年数20年以上)
・シェリー樽フィニッシュ(シェリー樽仕上げ)

前回の蒸溜所と生産年と熟成樽が特定されたシングルカスクに
比べると、スペック的には見栄えがする単語が並んでいますけ
れど、ウィスキーの個性が特定される要素はほとんどなく、ボン
ヤリしています。

ここで業界の事情を打ち明けると、KIRKLANDとはコストコの
プライベート・ブランドですが、コストコにシェリー仕上げの
原酒を提供しているのは、売り子のおじさんがいみじくも言っ
ていたマッカランだそうです。マッカランといえば、確かに
モルト・ウィスキーのロールス・ロイスと呼ばれてます。さらに
数年前まで、このラベルにはマッカラン蒸溜所製という表示
すら印字されていたそうです。したがって、このボトルもマッ
カランである可能性が極めて高いでしょう。

ウィスキーメーカの方がよく話されることに、ウィスキーは
シングルカスクで楽しむのに向いたものと、ブレンドに向いた
ものがあるということです。種明かしをすると、前回の記事は
前者、今回の記事は後者ということです。

前回の知識をもって今回の記事を考えていただくと、たとえ
ロールス・ロイスが作ったといえども、樽によって、あるいは
熟成庫の違いや、同じ熟成庫の内でも樽がおかれた場所に
よって、より美味しいとか、より美味しくない、といった差異が
生まれます。

例えば、ロールス・ロイスが作って傑作が出来たら、それは
ロールス・ロイスの名前で世に出すでしょう。しかしロールス・
ロイス製の駄作だったら、メーカの名前をつけて世に出せない
というのが商売の信用です。

そういうものをエルメスやルィ・ヴィトンよろしく破棄するか
どうかは、外からは分かりません。いくらアルコールが60度
あるからといって、アルコールランプの燃料に使ってしまう
ということも考えにくいです。

先の「ウィスキーはシングルカスクに向いたものと、ブレンド
に向いたものがある」というのは、スコットランドでも日本
でも聞きました。ある方は「ブレンドは、ウィスキーメーカの
経営をする上で必要な存在だ」とまで言っています。ならば、
例えばそういう大人の事情というものではないでしょうか。

一般消費者の価値観に訴える「スペイサイド」「シングルモルト」
「スコッチ」「20年熟成」「シェリー樽」というスペックが揃って、
価格はロールス・ロイスの4分の1。それを会員制の激安量販店
に並べれば、商売としては成功条件が積みあがります。

だから、すべてのウィスキーは前回のシングルカスクと今回の
シングルモルトの間の、どこかのポジションで店頭に並んで
いるのですね。そして、人々は夫々の理由でお気に入りを買い
嗜好しているのだと思います。したがって、少し知識を増やせば
本当の自分好みのお酒が見つけられるようになりますね。

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ウィスキーのモノ作り

2013-10-22 18:21:48 | グルメ

以前「笛吹郷1983」という珍しいウィスキーを取り上げた
ことがありますが、その時はまだ開けていませんでした。

しかし、もちろんその後開封して楽しみましたので、いつもの
テイスティング・ノートとは別の切り口で書いてみます。

usuikyo1983.jpg

透明瓶に詰められたウィスキーをみて、シェリー樽熟成だなと
は思いました。シェリー熟成タイプは私の好みのタイプから
外れますので、目利きができるほど分かりません。しかし
ながら、きっと恐らくは「いい酒」だろうと思います。それは
”よくシェリーが出ている”ウィスキーに共通する発酵臭が
あったからです。

発酵臭と書くと、なにか腐ったような腐敗という状態をイメー
ジしがちですけれども、ここでいう発酵とはもちろん良い意味
でありまして、納豆に似た濡れたワラの香りです。

イメージ的には田舎によくある土蔵の土壁の匂いに近いですが、
そこまで稲藁は強くなく、夏から秋にかけて頭を垂れる稲穂とか、
炊き立ての新米のような草臭く若干甘く漬物が漬かったような
軽い醤油蔵臭です。メルシャンの軽井沢モルトがお好きな方なら
説明不要でしょう。

そのあとにシェリーの甘み、紅茶の香り、土くささがあって、
熟成年数を感じさせました。

さて、閑話休題。

今度はウィスキーを作る話ですが、ものの本やウィスキーメーカ
の方に聞くと、ウィスキーの作り方は何処でもほぼ同じ話が聞け
ます。麦を発芽させて麦芽を作り、砕いて発酵させて蒸留する。
その後樽に詰めてウェアハウスで熟成させるというもので、もう
少し興味をもつと、麦の種類とか、ピート濃度とか、酵母の種類
とか、蒸溜釜の形とか、樽の種類とかです。

しかし、その後になると「あとは自然にまかせて熟成させるだけ」
と天命を待つような話になってしまい、年月を経た後の原酒を
評して”美味しい”というだけのことになってしまうのです。

この”美味しい”にも明確な差やバリエーションがあるのが、
ウィスキーの世界で、このひとつひとつの樽や熟成の違いを
楽しむのがシングルカスク愛好というマニアの世界が確立されて
おりますが、よく考えれば「同じ日に仕込んだ原酒が、それぞれ
違う樽に詰められて、経年熟成の後に違う味に仕上がった」と
いうことがあります。これってなんで?

一般的に、これは樽ごとの個性の違いと説明されますけれども、
現代のウィスキー製造の現場では、熟成庫の違いや、同じ熟成
庫の内でも樽がおかれた場所によっても違うことが判明しており、
もっと極端な例では、樽ごとにひとつひとつ熟成スピードが
異なることも判明しています。

これがいわゆるシングルモルト・ウィスキーの業界でいう「ウィ
スキー蒸溜所ごとの個性」で説明するには大雑把すぎて不適当と
いうことがありそうです。

つまり、結論的には、あるウィスキー蒸溜所だからより美味しい
とか、別のウィスキー蒸溜所だからより美味しくない、という
こともありますが、厳格な個性のレベルでは、その樽の原酒が
より美味しいかどうかという評価になるということです。

そういう視点を持って考えると、私は普段シェリー熟成のウィ
スキーは好まないのに、今回の笛吹郷1983はもう既に半分
飲んでしまいました。つまりは、ウィスキーメーカとか、ブラ
ンドとか、熟成年数とかは2次的な要素に過ぎない、という話
です(笑)。

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Mr. Jim McEwan

2013-08-01 18:54:46 | グルメ

スコットランド・グラスゴーからプロペラ機で西へ1時間。

モルトマニアが聖地と呼ぶIslay(「アイラ」と読む)島に着き
ます。

皆さん、とくに日本人はマニアの人が多いらしく、その業界では
本当に聖地のように語られることが多いですが、そのアイラ島
最古のボウモア蒸溜所は所有者が転々と変わって現在は日本の
サントリーが親会社です(これ本当)。

さて、そのボウモア蒸溜所で蒸溜長を務め、その後同島で閉鎖
となっていたBruichladdich(「ブルックラディ」と読む)蒸溜
所の復活に情熱を傾け、成功に導いたのがMr.Jim McEwan(ジム・
マッキューワン)氏です。

そのジムを取り上げるのは、本日2013年8月1日がジムの引退日
だからです。現地時間の午前10時ころ、「じゃあな」と言って
後姿で片手を振り蒸溜所を後にしたでしょう。

ジムは日本びいきで有名で、ボウモアの親会社であるサントリー
の山崎蒸溜所で働いた経験があり、東京のこともよく知っていて
カラオケ大好きな陽気なおじさんです。

私が蒸溜所を訪ねていって秘密の話を打ち明けると、お前は
ブルックラディのNo.1スーパースターだ、と言ってくれました。

JimMcEwan01.jpg

その秘密は、いつか明らかにしようと思いますが、それよりも
Islay Original Maltと標榜し、現在でもフロアモルティングを
行なっているボウモアでウィスキー造りを身につけ十分に立派
な地位を気づきながらも、同じ島内で長らく停止していた名
蒸溜所の復活プロジェクトに飛び込み、そして次から次へと
新しいアイディアのウィスキーを商品化して新たな名声を築く
あたり、ウィスキー作りを知り尽くした現代ウィスキー造りの
神様と言っていいでしょう。

その神様が今日引退します。

長年の経験が乗じて神様になったのだから、永遠に辞めないで
ほしいと思うのはこちらの我儘ですが、余人をもって代えられ
ないとすれば、我儘を越えた伝説で称えてしかるべきが相当と
いうのでしょうか。

いずれにせよ、かつてボウモアにあり現在はブルックラディに
ある、人が作ったウィスキーの繊細さは、今後もよき伝統として
永遠に引き継がれてもらいたいものです。

ジム、長い間お疲れさまでした。Slainte Mhor, Jim!

Jim McEwan02.jpg

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余市原酒の秘密が判明しました

2013-07-29 13:02:32 | グルメ

以前、余市20年原酒という表題でシングルカスクのことを
書きました。

そのときに、熟成年数10年と20年のウィスキーを比較して、

10年では、樽香 > ピート香 > エステル香 のところ、
20年になると、エステル香 > ピート香 > 樽香

に変化が認められ、+10年熟成でアルコール度は低下する
にも拘らず、エステル香が強く前面に出てきて、もうひとつ
より多く原酒に溶け込むであろう樽香の主張が弱くなっている
現象を不思議に感じて、「こういうのは、ブレンダーとか
工場の蒸溜長に聞かないと分からないこと。もしその原理が
分かったら、ブレンド技術に関して、色々とブレイクスルー
しそう」と書きました。

それで、先日いよいよそのチャンスに恵まれることになり
ましたので、メーカのプロのブレンダー(しかも当該メーカ!)
にお尋ねすることができましたので、ここで正解をご披露
させていただきます。

yoichigenshu-20yo.jpg

まず最初のエステル香については、エステルは水に溶け込む
成分であり、熟成年数の経過によって水分が蒸発して減ると、
溶け切れなくなったエステルが出てくるために濃く(強く)
感じるのだろう、とのこと。

素晴らしい。

もうひとつ、樽香については、これは単純に樽毎による個性
(製造的には誤差、ばらつき)の話なのだそうで、同じタイプの
原酒造りを目指して、同じようにオークの新樽を作っても、
ひと樽ずつ表れる熟成スピードの違いや樽成分の溶け込み量の
違いがあって、よく云われる「厳密には、ひと樽ひと樽味が
違います」という、まさにそれに当たったことだそうです。

ですから、今回の問題はシンプルですが奥行きの深いテーマを
湛えていて、熟成が進むにつれて変わる味の変化ということ、
同じように作っても樽ごとに味は異なるという味の違いと、
シングルカスクの味わいの本質に触れる出来事でありました。

となれば、原酒の秘密が判明したというタイトルも、あながち
大げさではないとご理解いただけるでしょうか。

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ブレンダー・トークライブ

2013-07-25 17:23:46 | グルメ

我らがブレンダーズ・バーで、ニッカのブレンダーが来店して
トークライブを行なうイベントが開かれましたので、喜んで
参加してきました。

blender-talk-live01.jpg

この企画は、今月2日にブレンダーズ・バーが開業9周年を
迎えたことで開かれたもので、普段とは趣向が違いました。

メーカのバーとはいえ、普段ブレンダーが来店するときは、
新製品の紹介やウィスキーセミナーといった啓蒙的プロモー
ションとなるのが通例ですけれども、今回はブレンダーの
お気に入りウイスキー、思い出のウイスキーの試飲がメイン
という、ちょっとプライベート色のある興味深い企画でした。

佐久間チーフブレンダーは、現代ニッカのキーモルトのひとつ
に育った、ノン・ピートの余市とノン・ピートの宮城峡を
ブレンドしたバッティング原酒を、綿貫主任ブレンダーは
ブラックニッカ・リッチブレンドの原酒を、それぞれノージ
ングしながら解説し、さながら普段ブレンダー室で行なわ
れている作業を再現するような、様々なキーワードが出て
くる楽しいテイスティングとなりました。

私が参加したのには、もうひとつ目的があり、もちろんウィ
スキーのブレンドに関して常日頃抱えている疑問質問を
プロにぶつけて解明しようというものです(笑)。

それこそ、束になるような数の質問を次々とぶつけてみました
ら、素人が製品に触れて感じる疑問と、ブレンダーが製品開発
にあたって意識していることとのあいだには、大きな距離が
あって、それぞれ一般的に使われている言葉は、非常に抽象的
であるということが判明しました。

それに加えて、自分のブレンドに関する質問を重ねていきました
ところ、酒質が違う原酒をブレンドする方法や、スタートの
ところから立ち位置が異なることなどを教えていただき、
「(あなたは)もう出来ているんじゃないですか」と言ってもら
えて有頂天。メーカのプロのブレンダーから、ブレンダー認定を
していただいてしまいました。

考えてみれば、素人があれこれ混ぜる場合、いわゆる経験だけ
でなく原酒に関する情報も絶対的に不足していて推測でスタート
していますので、まずはそこを掘り下げる必要があるということ
です。

その掘り下げ作業に多くの言葉を身につけたことは、理論+実践
の両面で、間違いなくワン・ステージ分ステップアップできた
素晴らしい経験となりました。

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笛吹郷1983

2013-07-24 16:31:59 | グルメ

先日麻布へ行ったときに、ふと寄り道したお店で見つけた
珍しいものです。

usuikyo1983.jpg

この珍しいボトルの正体は、山梨・笛吹市にあるモンデ酒造が
製造したモルト・ウィスキーで、購入店舗のボン・ルパさんが
樽買い瓶詰めしたプライベート・カスクです。1983年蒸溜
で25年熟成というので、かれこれ4年前に瓶詰めされたもの。

タグの説明をみると、次のようにあります。

「1983年から四季を重ねて秘蔵モルト樽から生(き)で味わ
うにふさわしい円熟モルトを吟味・厳選。酒齢25年の希少な
逸品です。洗練された甘い樽熟成香と穏やかなピートの香りの
絶妙なバランス。力強く重厚なコクと豊かな味わい、いつまで
も続くなめらかな余韻をお楽しみ下さい。

カスクストレングスとは、熟成のピークに達した時点で直接瓶
詰めした希少な原酒です。数量限定品。」

色をみると、シェリー樽熟成のようでしたので、念のため確認
したいと思い(私はシェリー樽熟成ウィスキーを好まないため)、
販売していた店舗のお兄さんに尋ねてみましたが、「さあ、
ちょっと分かりません」との弁。

シェリー樽でも他の樽でも、瓶詰め本数を逆算したくて(残在庫
数を把握するため)尋ねたのですが、4年前の瓶詰めと店員さん
の反応からすると、まだ多少は残っていそうです。

珍しいものがお好きな方は是非。

私はまだ飲んでいないですよ(笑)

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ブレンド失敗?

2013-06-04 14:00:44 | グルメ

私がブレンドするというときは、いくつかの対象が考えられる
のですが、今日はウィスキーです。

先日の夜に、ちょっとウィスキーが飲みたいなと思って、ニッカ
竹鶴12年を飲んでいました。


ニッカ 竹鶴12年 ピュアモルト

その日の気分か体調か、これが飲みたいというときには、これぞ
と思うのですが、この日は甘過ぎて途中で飲めなくなってしまい
ました。

ただ、ウィスキーそのものはもう少し飲みたかったので、別の
ウィスキーを足して味のバランスをとりたいと、近くにあった
江井ヶ嶋酒造のホワイトオークあかしを加えました。


ホワイトオーク あかし

そうすると、残念なことに両方のウィスキーは相性がよろしく
ないようで、悪いブレンドによくある味の焦点がボヤけただけ
ではなく、味が濁り苦味が出て、まったく飲めない別のウィス
キーになってしまいました。

もちろん、両ウィスキーの名誉のために書いておくと、両ウィ
スキーとも、単独で飲むとバランスよく美味しいウィスキーで
あり、たまたま両者をいい加減なバランスで混ぜた結果を捉え
ているだけの話です。

しかしながら、ここで発見したことがひとつありました。

竹鶴にあかしを混ぜる前、ブレンドしてみようと考えた動機は、
両ウィスキーともシェリー樽の原酒を一定割合使っていて、
味のベースになるウィスキーをシェアできるだろうと考えた
ことです。

それに加え、その日たまたま甘過ぎて感じた竹鶴に対し、甘さ
よりも新樽の尖った若さを感じさせてくれるあかしを加えれば、
甘さと尖った刺激が中和して、飲みやすいまろやかさを作り
だしてくれるのではないか?という期待と抱きました。

この2つの理由を受けての結果です。ですから、結果は美味しく
なかったことで失敗なのですが、失敗する組み合わせを見つけた
とエジソンのように考えれば、発見をしたのだと解釈することも
できます。

というのは、美味しいウィスキーを評して言う「まろやかさ」とは
ウィスキー全体の評価でよく出てくる「香り」「風味」「味」
「アルコール」などを、全体感を基準にブレンドして美味しさを
作るのではなく、「味」だけを切り取って部分感を基準にブレ
ンドして作り出すものだと判明したからです。

これが判明したということは、次回からのブレンド機会の際に、
意図に反するブレンド結果に対する選択肢を明確にできたという、
いわば引き出しを増やすことができ、ワザを磨いたことになり
ますので、ブレンダーとして一歩先に進むことができたと解釈
して良いのではないかと、少しだけ達成感をもっています。

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余市20年原酒

2013-06-03 15:00:57 | グルメ

北海道・余市蒸溜所のウィスキーが「飲みたい!」となった
ので、どれにしようか考えて、これにしました。

yoichigenshu-20yo.jpg

ラベルの印字では余市蒸溜所限定となっていますが、仙台に
ある宮城峡蒸溜所でも手に入るでしょう。もっと近くだと、
千葉・柏にある製樽・保存工場でも可能かもしれません(すみ
ません、行ったことがありません)。

ニッカの「原酒」と呼ばれるシングルカスク・シリーズは、
10年、15年、20年、25年の4種類があり、これらの
うち10年と20年はヘヴィーピートのホッグズヘッド新樽、
15年と25年はシェリー樽だと思われますので、本日の1本は
「ピートの効いた新樽モノ」20年熟成です。

ニッカの余市というウィスキーは、このピートの効いた新樽
モノが基本ですが、10年熟成と20年熟成とでは、ピートと
樽香とエステル香のバランスが大きく変わるのが特徴で、

10年では、樽香 > ピート香 > エステル香 (味覚含む)が、
20年では、エステル香 > ピート香 > 樽香 (味覚含む)に
変わります。

両者とも、オーク新樽のウッディでヴァニラな風味がボディの
骨格を作っているのは共通ですけれども、経年によるアルコー
ル度低下にもかかわらず、+10年の熟成で樽風味が後退し
エステル香が前面に出てくるのが興味深いです。

これは、熟成によって樽成分が減る?のか、アルコールが
強くなる?のか、アルコールとエステル香とは全く無関係?
なのか、人間が考える常識的な仮説と実際との大きな乖離が
熟成のひと言で片付けられているし、ロマンティックにいえ
ばマジックだと表現できるし、実際のところ説明が難しい
ポイントです。

こういうのは、ブレンダーとか工場の蒸溜長に聞かないと
分からないことですね。もしその原理が分かったら、ブレ
ンド技術に関して、色々とブレイクスルーしそうです。

個人的には、余市ならヘヴィピート×リフィルカスクの
20年熟成がいいなあ。

あ、間違いなく最高に美味しいですよ♪

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天使の分け前

2013-04-26 13:12:44 | グルメ

銀座テアトルシネマの《さよなら興行》として、公開されている
作品を観てきました。

angelsshare.jpg

観る前は、もちろんモルトウィスキー好きとして本作に興味を
もったのですが、実際に劇場に足を運ぶと映画として、さらに
銀座テアトルシネマさんが閉館になると聞くと、人生ドラマと
して興味を抱くように、その心境が変化した作品です。

モルト好きとしては、まず初めて耳にするモルト・ミルという
蒸溜所、それから同じく初めて見るというべきか、まだ訪れて
いないというべきかのディーンストン蒸溜所、さらによく知って
いるにも拘らずこれまた初めてみるグレンゴインとバルブレア
の両蒸溜所。これらに触れられるだけで満足なところを、コレ
クター垂涎というモルト・ミルがオークションに掛けられる等、
彼の地のモルト文化の深遠の一端を覗かせてもらう幸せ。

映画好きとしては、スコットランド版「フル・モンティ」との
触れ込みの通り、あの荒涼とした緑の大地とすっかり落ち着いて
ゆったり時間が流れるハイランドの景色、これまたいかにも
というようなスコットランドの社会習俗と、同じ英語とは思え
ない強烈なスコットランド訛りの英語。とくに英語は、私が
蒸溜所めぐりをしたときにはまったく困らなかったのに、この
映画の中で話されていることばは半分以上聞き取れず、とき
おりドイツ語か?とさえ思いました。

最後に、現代の資本主義の社会を通してみる「何もない」偉大
な田舎のスコットランドと、そこで生まれる希少価値が高値を
呼ぶ年代物のモルト原酒、その狭間で漂流するようにゆっくり
流れる時間と、どうすることもできない巨大な歴史のなかで
生かされている人間との、そのコントラストが、通常なら何も
起こらずに時間だけが過ぎているところを、上手に脚本として
映画に仕立て上げた映画人の手腕。さらに、それを「さよなら
興行」に選ぶ銀座の映画館の見識眼。

これらが混ざり合ったブレンドというのは、スモーキーなのか
ピーティーなのか、シェリーか、フルーティか、ヴァニラか、
樽香か、エステル香か、見る人によってそれぞれ味わいが異なる
に違いないというテイストでした。

万物は流転するのがこの世のルールですが、また一方で流転を
名残惜しむのが人間の一面でもあります。きっと、銀座テアトル
さんと本作は、そういう記憶に長く残り続けることでしょう。

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地球の歩き方の秘密

2013-04-23 14:16:48 | グルメ

1日空いてしまいましたが、LOCHSIDEのお話。いよいよ本家で
ございます。

と、その前に、日本での外国ガイドブックの草分けである、
地球の歩き方は、国別あるいは地方別に世界中の国々のものが
できあがってシリーズになっていますが、UKについては、
アメリカのように広大な国土があるわけでもないのに、イギ
リスとスコットランドで分冊となっています。一等最初は
まさか、地球の歩き方はスコットランド派なのかと思ったり
しました(笑)。

地球の歩き方.jpg

さて、スコットランドと湖水地方だけで分冊ですので、中身は
小さな村までよく網羅されており、そのなかにはスコッチで
おなじみのモルト・ウィスキーについても特集されていたり
します。

その特集ときたら、タイトルが「シングルモルトウィスキーの
聖地を訪ねる。」という具合ですから、その内容は推して知る
べしでしょう。表紙の写真はモルトバーのカウンターです。

しかし、極東の島国から眺める極西の島国にある垂涎のモルト
バーは一帯何処なのだろう?と想像力を逞しくして訪れるのが
聖地巡礼の楽しみというものだろうと思いますが、その実そう
いうモルトバーは存在しません。

いえ、厳密に言えば存在しますが、バーではなくホテル併設
のレストランの一部なのです。その場所こそがLOCHSIDEホテル。
オーナー、ダフィーの店です。

LOCHSIDE-HOTEL.jpg

おい、ボウモアのボトルを持たせてやる、と言って持たせて
くれた右側のオヤジがオーナーその人です。

面白いのは、地球の歩き方の表紙ページでもしっかりと客の
ようにして写っており、バーカウンターにいったときには
「お前、日本人だろ?この本知っているか?」というので、
ああ、知ってるよ、1冊持ってるよ。日本に置いてきた、
と言ったら、このバーがここだよと言って壁の裏側(笑)を
指差して笑う連中だったのです。

ロッホサイド・ホテルは、アイラ島ボウモア蒸溜所前で
今日も当地の酔っ払いがワイワイ飲んでいるでしょう。



 

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LOCHSIDE

2013-04-19 13:01:12 | グルメ

スコッチ・ウィスキーの「CH」は読み方が難しいものが多く、
LOCHSIDEと書いて、ロッホサイドと読みます。


LOCHSIDE 1991 19y 50% 70cl Old Malt Cask by Douglas Laign

ちなみに、このLOCHSIDEのように、日本語で言う「は行」で
読むもの、「か行」で読むもの、まったく読まないもの等々、
覚えるしかないでしょう。

私は、ロッホサイドと聞くと、アイラ島ボウモア蒸溜所前にある
ホテル兼バーを思い出します。その名前のウィスキーがあると
聞いて、バーテンダーさんに出してもらってきて驚きました。
1992年の閉鎖蒸溜所だそうです。

そのときは、ローズバンクが飲みたい気分で、尋ねてみたら
以前飲んだギリシャ文字ラベルのもので、あれはちょっとアル
コールが強かったので、もっとメロウなでもオーヘントッシャン
ではないものが飲みたいとオーダーして出てきた一本でした。

調べてみたら、元々ビールの醸造所だったところだそうで、東
ハイランドの蒸溜所ですが、ある意味でハイランドらしくなく、
穏やかな風味とエステル香に守られた果実味豊かなスコット
ランドの丘陵をイメージするようなスケールの大きい、しかし
ながら芯の一本通ったフルボディの良酒でした。

市況をみると、閉鎖蒸溜所ということもあり、ローズバンク程
ではありませんが、供給が非常に限られているからか、一本
1万円は下らない値段になっていますけれども、その価値はある
だろうと思います。

ボトラーズを選べるような方におすすめの上級モルトです。

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竹鶴35年

2013-03-28 16:23:23 | グルメ

現代ニッカウヰスキーの看板商品、竹鶴の35年を頂く機会が
ありました。

taketsuru35yo.jpg

竹鶴とは、創業者の竹鶴政孝にちなむ名前ということは容易に
想像ができますが、最低でも35年以上熟成させたウィスキー
ばかりブレンドすると、どのくらい美味しいのかは想像が及び
ません。

竹鶴という商品は、レギュラーとしては12年、17年、21年
というラインナップですので、これはいつも買えるわけではない
限定品ということも相まって、ただの飲みものなのにソワソワ
緊張がはしります(笑)。ちなみに1本5万円だそうです。

口をつけるのに勇気が必要なので、まずは香りからと思っても
思いのほか香りはありません。ただ上品でまろやかな香りが
うっすら漂う程度です。

次にすることといっても飲むほかありませんので、ひと口含んで
みますと、見事なくらい豪華絢爛にカラフルで色々な味が次々と
顕れ、手品を見せられているような気分になりました。もちろん、
無理やり言葉にしようとすると「美味しい」の一言しかありません。

それではあまりに乱暴だろうと、一生懸命感覚を研ぎ澄ませ、
ない頭をフル回転させてふた口めを含むと、よく熟成したグレー
ン原酒のうえに、少量のスモーキーな余市、シェリー、シェリー
と酵母がマジックを起こしたハニー風味、オークのウッド、極々
少量で気づかれない程度のピート、等々が次々に流れるように
やってきます。

その変化のスピードがものすごく速いので、ものすごく多くの
種類の原酒が使われているのだろう、という程度しか分かり
ません(笑)

原酒は、35年以上の長期熟成原酒ばかりですので、強力な
個性によるインパクトのパンチを打って行くというよりは、
しっかり熟成した穏やかな風味を、十二単のように次々と
チラリズムのように目線(舌線?)を奪っていくような見事さ
で、ブレンドしてからマリッジしたかどうかも見当がつきま
せんでした。

結局、どんな味なのかとか、どんな香りなのかとか、どんな
個性なのかとか、どんなブレンドなのかとか、すべての解析を
さらりとかわす「ブレンドとはバランスだ」と、無言で語り
かけているように感じ、やはりただ「美味しい」と一言零れる
だけでございました。

これだけ見事で、お値段もよくなると、私のような者には
「一体、どんな時、どんな人生のイベントで飲めばいいのだ
ろうか」と思ってしまって途方に暮れましたが、帰ってきて
から、そういえば桜が満開のときに飲むのが一番美味しいの
ではないかと思い至りました。あはは!

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