マックいのまたのMalt Whisky Distillery

モルト好きで株式公開/上場(IPO)の経営戦略,マーケティング,M&Aを支援する経営コンサルタントのプライベートブログ

メルシャン軽井沢20yo シングルカスク樽番号2321

2013-01-31 14:21:49 | グルメ

前々回に発酵臭と書いた軽井沢モルトの特徴は、このカスクで
気がついたものでした。

メルシャン軽井沢20yo 樽番号2321

「発酵臭」という言葉は、ノージングしていてそうそう思いつく
ものではなくて、じつは納豆臭いと感じたものを表現している
からです。アンモニア臭といってもいいかもしれません。

こう書いてしまうと、このウィスキーの品質に難があるように
捉える方もいらっしゃるかもしれませんが、むしろ逆です。

メーカがウィスキーを製造するときには、事前にきちんとした
生産計画があって製造に着手するものですけれども、蒸留した
ウィスキーを熟成させる樽は、ひとつひとつ個性があり、換言
すると当たり外れがあるものです。従って、出来上がるウィス
キーは樽による偶然性がついて回ることは想定されます。

しかし一方想定されない偶然性というものもあって、樽詰め
されたウィスキーが熟成する貯蔵庫のなかで生きている乳酸菌
などの雑菌が、寝かされているウィスキーに作用することも
あるのだそうです。これはウィスキー作りにおける偶然性の
楽しみのようなものでしょう。

そして、この軽井沢蒸留所で作られるウィスキーの一部にも
そういうことが起こっている。それがこの2321番の樽だっ
たということだと思います。いわゆるシェリーバットですけれ
ども、単なるシェリー樽原酒では得られないフレーバーを持ち、
ピート焚きとは異なる種類のスモーキーさを醸し出して、シェ
リーのもつベリー系のような甘みとブレンドしている。

これは樽の個性というのではもったいないくらいの特徴とも
いうべき強さであって、あの蔦で覆われたウェアハウスで生ま
れたウィスキーだからこそが持つ独自のフレーバーといって
いいと思います。

だからゴールデンプロミスでウィスキーを作り、シェリー樽で
させたからマッカランと同じかといえば、決してそうではない
と胸を張って断言できる立派な独自性がありました。

だからこそ、蒸溜所を譲り受けて再稼動させることができないか
と願わずにはいられないのです。

軽井沢20yo.jpg

ちなみに裏面のラベルには、次のような記述があります。

「1955年創業以来、職人達は、ひたすらモルトウィスキーを
造り続けてまいりました。
軽井沢蒸留所に眠るモルトウィスキーの中から、蒸留年をお選び
いただいた原酒を樽で熟成中のアルコール度数のままで瓶詰め
してお届けいたします。軽井沢蒸留所の時間の流れ、蒸留年、樽
ごとに異なる個性、味わいをお楽しみください。」

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ヴィンテージシングルカスクモルト軽井沢蒸留所樽出し原酒

2013-01-30 12:29:15 | グルメ

惜しまれつつ、昨年閉鎖されてしまったキリン軽井沢蒸留所の
シングルカスクです。

ヴィンテージシングルカスクモルト軽井沢蒸留所樽出し原酒.jpg

2000年蒸留で10年熟成と手書きされていますので、2010
年に瓶詰めされたものですが、この樽番号6470が最後のひと樽
だったはずです。何故なら、私の目の前で販売されていた最終展示
品を大人買いした人で販売終了となったからです。私はその目撃
者でした。

ラベルを見て驚くのは、熟成10年でアルコール度数が64.5度も
あることです。10年でコンマ5度しか落ちないということは
考えにくいので、65度蒸留ではないと思います。軽井沢では
何度で蒸留していたのでしょうか。それともウェアハウスに
高く積まれた最上段なら、こういうこともあるのでしょうか。

テイストしてみると、非常にバランスのよいシェリー樽原酒で
ありまして、食前酒にも食後酒にも使えるオールマイティな
ハイランド・パークのような美味しさを持っている素晴らしい
原酒です。

よくシェリー樽原酒がお好きな方だと、どれだけシェリーが
出ているかが指標として用いられますけれども、どれだけ出な
かったかという考え方も同じくらい重要だということを、この
カスクは示していると思います。まるで、よく出来たブレンド
ウィスキーのようです。例えばバラインタインの21年の
ように。

基本的に工場直販だったと思いますので、もう販売されている
ところはないと思います。もしどこかの店頭で見つけたら、
宝物を発見したと思って即買いです。こういったエントリー
製品がどれだけ本物かということに、作り手の意識の高さと
いうのが反映されるものです。

メルシャン軽井沢蒸留所のみなさんに、改めて乾杯を。

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富士山麓 樽熟 50°

2013-01-29 12:07:45 | グルメ

キリンが発売している本格ウィスキーをいただきました。
富士山麓という名称が与えられています。


富士山麓 樽熟 50°

キリンが御殿場にウィスキー蒸溜所を保有しているのは、随分と
昔から知っていて、いつか見学したいと思っているのですが、
地理的にクルマでないと行かれないところにあり、とはいえクル
マで行っては試飲が出来なくなる、というジレンマを抱えたまま
10年以上が経過しています。今年の目標のひとつに加えましょう。

さて、このウィスキーを飲んでみて、色々と考えてしまいました。

というのも、ウィスキーの業界では、単一蒸溜所で製造されたウィ
スキー製品に蒸溜所の地名をつけることが通例であり、日本の
ウィスキーメーカ各社も、山崎や余市、秩父といった名称のウィ
スキーが代表的な製品になっています。

ところが、キリンの製品に「御殿場」あるいは「富士御殿場」
(蒸溜所の正式名称が富士御殿場蒸溜所)というものはありません。

もちろん、ただのお酒という嗜好品だからルールに縛られる
必要はないという考えや、先のルールにも例外があるという
根拠もあるでしょう。しかしウィスキー市場で販売する製品で、
特段の希少価値があるわけでもないものに奇をてらった名称を
与えるのは、メリットとデメリットとどちらが大きいのかと
考えてしまいました。

もし先のルールを遵守しているというのならば、このウィ
スキーはシングルモルトではない、ということになります。
ここでいう「このウィスキー」とは、上級品の18年物をも
含んでのことです。

今回の樽熟 50°は、グレーン原酒を混ぜたブレンデッド・
ウィスキーだということを前提にして、トップノートに来る
のは、軽井沢にあったメルシャンのシェリー樽原酒だという
のは疑いのない事実でしょう。ただシェリーバットで熟成した
というのとは異なる、軽井沢ならではの発酵臭がついています。

その後で麦のフレーバーが香るミドルが広がり、その広がりを
受けたグレーンのボディがボトムとフィニッシュを担当する
ブレンドです。飲み手としては1000円前後の価格で、この
本格的な、しかも他社からの類似品が少ないウィスキーを楽し
めるのは大切なことに違いありません。

一方でブレンダーとしては、非常に分かりやすいブレンドである
ことと、先の業界標準とは異なる原酒の扱い方に不思議な感覚を
懐いたことも事実です。

これらのことを集約すれば、本製品と上級品のシングルモルト
18年とは方向性も中身もまったく異なる製品ということになり、
それが同じ「富士山麓」というブランド名を与えられていること
は、メリットとデメリットとどちらが大きいのかと考えてしまい
ます。

キリンという会社の位置づけや経営を考えると、富士山麓という
名称は如何にもらしい名称というところですけれども、キリン製
ウィスキーまたは富士御殿場蒸溜所のファンを育てるという観点
からすれば、製品ポートフォリオ以上の意味合い以上の頑張りを
期待せずにはいられません。

それは、キリンに買収されてもなお、軽井沢蒸留所がメルシャンの
看板を外さなかったような種類のことではないかと思料します。

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竹鶴17年ピュアモルト ノンチルフィルタード 2

2013-01-28 12:34:04 | グルメ

竹鶴17年については、2度目の登場となります。前回は青山で
より個性とアルコールの強いウィスキーを飲んだ後で試したため、
バランスがウリのこのウィスキーは「ただ飲んだだけ」になって
しまっていました。

竹鶴17yo.jpg

出直しの今回は、心して最初の1杯といたしまして、まさにこれの
ため、という心持ちで臨んだのですが、結論としてはあまりにも
スムーズなブレンドのため、フィルタードか否かは私にとっては
大きな問題ではなかったことになりました。

竹鶴というウィスキーは、ニッカウィスキーの新しい看板メニュー
であり、当然ブレンドもレベルが高いです。同じ「竹鶴」という
名前のウィスキーだとしても、エントリーの12年と、ミドルの
17年と、トップの21年では、ブレンドが異なることはもちろん、
明確に味の個性が異なり、誤解を恐れずにいえば方向性すら異なる
ものです。

こういう製品ラインナップのなかで、ミドルを担当することと
なる17年は、当然ながら個性よりもバランスが重視されること
になりましょう。それば、バランスよいブレンドのなかで、さらに
バランスを突き詰めた製品ということです。

従って、ノーズ、口当たり、ミドルの広がり、のど越し、フィニッ
シュと、どのパートをとっても極めてスムーズであり、誰が飲ん
でも「わぁ美味しい」と思うような素晴らしい味です。こういう
性格の製品テイストを基準にして、ノンフィルターのヴァージョン
なら、さらに一層香味成分が多く溶け込んでいるノンフィルター
ならではのボディの深さが特徴でしょう。

確かひと樽分限定だったと思いますので、そろそろ市場からは
目につかなくなってくる頃でしょうが、だから、それこそがこの
製品の値打ちであり、貴重な機会だということだろうと思います。

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