ヨーロッパの古い町は、家は石造で単調、道路は狭いなどよく観察すると異国風というだけで特別美しいとは思いません。しかしそこに住んできた人は非常に長い年月をかけて何とか住環境をよくしたいと工夫してきました。それがオーナメント（装飾品）であり、窓下、ベランダ、壁面を飾る草木などだと思います。こうして無機質な住環境を居心地よくしています。石畳の広場にある一本の大木を活かして、その下にテーブル椅子を配置してのんびりと飲んだり食べたりして時を過ごしています。草木の配置がポイントをついているので美しく感じます。
日本でもちょっと古い町に行くと、昔ながらの狭い道路に戸建住宅がびっしりと並んでいます。ところが結構落ち着くので不思議です。道路と家の間には空間らしきものはありませんが、各家、植木鉢などの草木を配置して、無味乾燥な町を味や潤いのあるものにしています。たいした緑の量ではないが、草木が道路と家の間で高かったり、低かったり、こんもりしたりして何とも言えない奥行きのある町を形成していることもあります。
今、地方は庭づくりがブームだそうです。広い庭を自分好みの美しい庭園にし、自分や家族で楽しむだけでなく、庭好き仲間に開放して、庭談義、花談義などをやっているそうです。しかし、地方で広い庭だから人にも見てもらえる自信のオープンガーデンができるのだろうと思うとそうでもないようです。庭が広いと管理が大変で、庭の狭い家が羨ましくなるそうです。そして、実際、地方でもいかに狭い庭でもどうすれば美しい庭・家をつくれるかと考えられているようです。地方は活動する場が少なく、庭づくり以外に時間つぶしがない面もありますが、いい時間潰しだと思います。
日限山4丁目は都市部の町ですから、地方のように広い庭の家はありません。しかし庭の広さを気にせず、自分なりに美しい庭・家づくりをやっていると、10年、20年、30年とたつと少しずつ庭づくりが上手になり、個性的な庭ができ、庭師も驚く庭になります。折も折、新型コロナウイルスで外出自粛になっており、庭づくりは都市部でも盛んです。気がつくと自分の庭・家だけでなく、町まで美しくなっているのではないでしょうか。
美しい町は、ヨーロッパの古い町ではない、わが町日限山4丁目と言えるといいですね。
