92歳。
梅田タマエさん
徳島県つるぎ町一字の山あいの集落に1人で暮らす。
「こんなボサボサで恥ずかしいわぁ」と、手ぐしで髪を整えるおばあちゃんは、友人の祖母で、女手1人で4人の子どもを育ててきた。
「足を使いすぎて、いまはこの通りなんよ」と、杖2本を器用に使いながら、日常を営む。
おばあちゃんの暮らす一字は、旧一宇村といい、名峰剣山の登山口に通じる国道438号沿いにある。
いまは、つるぎ町となり、統計上表には出にくいが、四国でも屈指の速さで人口が減っている地域だ。
おばあちゃんは小さい。 僕の妻祥子の半分くらい。
「あら~、あなた背が高いのね。 見上げないといけないね~」 と笑う。
ちょっと足は悪くなったけど、いまも毎朝、家の前の小さな畑で土をいじるのが日課だ。
この日は、高知から来た僕たちのために、野菜を摂りに畑に降りてくれた。
おばあちゃんのよたよたと歩く姿に、はらはらとして、つい、手を差し伸べそうになるが、
日々ここで暮らすおばあちゃんにとって、それは大きなお世話なんだと言い聞かせ、
静かに後ろから写真を撮った。
食べ切れないほどのほうれん草を採ってくれた後、また器用に階段を登る。
おばあちゃんちのすぐ前にある杉林の奥には、見事なまでの梅の木が、春の花を咲かせていた。
この梅を収穫して、梅干しにするのがおばあちゃんの恒例行事。
「ものすごーい酸っぱいよ」と孫の恵さん。
洗濯紐の掛けてある庭の一角には、鏡とブラシ。
ちょっと人見知りで、おしゃれで、笑顔の素敵なおばあちゃんの大ファンになった。
恵さんとおばあちゃん。
うん、よく似ている。遺伝子ってすごい。
「また遊びに来ますね」と挨拶をしておいとました。
春の素敵な1日。
四万十町の我が家からは2時間以上かかるけど、
それでも行きたくなる「おばあちゃんに会うワンデイトリップ」。
次はいつ行こうかな。