何で！？ダイエット痛風

忘年会のシーズンまっただ中、体調も気にしておられる方も多いんじゃないかと思います。たいがいの飲み会は医療従事者となるわけですが、意外と痛風に罹患されている方がおられます。そういう方々はよく勉強されていて感心するのですが、それはもともと醫學知識があることより痛風の激痛を体験したことにより、もうあの痛みは二度と味わいたくないという切迫感から勉強されたのではと推測、というよりお察しします。

痛風でよく言われるのが飲食物のプリン体の含有量です。
だいたいビールが引き合いにだされるのですが、ビールはさほど問題じゃないという専門家がおられます。プリン体の含有量（食品では100g中、飲料では100mL中何mg含まれているか）は絶対的なものなので医研が分かれるはずはないと思うのですが。
その根拠は、プリン体含量　魚介類　煮干し　746mgに対して、ビールは3.3mgから16.6mgと桁違い見低いからです。
ビールがなぜプリン体の含有量が多い印象かというと、・焼酎（25％）と比較するとビールはその１００倍含まれているからでしょうね。
プリン体の含有量だけで考えるとビールは問題ないと思われますが痛風でもう一つ考えるのが尿酸値です。
アルコールは乳酸となって腎臓からの尿酸の排泄を抑制し尿酸値を上昇させたり、　ビールなどの利尿作用が血中の尿酸値を上昇させるそうです。

この時期、魚介類が出ることが多くビールはなくてはならないものなので、どちらにしても痛風経験者は気をつけなければなりませんね...と言いたいところですが、一日に生産される尿酸の総量約７００ｍｇに比し、食事由来の尿酸は約１００ｍｇと、かなり少ないというのです。
じゃあ何が一番原因なのかというと、鹿児島大学病院内科教授、納光弘先生によれば、食事よりストレスや肥満のほうが、尿酸値への影響が多いと実地体験のデータからおっしゃってます。
もちろん肥満もなので食事が全く関係ないわけありませんが優先順位としてなのでストレスを解消すれば通常の飲酒（一日日本酒　１～１．５合、ビールならば３５０～７００くらい）であれば問題ないということになります。

じゃあ一番いいのはやせることに限るね！と言いたいところですがダイエットにより尿酸が上昇する場合があります。
以前、健康診断対策のための急激なダイエットをしていて、それが終わってから安心してビールを少し飲みました。
翌朝　足の親指の関節に違和感をちょっと感じてきました。
患部に鍼をすると心地よい響きがあったので、お灸もしてみました。
そして午後になると徐々に腫れ上がってきました。
明らかに痛風に似た症状です。
それが７日以上続いたのですが、ビールもそんなに飲んでないし、ダイエットしていたので内臓脂肪は少ないし、よくわかりませんでした。
調べてみると、急激にダイエットをすると、脂肪が分解されるときに、ケトン体という物質ができて、このケトン体が増えると尿酸が排泄されにくくなることがわかりました。
それで血液中の尿酸値が上昇する場合があるということです。
そこにむけて灸をしたので熱による皮膚組織の一時的破壊が起こり、修復されるまで血液は集まり続けます。
もうこうなると炎症症状はずっと続きます。

専門医によれば、尿酸の濃度が急激に低下した場合においても、痛風発作が起こるということなので、急激な飲食の変化というのはよくないということですね。

じゃあ鍼灸治療は必要ないじゃないかと思われるでしょうが、
鍼灸治療が関わるのが前述したように痛風の原因の一番である「ストレス」です。
それには首～肩　脳をリラックスさせ副交感神経の機能を高めるというのが精神的ストレスに対しての常套手段ですが、小腸など腸管からの排せつ機能が低下すると高尿酸血症になるという研究結果が発表されてますので、消化器系の機能を高めることも必要になります。

食事制限をやめたらそれ以来　痛風が起きてないという知人がいます。
ダイエットによることも考えられますが食事制限というストレスから解放されたことも再発予防になっているのではないかと思います。

結論として、適度な飲食とストレス解消になるのではないかと思います。


【勉強ノート】
痛風の鍼灸治療経穴
灸点
肝兪 腎兪 期門 肓兪 気海
刺鍼点
足三里 崑崙 太衝 太谿 三陰交 。


第2法
灸点
肝油 ふうし 曲池。
刺鍼点
百会 環跳 けんぐう 。

【参考資料】
「高尿酸血症に第３タイプ＝小腸での排せつ機能低下」東京薬科大、防衛医科大、東京大[英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ]より

「痛風はビールを飲みながらでも治る」（小学館文庫） ／納（おさめ）光弘　著

ブログ「ドクター江部の糖尿病徒然日記　」より