実写版「進撃の巨人」前編を観てきました
というのも、原作を読んで、アニメを観て
「進撃の巨人」の世界を楽しんでいる内に
人を喰う巨人、というものに対する恐怖心が薄れてしまいまして…
あのカルラさんが食べられるシーンに感じた恐怖と衝撃
先を読む勇気を一度失くしたくらいだったのですが
今や完全に慣れてしまいました
ということで、怖い巨人を観たいという気持ちに突き動かされ
原作とは大きく異なっているポイントをあらかじめ把握しておいた上で
大好きなハンジさんが実写版でも活き活きしていそうだという期待と
別の筋道で描かれる「進撃の巨人」とはどんなものだろう?という好奇心
そんな好意的な気持ちで観に行った結果
内容に触れない大まかな感想としては
巨人については大満足、人間については疑問符だらけ
断っておきますが、各キャラが原作と異なるからではありません
ひとつのストーリーとして観た上で
多くの人間の行動と感情に納得がいかないのです
ある人物に対して一言だけ言うのなら
戦え
一方で、巨人の恐怖は十分でした
見るからに不気味で、人を喰う音も凄い
あまりに恐ろしいので、画面から少し目を逸らした所もありました
テンポの取り方の問題でしょうか
不意を突かれて驚かされるような登場はしないので
察知して目を逸らすという逃げ道が観客には用意されています(笑
反撃のシーンでは幼いころ好きでよく観ていた
ゴジラやガメラを思い起こす映像で、ひとり興奮していました
そんな感じで巨人には大満足なのですが
話の展開が…疑問の連続で何だかスッキリしない。。
後編への布石ととれる謎もあるのですが
その様な大それたレベルではない疑問が次々とわいてくる
そのモヤモヤが解消されないまま前編が終わった感じです
しかも、そこで?という所で
あと、立体機動ですが、前評判で期待度をかなり下げていたからか
そこまで悪いとは思いませんでした
原作の動きをどうやったら再現できるか…
そもそも技術的に再現できるのか、なんて私には想像できませんし
まぁ、その立体機動が活躍するシーンでも
とある人物の行動がネックとなって、感歎できないんですけどね
というわけで、巨人の恐怖を味わえて満足した今
ストーリーに期待がもてないとなると後編は別にいいかな、という感じです
もう1度述べますが、「原作と異なるから」ではありません
単体の作品として、疑問符で覆いつくされた印象しか残っていないからです
さて、ここからは内容に触れて、不満を吐き出したいと思います
巨人を防ぎながら壁を人の手で築いたのに、再生能力が知られてない?
それに、巨人に街を襲われた状況から、助かる方法を示されないまま
唐突に2年後の状況に切り替わっても、「何で助かった?」としか思えない
装甲車で巨人に占拠された場所を通り、夜間に壁へ向かう際
巨人は眠っていても人の声に敏感だから
叫ぶくらいなら舌を噛め
上官のハンジさんから厳しく言い渡されて
観ている側も息を殺して緊迫した世界に入り込もうとしても
登場人物がのん気にどうでもいい話を始めるので
せっかく客席にも張りつめかけた空気が弛みましたね
夜明けまでに爆薬を壁まで運ばなければならないのに
何故、途中で車を止めて新兵に見回りをさせた?
阻止のための策略だと後編で明かされるとしても
表面上の理由が見当たらないと、疑問が先に立ちます
巨人に占拠されて2年が経った場所で、赤ん坊がいるわけがない
客席からはそうわかりきって観ているので
「助けなきゃ」とか言って、勝手な行動をとる登場人物に共感できず
緊張もしないし、驚きもしない
壁と街と軍艦島のビル群の位置関係が不明
原作を知っているのでおそらくこうだろうとは補完しましたが
知らなければ余計にわからなかったのではないでしょうか
赤ん坊は喰われたがミカサは甘噛み?
あの状況でエレンを恨んでも仕方がないでしょう
「世界は残酷」だから戦うのではなく、強いらしい奴の言いなりに?
終始言動が鼻につく「何か強いらしい」の域の出ないシキシマ
叫ぶなと言われてるのに、登場人物は巨人が怖くないのか?
映画の中の人物すら緊張していないなら客席は言うまでもない
子供を作っても無駄だと言うなら、父親もいらないでしょう
妙なシーンを挟まずに、突然巨人に襲撃された方が緊張感が高まったはず
そもそも見張りを立てていないの?
貴重な最後の爆薬を抱えた作戦なのに
誰一人として不測の事態に対応できていない
観客も納得の防御態勢が敷かれた上で突破されれば驚いただろうに
襲撃される様を観ても「当然だろうな」と白けて、感情移入できない
で、何故立体機動で戦わない?
技術か何かの事情で大勢での乱闘ができないのかもしれないけれど
それでも、装置が使えない事情を話の中に盛り込んでおかないと
何で装備しているのに使わないのか気になって、話に集中できない
特に、高みから見下ろして、口を出すだけの奴には殺意すら覚える
そんな状態でせっかくのハンジさんもダメにされてましたね
石原さとみさんの叫びは素晴らしかったのです
観に行こうと思った大きなポイントで、とても満足でした
ですが、ストーリー上では叫ぶだけの行動しない人になっていて
妙な絶望感が漂っていましたね
人類がどれ程知恵を絞ろうとも巨人には勝てない絶望感ではなくて
人類側に落ち度があり過ぎるので無理だろう、という気分
アルミンを巨人の口の中から助け出すシーンでは
実写だとこんなに生々しくなるのかと感心していたのですが
体内で溶けかかりながら「駆逐してやる」とだけ言われても…
巨人に対する憎悪がそれまで感じられていないのに
そんなになってから急に何を言っているの?という疑問
ですが、巨人化したエレンが現れ、暴れ回る所は
怪獣映画の雰囲気が濃厚で凄く高揚しました
ただし、わたしが楽しんだ怪獣映画シリーズは平成のもの
といっても、もう10年以上前のこと
そのため、懐かしんで喜ぶか、古臭いと貶すか
人によって分かれているようです
で、何でミカサはその巨人がエレンと気づいたのか
「私のせい?」って何がですか?
見捨てたのは確かだけど、それが目の前の巨人とどう繋がるの?
馬鹿夫婦のシーンを膨らませて、失われた爆薬
壁を修復するための最後の希望が潰えた所に
エレンの巨人化という救済が降ってくる
絶望的な状況に光が差して、そして後編へ
そういう筋道だと勝手に補ったのですが、描かれてはいませんよね
うなじから出てきたエレンがその後も戦えるのか不明のまま
エレン巨人の力で壁を修復しよう、というビジョンも示されず…
いや、そもそも壁の修復には使わないのかもしれませんが
それでも、爆薬がなくなったなら作戦どうするの?
ちょっと挟んだ後編の映像で何とかなるらしいことだけ示している?
牛とか吹っ飛ぶエレンとか、捕まったアルミンが喰われるまでとか
余計に間延びしているシーンを詰めていけば
もう少し濃い内容にできたのではないかと素人でも感じます
観ながら感じたことはもっとあったと思いますが
より細かなことなので忘れてしまいました
普段、映画の細かい点をあげつらう様なことはしないのですが…
何かひとつでも深く刻み込まれる美点があれば
多少の腑に落ちない点を覆い隠して、映画の印象として残りますからね
なのに、わたしが良いと思った巨人の描写も
押し寄せる疑問符の波に霞んでしまった様です
原作と筋道が違うのは大いに結構です
むしろ、別の視点で描かれる「進撃の巨人」の世界を楽しみにしていました
なのに、ストーリーの綻びが目立つあまり
最後まで、映画の世界に入り込めないままでした