甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

隠し砦の三悪人 1958

2024年01月31日 21時04分49秒 | だいたい映画、ときどきテレビ

 先日、BSでやってた黒澤明の『隠し砦の三悪人』というのを見ました。たぶん、前にもBSで見たはずでしたが、何だか『七人の侍』と混同してる部分もありましたね。サムライの方も、集落を攻めて来る山賊の砦を襲撃する場面があって、あのイメージが強かったからかもしれません。砦には奪われた妻たちがいて、その妻と農民代表の土屋嘉男さんが再会する厳しい場面もあったような気がします。

 どうしてそんなに酷な場面を描かないといけないのか? 人生とは、戦乱の世とは、かくも生きるのが大変な、愛する人をずっと守り続けることができない世の中なのか? そういう時代だと今までは何となく突き放して見ていたけれど、現実に自分が当事者であれば、もうどうにかなってしまいそうですね。いたたまれないです。

 あのサムライは、みんなが集まるところと、その山賊の砦の場面が移動シーンでしたが、隠しトリデは、ずっと旅する映画でしたか。ロードムービーだったわけです。

 冒頭の場面で、千秋実さんと藤原鎌足さんがテクテク歩いてきます。農民だけど、いくさに参加して、どうにか命からがら逃げてきたようでした。一攫千金とか、侍大将になるとか、はかない夢でも見てたんでしょう。

 街道を歩いていると、落ち武者がやってきて、追いかけてきた集団に切り殺されてしまう。さて、二人は、いくさに参加した雰囲気は持ってたけど、刀もないし、ただフラフラ歩いている旅のものにも見えるし、まるっきり戦闘意識がないので、集団は去っていきます。

 自分たちのふるさとである早川領へ山を越えていくようでした。いくさは、今いる秋月領で行われたらしく、お家はなくなり、そこのお姫様は逃亡しているということでした。

 そこでふと思います。ジョージ・ルーカスさんは、この隠しトリデを参考にして映画「スター・ウォーズ」を作った。この二人の農民は、R2-D2と、C3POだった。レイア姫は、もちろん秋月のお姫様(上原美佐さん)、ルーク・スカイウォーカーは三船敏郎になるのかな。ハンソロはどうなるんだろう。藤田進さんになるんだろうか。

 物語を進めるリズム(アクセント)役が二人、メインが若き男女、それを支える無くてはならない脇役、そういう配置はできています。

 軽いテンポで、無責任に動き回る千秋さんと藤原さんに引っ張られるカタチで、秋月領から山名領を経て、早川領へと旅をすることになります。もちろん追手は来るし、ピンチの連続だし、薪の中に隠した金ののべ棒を守らなくてはならないし、ハラハラドキドキが続く。これが脚本の妙でした。


 お姫様は、三船さんに守られている。けれども、目立ってしまうし、口がきけないということにして敵領土を抜けていきます。

 そして、クライマックス、山名領の火まつりが繰り広げられ、まるで怪獣映画のように村人が踊る場面があり、もちろんお姫様も村人たちに混じって踊ってしまう。

 薪は、すべて火と燃えたが、金は灰の中にあり、この灰の中から金をすべて回収して、さあ、早川領へというところでつかまってしまう。けれども、お姫様は、
 「もう、たくさん旅をしました。いろんな経験もしました。昨夜の踊りは楽しかった」と述べ、その時に憶えた歌も披露する。
 敵方の藤田進さんは、お姫様の歌も聞き、味方を裏切り、お姫様たちを助け、一緒に早川領へ逃走して、映画は終わります。

 そういう旅の映画だったのです。

 火祭りの場面、あんなダンサブルな祭りというのは、たぶん、戦国の世にはなかっただろうけど、お姫様の心を躍らせなきゃいけないし、魂もふっとぶくらいにはじけなきゃいけないから、日本伝統のおまつりではないけど、映画のシーンとしては楽しかったのかなと思いました。

 旅は、祝祭がなきゃ、次のステップに行けたという思いが生まれない、そういうことなんでしょうか。

 どちらかというと、もっと古くさい、なんだかわけのわからない踊りが、戦国時代的ではあると思うんですけど、それでは、お話にならないですから、やはり、あんなじゃなきゃダメでしたね。

 65年前の映画を見ました。次から次と襲い掛かるピンチと、それを知恵と勇気でクリアしていく、これが映画的でなくて何としましょう。今の若い人は、ゲームのなかで体験しているんだろうけど、それがどれだけ心躍るものなのか、それがわからないなあ。

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