
松阪に住んで、もう二十年以上になります。よくもまあ、住んでいますね。あまりメリットはないような気がするし、最初は津市に住みたかったんだけど、もうここに住んでしまっているので、なかなか動けないです。
ここに、私よりも前に住んでいた友人がいます。出会ったのは三十年くらい前で、たまに彼とその仲間たちと伊勢に行くことがありました。何回くらい行ったんだろう。数えるほどしかないけど、とにかく行きました。
お宿は、外宮前の宮前館というところに泊ったこともあります。今はなくなってしまったけれど、あそこで何日かお泊りしたなんて、もう何も憶えていないですね。どこにクルマを止めて、夜は何をしていたのか、全く憶えていません。たぶん、大人しくお宿でチンマリしていたんでしょう。
それから、精進落としで有名な、麻吉旅館というところにも泊ったことがありました。ここは風情のあるお宿で、まるで自分たちが「幕末太陽伝」のフランキー堺さんになったような、そんなタイムトリップできてしまう旅館でした。ここにも何日か泊って、たまたま朔日餅の日に当たっていて、うわさに聞く朔日餅を並んで買ってみようと、朝早くから起き出して、五十鈴川に並んで、朝、お餅を買ったことがあったんです。
たまたま私が提案したことでしたが、友人はそれをずっと憶えていて、私も彼も松阪に住むようになって、私は一度だけ買いに行ったことがありましたけど、それ以後は卒業したのに、彼だけは、土曜日か休日が朔日なら、朝早く並びに行くことにしたようで、それを分けてくれるようになりました。
彼は、私んちと、他にもあげるところがあるんだろうけど、あともう1つ、ご実家に持っていくそうで、もう二十数年そういうことを繰り返しています。

今月は、雪餅というそうで、お餅の上にお砂糖をふりかけて、雪みたいにしてあるそうです。なかなかおいしかった。白いお餅じゃなくて、茶色っぽいのは、何か細工があるんでしょうね。そういうありがたい細工にあまり気持ちがいかなくて、ただおいしいからパクパク食べさせてもらいました。ああ、もったいない。

火気の元火止まる(柿本人麻呂さんのシャレです!)のお札もついていて、ありがたいお餅でした。
こんなふうにしてくれる彼に、寄り添ってくれるような人いないかな、とか思ったりするんだけど、それは余計なお世話かとか思ったり、でも、やっぱり誰かと結ばれて欲しいと思ったり、あれこれと複雑な師走です。