弓道修行日記

このブログに、弓道修行する中で、学んだこと、考えたこと、試行したこと等を書き残し弓道修行の友とする。

福島第一原子力発電所の不可解な事故処理の原因を探る。(3)ー事故後の緊急体制が準備されていない

2011-05-03 | 意見発表
福島第一原子力発電所の不可解な事故処理の原因を探る。(3)
2011年3月26日キヴィタス日記から

3、事故後の緊急体制が準備されていない愚かさ
外から見ていると、原子力安全委員会が危機管理の中心であるのではという理解をもつが、実態は違う。ここにまず、危機管理の大きな問題がある。

3-1、危機管理組織になっていない原子力安全委員会
原子力安全委員会は原子力基本法、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法及び内閣府設置法に基づき設置されている。原子力を安全に利用するための国による規制は、直接的には経済産業省、文部科学省等の行政機関によって行われているが、原子力安全委員会は、これらから独立した中立的な立場で、国による安全規制についての基本的な考え方を決定し、行政機関ならびに事業者を指導する役割を担っている。このため、内閣総理大臣を通じた関係行政機関への勧告権を有するなど、通常の審議会にはない強い権限を持っている。
1. 原子力安全に関する基本的な考え方を提示するとともに、指針類の整備を行ってきました。基本的な考え方は行政機関の施策や事業者の安全確保活動に反映され、指針類は、安全審査の基準や自治体における防災対策の基準として用いられています。
2. 原子炉の設置許可などに関する安全審査を行い、安全性の確認を行ってきました。審査においては、規制行政庁とは異なる視点から検討を行っています。
3. 原子力施設の設置許可の後に規制行政庁が行う「後続規制」活動を監視・監査し、不断の改善・向上を促すことを目的とした「規制調査」を実施しています。
4. 原子力施設に関する事故などへの対応を行ってきました。特に、平成11年9月に発生したJCO臨界事故においては、現地における助言活動や事故調査報告書の作成など、専門的・技術的観点から事故対策に関する中心的な活動を行いました。(原子力安全委員会ホームページより)

事故対策のため、『原子力事故・故障分析評価専門部会』を設置して、国内外の原子力事故・故障に関する分析・評価を行っている。この内容の中には、原発の事故時の危機管理としての指揮権は含まれていない。何ともがっかりする組織である。このような組織であるから、原子力安全委員会の委員長が表に出ないのも納得できる。
班目(まだらめ)春樹・原子力安全委員会委員長は、福島第一原発の事故後、23日夜に初めて、報道陣の前に姿を見せた。「電源の喪失は深刻で予想を超える早さでトラブルが次々発生、技術陣の対処能力を超えた」と指摘。津波という想定外の自然災害に極めてもろかった原発技術の限界を認め、「震災時にも電源を容易に確保できるなどの耐震機能が必要だ」と、反省をこめて語った
事故直後、同委員長は、菅首相に呼び出され、官邸などで原子炉の構造や事故時の対処法などを解説したという。12日、ヘリコプターに同乗して菅首相を現地に案内した。視察中は、原子炉建屋内部で事故を処理できると見込んでいたものの、帰京直後に水素爆発が起こるなど、「トラブルが重なり、多くの対処が後手に回ってしまった」と説明した。炉心への海水注入は、津波による被害の判明直後に決断したが圧力を抜く弁の開閉にも、電源が必要だったことなど、「予想外の障害が重なり、注入までに数時間を要してしまったことも悔やまれる」としている。会見を拒否してきた12日間を謝罪、「官邸や文部科学省へ伝えれば良いと考えていたが、今後はできるだけ市民にも事故の軽重判断、評価を伝えたい」と語った。(読売新聞3月24日)

3-2、原子力安全・保安院-ここに危機管理を任せるのは筋が違う原子力・安全保安院は、原子力その他のエネルギーに係わる安全及び産業保安の確保を図る組織であると紹介されている。原子力のほかに電力、都市ガス、LPガス、高圧ガス、鉱山、火薬類についても管轄している。原子力については、原子力安全委員会とダブルでチェックしているという。
原子力に関する業務の内容は、①設計・建設段階の安全規制、②運転段階の安全規制、③廃棄段階の安全規制という規制と原子力防災が大きな内容である。原子力防災では、原子力事業者は地方自治体と共に、原子力施設内外の放射線の測定を行い、異常事態を迅速に察知することにより、原子力災害の発生を極力防止すること、法制面においても、原子力災害対策特別措置法や原子炉等規制法などに基づき、国、地方自治体、原子力事業者はこれまで以上に体制を強化し、原子力安全・防災対策に全力で取り組むとしている。原子力の災害対策には、その特殊性から、専門的な知識や見解が重要となるので、原子力災害対策本部長は、 必要に応じ原子力安全委員会に対し技術的事項についての助言を求めることとしている。
今回の事故の場合、どのような体制が組まれているのか定かでない。また、専門家なしには対処できない事故なのに、危機管理にどのように専門家を活用しているのか判然としない
テレビ等における発表を見ていると不安になる。専門家による危機管理チームと強いリーダーシップが必要に感じるのは私だけではないだろう。また、ここまで事態が悪化してきたならば、全世界の有能なスペシャリストを集めて、対処するような決断を下さないといけない。菅首相が事故直後、原発に視察に行ったり、司令塔を東京電力内に設置しようとした経緯を振り返ると、ペーパーだけの実のない災害対策になっているように感じる。

原子力災害特別措置法(2000年6月施行)
目  的 制定された内容
初期動作の迅速化
• 原子力事業者からの異常事態の通報の義務づけ。
• 所管大臣は初期動作を開始し、あらかじめ定められた手順に従い、直ちに内閣総理大臣を長とする「原子力災害対策本部」を設置。
• 当該市町村および都道府県の対策本部も設置。国は避難等に必要な措置を自治体に指示。

国、地方公共団体の連携強化
• 政府は現地に「原子力災害現地対策本部」を設置。
• 国と自治体の現地対策本部の連携を高めるため「原子力災害合同対策協議会」を設置(オフサイトセンターに置く)。
• 総合防災訓練の実施。

国の体制強化
• 国の原子力防災専門官を法的に位置づけし、原子力事業所の所在する地域に常駐させ、中核的役割を担う。
• 本部長は関係行政機関、関係自治体に対し、応急対策について必要な事項を指示。
• 本部長への防衛庁長官に対する自衛隊の派遣要請権限の付与。
• 主務大臣はオフサイトセンターをあらかじめ指定。
• 原子力安全委員会、調査委員の技術的助言の法的位置づけの付与。
• 原子力災害緊急時において各種対応機能の迅速な現場投入体制の確保。

事業者責務の確保
・ 敷地内における放射線測定設備の設置義務の明確化および記録公表の義務付け。 
• 通報義務の明確化。
• 事業者は防災組織を設置し、災害応急措置を実施。
• 事業者に原子力防災管理者をおく。
• 事業者の原子力事業者防災業務計画の策定義務の明確化。
今回の福島第一原子力発電所の事故は、1~6号機の6機の原子炉で同時に事故が発生するという大規模なものであった。それ故、対応できる人数が不足して困難を極めているのは事実であるが、従来のような政治家主導、官僚主導では危機は克服できない。四日市の民間業者がコンクリートポンプ車の提供を申し出たが、2日間何の返事もなかったとか米軍が原子炉冷却用の真水の提供と原子力のスペシャリストの提供を申し出たが、やっと真水の提供だけ認められ、スペシャリストの件は保留のままであるという
おそらく、官僚的手続きは危機に対処するスピードと能力をもっていないのではなかろうか。原子力のスペシャリストがリーダーシップを執れる組織をつくり、それを皆が支える組織にすることが必要である。問題解決に向けての専門家の知識と専門家同士のコミュニケーションと判断、これが現代社会が必要とする組織でありリーダーシップである。
追記:経済産業省原子力安全・保安院の西山英彦審議官は3月29日午前の会見で、「2号機タービン建屋の地下トンネルや立て坑にたまった水表面から高い放射線が測定された問題では、東京電力に対し、水が立て坑からあふれた形跡の調査と、地下水のモニタリングを指示したことを明らかにした」と報じられた。この期に及んで、責任を東京電力に押し付けるような無責任な姿勢には怒りを覚える。



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