(この格好で街中行きたくないなあ)
淡い青色の甲冑姿でリッターは、エスパーダと共に宝物庫を後にし、地上(第一の街)へ戻った。
「あの姿みるのどのくらいぶり?」
「うわーよわそー」
「形だけだわ、ありゃあ」
と言う街の人のヒソヒソ話がリッターの耳に入ってきた。
(やっぱ、そうだよな)
リッターは、こっそりとため息をつかずには、いられなかった。
「あそこが易ですね」
不意にエスパーダが歩みを止めた。
「易?って、まさかそんな不確かなので、この探求をやるんですか?」
幾らなんでも無謀であると、リッター思った。易商の情報は、ガセ込みであり、間違った方向へ追いやられ、自滅と言うオチがつく。
自滅しても、再スタートは可能ではあるが、精神にまで激痛が走る事をリッターは、経験者なので知っていた。
「レベル1の最底辺ですよ。大丈夫です」
エスパーダは、リッターを易者の前に引っ張り出した。
「どれ、左手を出してみて」
易者は、お決まりの翁であった。
「お前さん、素人も良いとこだね。お連れさん苦労しますぜこりゃあ」
翁は、虫眼鏡でリッターの手相を見ながら言う。
「素人の割りに、身なりは良いですな。馬子にも衣装ですな。さて、御次はと」
翁は、竹製の数本の棒を動かして、卦を見ていた。
「先ずは、南の塔の最上階で洗礼を受けなさい。その後で、またここに来なさい。この探求が自分に相応しいかを自分自身とその洗礼の者に訊ねる所から始めなさい。特にリッター殿のその素人さを抜くには最適です」
エスパーダは、易者に御代を支払い、礼を言うとリッターにモノを言わせない様に、易場を後にした。
「お怒りと凹みのお気持ちは察しますが、易商なんてあんなものですから、気にしないようにお願いします」
エスパーダは、リッターに頭を下げた。
「エスパーダさんは、悪くないですよ。でも、確かに苦労すると思いますよ。私、本当に騎士は素人どころか、出来損ないですし」
「出来損ないかどうかは、これからです。これから。さて、南の冒険者の塔へ行く前に、この街周辺で修業しないとなりませんし、資金稼ぎしないと塔まで行けませんね」
エスパーダは、道具袋から地図を出した。
「今、第一の街がここです。冒険者の塔は、ここ。途中、休憩私設はありませんし、歩いて3時間はかかるでしょうから、ちょっと骨がおれますね」
エスパーダは、地図で目的地を指差した。
「その地図、どこで手にいれたんです?」
リッターが問うと、
「ああ、宿屋に無料でおいてありましたので、頂いておきました」
と、すまし顔で言うエスパーダに、リッターは、いつの間にと思った。
「この街には、最低でも3日は居ないとダメそうですね。あとは、我々の頑張り次第です。さあ、怪物達と闘って、資金調達と修業をします。よろしくお願いしますよ、空色騎士リッターさん」
エスパーダは、リッターの背中を、軽く叩いた。
(っていってもなあ、この薄っぺらい防具と武器で行けるとは)
リッターは、胸の中で呟きつつ、エスパーダと共に第一の街の外へ出た。