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急行特急は行く…

急行特急THが、気のみ気のままに形創るブログ

空色騎士  その6

2017年05月07日 01時07分00秒 | 物語・小説

(この格好で街中行きたくないなあ)
淡い青色の甲冑姿でリッターは、エスパーダと共に宝物庫を後にし、地上(第一の街)へ戻った。

「あの姿みるのどのくらいぶり?」
「うわーよわそー」
「形だけだわ、ありゃあ」

と言う街の人のヒソヒソ話がリッターの耳に入ってきた。
(やっぱ、そうだよな)
リッターは、こっそりとため息をつかずには、いられなかった。

「あそこが易ですね」
不意にエスパーダが歩みを止めた。
「易?って、まさかそんな不確かなので、この探求をやるんですか?」
幾らなんでも無謀であると、リッター思った。易商の情報は、ガセ込みであり、間違った方向へ追いやられ、自滅と言うオチがつく。
自滅しても、再スタートは可能ではあるが、精神にまで激痛が走る事をリッターは、経験者なので知っていた。
「レベル1の最底辺ですよ。大丈夫です」
エスパーダは、リッターを易者の前に引っ張り出した。
「どれ、左手を出してみて」
易者は、お決まりの翁であった。
「お前さん、素人も良いとこだね。お連れさん苦労しますぜこりゃあ」
翁は、虫眼鏡でリッターの手相を見ながら言う。
「素人の割りに、身なりは良いですな。馬子にも衣装ですな。さて、御次はと」
翁は、竹製の数本の棒を動かして、卦を見ていた。
「先ずは、南の塔の最上階で洗礼を受けなさい。その後で、またここに来なさい。この探求が自分に相応しいかを自分自身とその洗礼の者に訊ねる所から始めなさい。特にリッター殿のその素人さを抜くには最適です」
エスパーダは、易者に御代を支払い、礼を言うとリッターにモノを言わせない様に、易場を後にした。
「お怒りと凹みのお気持ちは察しますが、易商なんてあんなものですから、気にしないようにお願いします」
エスパーダは、リッターに頭を下げた。
「エスパーダさんは、悪くないですよ。でも、確かに苦労すると思いますよ。私、本当に騎士は素人どころか、出来損ないですし」
「出来損ないかどうかは、これからです。これから。さて、南の冒険者の塔へ行く前に、この街周辺で修業しないとなりませんし、資金稼ぎしないと塔まで行けませんね」
エスパーダは、道具袋から地図を出した。
「今、第一の街がここです。冒険者の塔は、ここ。途中、休憩私設はありませんし、歩いて3時間はかかるでしょうから、ちょっと骨がおれますね」
エスパーダは、地図で目的地を指差した。
「その地図、どこで手にいれたんです?」
リッターが問うと、
「ああ、宿屋に無料でおいてありましたので、頂いておきました」
と、すまし顔で言うエスパーダに、リッターは、いつの間にと思った。
「この街には、最低でも3日は居ないとダメそうですね。あとは、我々の頑張り次第です。さあ、怪物達と闘って、資金調達と修業をします。よろしくお願いしますよ、空色騎士リッターさん」
エスパーダは、リッターの背中を、軽く叩いた。
(っていってもなあ、この薄っぺらい防具と武器で行けるとは)
リッターは、胸の中で呟きつつ、エスパーダと共に第一の街の外へ出た。

空色騎士  その7

2017年05月07日 01時06分00秒 | 物語・小説

リッターとエスパーダの第一の街周辺での修業兼資金稼ぎが始まった。

「げっ、いきなり怪物レベル1タイプA型が10匹出てきた。いけんのかこれ」
リッターは、剣を抜いた。
(軽い剣だな、こりゃあ)
リッターは、楯を片手に、怪物に斬り込んだが、見事にかわされた。
「その装甲で、この程度の怪物からのダメージ等大した事ありません。おもっきりいってください」
エスパーダは、最大5まである術レベルの1の威力の炎の術で1体1体を確実に倒していた。
(すげー威力。レベル1とは思えねー)
リッターもエスパーダと同じ術も織り込んで闘っては居るが、雀の涙程度の効果しかなく、1体倒すのに苦戦していた。
「ったく、束になってきやがってよー」
リッターがようやく3匹倒し次を叩こうとした時、エスパーダは残りの7匹を既に片つけていた。
(すげーな、やっぱ)
リッターは、息を切らしていた。
「3匹行けましたか。それなりじゃないですか」
エスパーダは、嫌みな感じや偉そうな上から目線での物言いのない表情とトーンで言った。
「この調子で、次も行きましょう。もうお次の怪物さんがこちらへやって来ましたよ」
エスパーダが、駆け寄る怪物を指差した時、小さな氷の粒がリッターの頭上から降り注いだ。
「いででで――ギャッ!」
怪物レベル1のCタイプが現れ、リッターに飛び掛かったのだった。
「このヤロ、なにすんぢゃいっ!」
リッターは、楯で怪物を突き飛ばし、斬りかかったが、仕留めるには至らず、また氷の術で怪物から反撃された。
「冷たっ!なにすんぢゃい!」
リッターは、再び怪物にきりかかり、ようやく倒した。
「お疲れさまです。ずいぶん、白熱してさっきより楽しそうでしたね」
エスパーダが拍手している姿の横には、リッターが今倒した怪物が2体転がっており、リッターは、握っていた剣を思わずダランと下げてしまった。
「リッターさん、後ろに気をつけてください!」
エスパーダの叫び声と共に、リッターが倒した氷の術を使う怪物がもう1体、リッター襲いかかい、リッターは、地面に倒れてしまった。そこに、怪物は、氷に術でさらに追い討ちをかけた。
「冗談だろ、おいっ!」
リッターは、火炎の術レベル1で、怪物をひとまず引き剥がすと、斬り込んだが、間一髪で、かわされた。
「すばしっこっ」
リッターは、再び火炎の術レベル1を使って、怪物に手傷を負わせ斬り込み、戦闘を終えた。
「お見事」
エスパーダは、親指を立てて、回復術をリッターにかけた。
「武道も術道も半端――と言う割には、バランスとれてますが、確かにどちらか一方だけとなると苦しい闘い方ですね」
エスパーダは、リッターの要った事に得心がいった。
「ですが、この感じならいけそうですね。問題なしです。じゃんじゃん行きましょう。今の闘いの感じで」
エスパーダが満足そうだったのでリッターは、ちょっと安心したのだった。

空色騎士  その8

2017年05月07日 01時05分00秒 | 物語・小説

第一の街周辺でのリッターとエスパーダの資金調達と修業は、3日では、すまず、7日かかった。

「なかなか資金が集まりませんでしたね」
宿屋の部屋の中で、エスパーダは、膨らんだ金貨袋を見て呟いた。
「レベル1なだけあって、修業にはなっても、一攫千金には不向き。修業になるとはいっても、最弱怪物を楽に倒し続けるのには、飽きが来る。詳しいことは知らないですが、探求終えても大した成果はない。それでいて、まるっきりの初心者の参画は不可能って言う妙な探求で有名なのに、エスパーダさん凄いと思いますよ、私」
リッターは、剣の手入れをしながら言った。
この7日間、倒した怪物の数は、圧倒的にエスパーダのが多かった。最弱怪物相手に、2度も3度も瀕死に近くなったリッターに、嫌な顔や素振りを見せず、回復に援護をしてくれる事は、リッターにとってはこれまでにない事だった。ここまで来れば、

――使えない――

――厄介者――

――穀潰し――

――手前勝手――

と言うこれまでにリッターに向けられた言葉が、エスパーダの口から出ても不思議ではなかった。
リッターも、自分の無力さには気付いてはいたものの、自分の努力いかんでは、どうにもならなかった。そこを漬け込むようにして、あれやこれや耳の痛い話をやかましく言われると、逆ギレ、と言う憤りの念にかられた。そして、自他共に、受け入れられない、と言う判断が自然とくだり、

――ここには、おいておけない――

――こんな所に、居たくない――

と言うものが生まれ、最後には、リッターが一団からの離脱を余儀なくされて来た。
エスパーダが眺めている金貨袋の8割、9割は、エスパーダの尽力で得たものであり、ここまでのリッターの歴史からすれば、

――お前なんか要らない――

と言う台詞が出てきても不思議ではなかった。
「正直、もうちょっと欲しいです。あと3日くらいかかりそうですが、リッターさん、お付き合い頂けます?」
エスパーダは、リッターの言葉を、まるっきり聞いていなかったのか、聞き流したのか、リッターが思っていない事を提案してきた。
「まあ、制限時間はありませんので、気楽に行きましょ、気楽に。あと3日、OKですよね?」
エスパーダの嫌そうな素振りはなく、お願いします、と言う雰囲気の表情と話し方に、リッターは、首を横には振れなかった。
「それはどうも。もう少しあると次がスムーズになりそうです」
エスパーダは、ほっとした表情を見せた。
「また、可笑い(おもしろ)戦闘をみせて下さいね。リッターさんの奮闘、良いと思いますよ」
エスパーダは、クスッと笑った。
「可笑いって、あんなのダメダメでしょう」
最弱怪物とは言え、相手は真剣そのもので、手加減などしてこない。
「もう何回も戦ってるのに、少しも強く成ってる実感がないですし、手こずってばかりです」
「スマートな闘い方ではないですが、闘いの方法はそれぞれですので、リッターさんのやり方が遅かれ早かれ出てきます。良い悪いは、別にしても」
エスパーダは、奢り昂る感じのないトーンで語った。それは、これまでリッターが出会った事のない感じのものが、エスパーダにはあった。それは、きっと、探求慣れしているが故の事なんだろう、とリッターは思った。

空色騎士  その9

2017年05月07日 01時04分00秒 | 物語・小説

リッターとエスパーダは、第一の街に滞在して、15日目にして、ようやく、冒険者の塔へ行く事になった。

「あの建物ですかね」
リッターは、視界の先に立つ地上5階建てくらいに見える塔を指差した。
「そのようですね」
エスパーダは、地図を見つつ確認した。
「あれで、3階立てだそうです。見てくれだけの塔ですね」
エスパーダは、地図を道具袋にしまいながら言った。
「あれで、3階ですか。内部は、入り組んでそうですね」
怪物も多いだろうな、とリッターは思い、肩を落とした。
「まあまあ、準備はしてきたんです。心配しないで行きましょ、行きましょ。見てくれだけの塔。楽しそうです」
この人は、何をいってんだろうか?とリッターは、思った。
この楽しそうな表情。
なんかあるのではないか――とリッターは思いつつ、塔への入口へと向かった。


(施錠されていない扉か。うまく出来てるな)
リッターは、冒険者の塔につくと、扉をあけた。すると、4、5歩先に壁が見え、左右に道が別れていた。塔内は、ガラスがない小さな灯り取りだらけなので、不気味さはなかった。
「迷路ですね、これは」
エスパーダと共にリッターが塔内に入ると、小さな炎がリッターに降ってきた。
「熱ち。なんだよ、げっ!怪物レベル2のB型の軍勢の歓迎かよ」
火炎を吐く怪物レベル2のB型が12匹襲いかかってきた。
「良いお出迎えですねえっ!」
エスパーダは、氷系術レベル1を連続で使い、4体を片付けた。
「リッターさんもやっちゃってください。ちょっと手強いですが、序の口です」
エスパーダは、さらに2体を撃破した。
「これで序の口?おわ、ひっかくんぢゃねえええッ」
怪物レベル2のB型が、鋭い爪でリッターに襲いかかってきたので、リッターは、斬り込み、何とか1体を倒すと、別の1体が、小さな炎を飛ばしてきたので、リッターは、楯でそれを防ぎ、叩き斬った。
「お疲れ様です。終わりました。いやー、歓迎されてますねえ」
エスパーダは、何て事ないと言う様子で、別れ道の所まで進んだ。
「あら、こんな所にもいらしてましたか」
どうやら先程と同じ、怪物レベル2のB型がいたようで、エスパーダの背後から別の怪物レベル2のB型が襲いかかろうとしたのを、リッターは見逃さず、氷系術レベル1でエスパーダへの奇襲を食い止めた。
「そちら側の怪物さんは、頼みましたよー」
エスパーダは、さらに別の怪物レベル2のB型と戦闘を繰り広げた。リッターは、エスパーダの背後からやってくる怪物レベル2のB型に攻撃を続けたが、6体もおり、きつかった。
「何匹いるんだよっ!吐くなこのヤロッ。あちーだろうがッ!」
リッターは、剣で斬りさこうとしたが、相手は飛来するので、攻撃がひらりとかわされ、怪物レベル2のB型は舌を出して笑った。
「バカにすんなっ」
リッターは、使えなれないレベル2の氷系術を使ったが、倒せたのは一体だけだった。
「ちっ、ダメか」
相変わらずの威力の弱さに、リッターは、唇を噛んだ。
「そうでもありませんよ、あと1撃です。やっちゃってくださいっ!」
エスパーダの言葉に、リッターの体が反応し、怪物レベル2のB型を1体倒した。
「あとは、私がやりましょう」
エスパーダは、氷系術レベル1を連続して使い、残り2体の怪物レベル2のB型を一掃した。
「いやー、居るもんですねえ」
疲れの色が全くないエスパーダに、リッターは驚くばかりだった。
「さてえ、正解の順路は、リッターさん側の様ですね。奥へ続く通路があります。反対側は、行き止まりでした」
エスパーダは、指で反対側を指した。
「リッターさんのレベル2術が、切り札な感じで、良いもの見られました」
エスパーダは、満足げに先へ進んでいった。
(切り札ねえ。あれで決まってればな)
ダメに変わりないのに、お世辞が上手い、とリッターは思ったのだった。

空色騎士  その10

2017年05月07日 01時03分00秒 | 物語・小説

冒険者の塔の2階に、リッターとエスパーダはたどり着いた。
「何ですかここは。1面単なる――空間ですか?」
リッターの先には、上の階へと続く階段が見えた。
「気を付けて下さい。大きな怪物さんの気配がしますよ」
エスパーダは、歩もうとしたリッターを制した。
すると上から、怪物レベル5(怪物レベルのマックスは15)か6はありそうな巨大な巨体怪物が、ドスンと音をたてて現れた。
「デカイのが来たなあ」
この力で行けるか?とリッターは、身構えた瞬間、怪物レベル5の巨体怪物ロカオンブレの太い拳が床に振り落とされ、塔が揺れ床に窪みが出来た。リッターとエスパーダは、何とか攻撃をかわした。
(どうりゃいいんだ?)
ロカオンブレは、床が窪んだ際に出来た石を、リッターに向かって投げて来たので、とっさに楯で身を守った。その時、電撃術レベル2でエスパーダは攻撃した。
「さっすが」
リッターは、剣を抜き、楯をロカオンブレの顔面に向かって投げ、左腕に切りかかった。
「良い攻撃です」
エスパーダは、水射術レベル2を放ち、ロカオンブレの左腕の硬度を落とした。そこへリッターの剣があたり、左腕を切り落とした。またも塔内が大きく揺れ、ロカオンブレは膝をついた。
「次は、右腕ですっ!」
エスパーダは、水射術レベル2を放ち、ロカオンブレの腕の硬度を下げた。
リッターは、ロカオンブレの右手を狙い、切り裂くと、ロカオンブレは、崩れ去った。
「素晴らしい!」
エスパーダは、親指を立てた。
「腕、上がりましたね、リッターさん」
リッターは、剣をおさめ、床に落ちていた楯を拾った。
「いやいや。エスパーダさんの術のお陰です。助かりました」
2人は、その場で休息をとる事にした。
「それにしても、こんな塔に、隠れた強い怪物さんがいるんですねえ」
ビックリしました、とエスパーダは言う。
「あのロカオンブレ、多分、レベル2だと思います」
リッターは思った。
一度、ロッカオンブレと別の場所で闘った事があった。その時も今と同じような闘い方であったが、水射術をかけてもそう簡単に腕は折れず、水射術レベル2と電撃術LV1を連発し、2人かかりで斬りかかって、ようやく片腕が折れ、その後、催眠術をかけ、また水射術レベル3を使って、両腕を落として戦闘終了だったのだ。その時、リッターは辛うじて電撃術LV1が少し効いたくらいで、催眠術も水射術も効果がなく、闘いの足を引っ張ったのをよく覚えていた。今回のロッカオンブレ、どうみても弱かった。
「そうですか?そんな例外は聞いた事ないですが、リッターさんの実力の勝利でしょう。まあ何であれ、この塔は攻略したも同然。いいじゃないですか。さっ、洗礼をうけましょ」
エスパーダは、リッターの手を取ると、塔の最上階へと向かった。


空色騎士  その11

2017年05月07日 01時02分00秒 | 物語・小説

リッターとエスパーダは、塔の最上階にたどり着いた。
そこは、褐色と橙色の絨毯が敷き詰められ、神像が2体まつられ、池のような水溜まりがあった。よく見ると、天井から壁面をつたってに水が落ちていた。
「誰も居ないようですね」
エスパーダはリッターと共にあたりを見渡したが、ただ水の流れる音しかしなかった。
「洗礼を受けると言ってもこれでは、どうにもならないですね」
リッターは、水溜まりを見てみると、視界の左端に小さな扉が見えた。そこにも水が滴っており、緑色の苔が生えていた。
「エスパーダさん、あれ」
リッターは、神像を近くで眺めていたエスパーダに、扉を指差した、
「はい?何かありました?」
エスパーダは、リッターの指差す方向をみても、何物も無いような表情をしていた。
「扉がありますよ」
リッターがそこへ行こうと神像2体の所を通った時だった。
目の前が青空色の石で出来た空間に移動していた。そこに、エスパーダの姿はなかった。
「空色騎士リッター、よく来てくださいました」
「待ちわびていました」
先程の神像2体が、リッターの前に現れた。片方は男性、片方は女性だった。
「ほほう。巧く使えているようですね。その装備を」
男性の神像がそう語った。
「その装備、使い心地はいかがでした?」
女性の神像がリッターに問いかけた。
「これですか?思った以上に丈夫で驚いてます。宝物の美しさがあるのに、壊れない上に軽量でした」
怪物の攻撃を何度も受けたのに、美しさは変わらなかった上に、剣も大きな刃こぼれや折れたりがなく、華奢な感じの外見にもかかわらず、ロカオンブレの腕を、いくら術法が効いていて、レベルが低かったにしても、この剣が折れなかったのは、不思議であった。
リッターは騎士の訓練時代、斬り方が悪く剣を何本も折ってダメにしていたので、ここまで来たのは奇跡でもあった。
「そうですか、気に入ってもらえたか」
神像2体は、嬉しそうな表情を浮かべた。
「では、洗礼を行います。その後ろの扉から外に出れば、儀式は終了です」
女性の神像が言う。
「空色騎士リッターのこれからに我らの祝福と希望が宿りますように」
男性の神像がそういうと、リッターの背後の扉が開き、自然とリッターは、扉の向こうへと歩き出していた。

空色騎士 その12 (終)

2017年05月07日 01時01分00秒 | 物語・小説

「どうしたんです?この壁に何かありますか?」
リッターは、気がつくと、水が流れる壁を不思議そうに見つめているエスパーダの前にいた。
「えっ――ああ、そこに扉がありますよね?」
「扉、あります?」
エスパーダは、不思議そうな顔を浮かべていた。
「ありますよ、ほら」
リッターが扉を開けると、いきなり場面が、夜の第1の街の入口に居た。
「ようやく街ですね。長い旅でしたね」
エスパーダが振り向いてリッターに言った。
「あの綺麗な神像2体との御対面の為に、ロカオンブレを苦心して倒しただけでしたね。これで、洗礼されたのか、解りませんが」
エスパーダは、あっけらかんとそう言った。
「でもまあ、リッターさんの闘い方、沢山見られて良かった。不器用でもなんかこう味がありますね」
楽しかったですよ、とエスパーダは嬉しそうな表情を浮かべて言い、2人は宿に戻った。


「みちがえて、貫禄がつきましたな」
翌日、リッターとエスパーダは、塔に行く前の易商を訪れていた。
「ですよね。リッターさんは、特に」
エスパーダがリッターを見た。
「それで、神像2体以外に何かありましたかな?」
易商が問う。
「恐ろしい怪物が1体いただけで、とても洗礼されたとは言えなかったです」
エスパーダは、はっきりと言った。
「リッターさんは?」
と易商に問われた。
「洗礼――されたかもしれません」
リッターは、あの日あったことを話してみた。
「なるほど。どうやら、リッターさんには効果があったようですな」
易商は、してやったりと言う顔をした。
「それで、私が問いかけた、
''この探求が自分に相応しいか,,の問いの答えはどうですかな?」
易商はリッターとエスパーダに問いかけた。
「そうですね。相応しいと思います」
リッターは、自信をもってそう言えた。
「エスパーダさんは?」
易商が訊ねる。
「勿論、リッターさんと共に続けたい探求です」
エスパーダは、柔らかく朗らかな表情を、リッターに見せた。
「良いんですか?ホントに」
「ええ。何かこの探求を続ける事に希望をくれましたし。是非」
エスパーダは、リッターに右手を差し出した。
リッターの心にもこの探求を続ける希望が生まれた気がしたので、その手を繋いだ。
(終)


急行特急THが見た夢の話

2016年05月15日 18時29分39秒 | 物語・小説


急行特急THは、ある時、不可笑いかつ退屈な夢を見た。

繁華街を急行特急THがあるいていた時、どこかで聴いた曲を歌うストリートミュージシャンを見かけた。演奏者はアコスティックギター片手に歌い、ご丁寧に今日演奏する曲目が書かれた看板を置いていた。それをみると、カバー曲をやるようだった。そして演奏者をよくみるとExpress塚村尚人風の男性だった――いな本人だった。
(塚村さん、本業そっちのけで、こんな所でストリートミュージシャンか。Expressと言っても所詮、妄想、FM急特でしか有名ぢゃないもんなあ)
急行特急THは、溜め息をついて、何もみなかった事にして、その場を後にした。

それから何回かExpress塚村尚人がストリートミュージシャンに化けて、アコギ片手に歌う姿を急行特急THは見かけた。
(あの人も暇なんだなあ)
ごくろうだな、本業は大丈夫なのか?と言う目をちらっと浴びせて、その日も演奏場を通り過ぎた。

別の日の事。
「塚村さん、またこんな所で、偽の芸名を騙って、歌ってるんですか?」
毎度、Express塚村尚人を見かけていた場所に、Expressの雀宮朝輝であろう男性が呆れていた。
「私は、インターバルラピッドサルヴィスなんです。有名なExpress塚村尚人さんに似ているとよく言われるんですが、人違いです」
と自称インターバルラピッドサルヴィスは、言ってそっぽを向いた。
(何かどっかで聞いた場面だなあ)
急行特急THの右米神辺りか汗が一筋流れた。
「Express塚村尚人は、ここにいますっ!」
Express松ヶ矢久屡深とおぼしき女性が、インターバルラピッドサルヴィスの右手をあげて叫ぶように言った。
「絶句汗」
インターバルラピッドサルヴィスは、顔をひきつらせて、左右の米神と額全体にそば線を垂らしているのが見えた。
「塚村さん、偽の芸名を語ってこんな所で、他人の歌う時間があるなら、新曲の1つでも作って下さいね」
Expressのドラムス兼裏リーダの低田寿とおぼしき男性と雀宮朝輝そして松ヶ矢久屡深風の3人にインターバルラピッドサルヴィスは連行されていった。それはまるで、いつものモーニングオンの様であった。
(可愛そうに。だが退屈なシーンだなあ)
と急行特急THが思った時、窓の向こうに朝日が見えた。
(朝ですか。早いっすねえ)
と思った時、ふと目の前をみると、ノートパソコンの文書作成ソフトに数行文字が打ち込まれた後、何も書かれてないまっさらなページが見えた。
「あっ!、いっけねえ、モーニングオンの台本書き忘れたあああ」
と思っても後の祭りであった。
「これぢゃあ、Express塚村とかわんねえぢゃないか!えっ?俺、この物語の主人公?そんな話、台本に書いてあるう?」
急行特急THは、ひとり、迷走の叫びを上げた。

「寝過ごして、台本を書き忘れた?またかよ、ヘタレソツネイラ!どうすんだよっ?今日のモーニングオンはよお!」
涼風鈴子は、急行特急THの失態に吠えた。
「また、やったつもりでモーニングオンを終えるつもりですか。困りましたわねえ」
木田麻衣子は、もはや言うべき台詞を失っていた。
「で、今日の放送、僕は出られんだよね?」
皆の君の僕の地球のアイドル印台淑丘に、急行特急THは、言い寄られた。
「すいやせんねえ。まあ、なるようにしますから」
急行特急THは、エヘラアともはや言うべき台詞が尽きていたので、その場から逃げ出した。
「まちやがえええ!」
全員に追いかけられる急行特急THであった。

(完)

木田麻衣子のナレイションで行く… その1

2016年01月26日 20時59分31秒 | 物語・小説
木田麻衣子「それはあるとき、ハンドルネイム急行特急THが、目赤駅から臨時最終電車に乗った日の事だった」
急行特急TH「今夜に限って終電時刻を逃すとはなんと言う事でしょう」
木田麻衣子「その日、急行特急THは、目赤駅前の終電時刻を間違えてひとりカラオケに飲め込んでしまったのだった」
急行特急TH「まあ仕方ない、行ける所まで行ってみるか」
木田麻衣子「急行特急THは、東京南急特鉄道の目赤駅の改札を抜けようとした時、不意に電車案内電子盤が目に入った」
急行特急TH「何?終点まで行く臨時最終急行特急?」
木田麻衣子「何だか嫌な予感をおぼえた急行特急THであったが、そう言う筋書になっているので――と言う話は台本には書いてないです。閑話休題、急行特急THは、プラットフォームに降りた。特に変わった様子もなかった――と言いたかったのだが、そこには、どこかで見たキャラクターが一般乗客に混じっているのが目についた」
急行特急TH「やっぱりな、そう言う筋か」
木田麻衣子「急行特急THが絶句呆れと肩を落とした所で、臨時最終電車がやって来て、扉が開いた。そしてそこに現れたのは」
Express松ヶ矢久屡深「急行特急THは、ここに居ます!」
急行特急TH「絶句汗」
木田麻衣子「急行特急THはExpress松ヶ矢久屡深に自分の右手をあげられた。その時、電車の発車ベルがなると、Express松ヶ矢久屡深は急行特急THの右手を下ろすと車両から降りていった」
急行特急TH「なんだこの――放送自粛――のような雰囲気は」
木田麻衣子「急行特急THは、1日の疲れがどっと出たものの東京南急特鉄道魅力である急行特急電車の先頭車両の展望席に向かおうとしたのだが、車両と車両の仕切扉が開かず、仕方なく近くの座席の座った。すると」
科学者兎「毎度御乗車ありがとうだ兎ひゃー。この電車は、臨時最終急行特急電車だ兎ひゃー」
急行特急TH「絶句ッ!」
木田麻衣子「わざとらしいありがちな展開に絶句した急行特急THであった」
急行特急TH「まあ、シーバス32世の時よりはいいな」
木田麻衣子「そう自分を慰めた時だった」
博士兎「猫(=^¬ρ¬^=)知らないか? ̄(=∵=) ̄ひゃー」
急行特急TH「いや、見てねえぜ。(=^¬ρ¬^=)は猫ぢゃないわな」
博士兎「 ̄(=∵=) ̄は月には帰らない ̄(=∵=) ̄ひゃー」
急行特急TH「絶句汗」
木田麻衣子「なんだこのFM急特の“Morning on”の様な展開は?と急行特急THが思った時だった」
猫(=^¬ρ¬^=)「にやあ」з-|ども|
博士兎「!!」→猫(=^¬ρ¬^=)をヒトモフ→猫(=^¬ρ¬^=)と姿を消す。
急行特急TH「おたっしゃでえ」ノシ
木田麻衣子「急行特急THが手を振った時だった」
続く





木田麻衣子のナレイションで行く… その2

2016年01月26日 20時59分07秒 | 物語・小説
涼風鈴子「今、ここに兎が来なかったあ?」
木田麻衣子「いきなり車内に現れた涼風鈴子に、急行特急THは、''何だ、お前か,,と思った」
急行特急TH「兎?なら、猫つれてあっちに消えましたけどねえ」
涼風鈴子「またか。兎はあくまで月に帰るべきであってえ」
木田麻衣子「と言う毎度の涼風鈴子の台詞に、急行特急THは言った」
急行特急TH「インチキDJは、火星にかえってなさああい」
涼風鈴子「やかましいや、ヘタレソツネイラ!」
木田麻衣子「涼風鈴子から、キッツーいハリセンアタックを急行特急THはくらい、しばらく悶絶しているところに」
白馬の国家公務員20代午年が現れた。あまりのイケメンぶりと高学歴、高収入に急行特急THは深い嫉妬を覚えた」
白馬の国家公務員20代午年「あの、兎さん知りません?こっちの方で気配を感じたのですがあ」
急行特急TH「猿ねえ」
木田麻衣子「急行特急はTHは、嫉妬により正しい答えを言わないで居ると」
らなちゃん「白馬様!」
木田麻衣子「らなちゃんが現れ、白馬の国家公務員20代午年に飛び付いた」
白馬の国家公務員20代午年「らなちゃんに用はありません。僕は天王星には帰りません」
らなちゃん「白馬様は、あくまで天王星で私と幸せになるのですう」
木田麻衣子「らなちゃんはそう言うと白馬の国家公務員20代午年を持ち帰った」
急行特急TH「良いよなあ、美人美男で旦那は3高、羨ましいったらありゃしない」
木田麻衣子「自棄の溜め息をついた急行特急THの不快指数が105上がると、背後の方から」
博士兎「兎ひゃー、兎ひゃー、兎ひゃー」⌒バナナの皮
急行特急TH「バナナの皮?」
博士兎「あげる兎ひゃー」
急行特急TH「絶句汗」
木田麻衣子「しかし、受け取ったバナナの皮には、''臨時最終急行特急に御乗車有り難うだ兎ひゃー,,とかかれて、更に次の句が告げない、急行特急THであった」