引き続き、COURRIER JAPONから。
金融危機の震源地ニューヨークで、破格の報酬を受け取る投資家の素顔
リーマン・ショックもどこ吹く風 年収2500億円のヘッジファンドの王者
◆ジェームズ・サイモンズ/資産運用会社ルネッサンス・テクノロジーズの創業者で元数学者。マサチューセッツ工科大学(MIT)で数学を学び、23歳にしてカリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得。1961~64年にMITとハーバード大学で数学を終えた後、米国防衛分析研究所(IDA)にて5年間、研究員として勤務。68年、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の数学部長に就任。76年、米国数学界の権威あるウェブレン賞を受賞。82年にルネッサンス・テクノロジーを創業。現在、およそ200億ドルの資産を運用している。
成功の鍵は「元数学者!?」メディア嫌いで知られる男が科学誌の取材に応えた。
―取初に数学に興味を抱いたのはいつですか?
サイモンズ(以下S) 数学は幼い頃から好きだった。ラビ(ユダヤ教の指導者)になりたいと思ったこともあるけれど、大学に入ってからは、数学一筋だった。ただひたすら理論証明に熱中していたよ。
―御社が求める人材は?
S 私は常にトップクラスの才能を求めている。ルネッサンスは教育機関ではなく、あくまで研究機関だからね。スタッフの多くはすでに複数の論文を発表し、それぞれの専門分野である程度の名声を得ているか、そうでなければ投資先の市場の数理モデルを構築できる、優れたコンピュータ科学者だ。相当高い基準を設けているとは思うが、結局、そこに結果がついてくるんだ。
―さまざまな学術分野の研究者を採用しているのはなぜですか?
S 当社は数学的な理論だけを絶対視しているわけではない。大量のデータを分析し、市場の動向を探るというビジネスには、天文学的なセンスも大切だ。あらゆる仮説を証明するには「木を見て森を見る」ことも重要だから、当社では天文学者も採用している。数理モデルの構築には数学だけでなく物理学も必要だ。そのため常にあらゆる研究分野を見渡して、その時々に必要なものを活用している。研究だけでなくビジネスという別の情熱も必要だから、結構大変なんだ。数年後には引退したいといつも言っているんだが、きっとその頃には、また別の仕事を抱えているだろうね。
―ビジネスが成功した要因として運はどの程度影響しましたか?
S ヘッジファンドが成功する確率は7割。残りの3割は損をするが、それは運の問題だ。投資の世界では当然ながら運が左右する。だが幸い、当社は運に左右されにくいヘッジを設けている。
―数学界に未練はないですか?
S 大学には大学の良さがあるが、後悔するほどのものはないよ。何事も妥協点が必要だ。完璧なものなんてないんだよ。
―もっと積極的にメディアに露出したいという願望はないですか?
S ジョージ・オーウェルの小説、「動物農場」に登場するロバのベンジャミンがこんな台詞を言うんだ。「神様は僕がハエを追い払えるようにしっぽを下さった。でも僕はむしろ、しっぽもハエもなかったらいいのにって思うんだよ」ってね。私がメディアに対して思うのは、じつにそんなところだよ。
シーズ・マガジン(USA)より
サイモンズ「4つの戦略」
◆1、世界有数の頭脳集団をフル活用
サイモンズが率いるルネッサンス・テクノロジーズの武器は、数学者や統計学者など世界有数の理系エリート集団だ。社員300人のうち、約半数が博士号を取得している。これは同社が高度な数理モデルに基づいて市場を分析し、独自のコンピュータ・プログラムで自動売買を行う「クオンツ運用」と無関係ではない。
かつて太陽の当たる場所の変化が市場に及ぼす影響について研究を試みたというサイモンズは、物理学や天文学の知識もビジネスに活用する。常に「新しい理論の誕生」を求め、あらゆる物事の無限の可能性を信じて投資を惜しまぬ彼のもとには世界中から稀有な才能が集結する。才能が成功を、成功がまた才能を呼ぶ“黄金の図式”がここにある。
プルームバーグ(USA)より
◆2、超高額ファンドで一気に攻める
設立20周年を迎えたルネッサンスの旗艦ファンド「メダリオン」は、ヘッジファンド史上最も成功を収めている伝説的ファンドだ。運用資産は80億ドル(08年8月時点)。08年は80%のリターンをあげた。通常ヘッジファンドは運用手数料として2%、成功報酬として利益の20%を投資家から受け取るが、メダリオンは運用手数料が5%、成功報酬は利益の44%と高額。同ファンドの驚異的な成功率と手数料の高さを見れば、そのトップに君臨するサイモンズの報酬が高額になるのは当然だろう。
メダリオンに投資できるのは、サイモンズ本人と彼の取引先の個人(多くはファンドマネジャークラスの超富裕層)、社員とその友人に限られている。まさに富のスパイラルだ。
インスティテューショナル・インベスター・マガジン(USA)よリ
◆3、秘密主義で黙して語らず
業界を震撼させたメダリオンの成功で、サイモンズの名は業界の外にも知れ渡った。彼を知らぬ人がいるとすれば、それは彼が、自ら多くを語らないからだろう。メディアに露出することを極力避けてきたサイモンズには、有名になりたいなどという願望は、まったくない。彼が成功を手にした最大の理由は、じつはこの秘密主義にある。
米国でサブプライムローンが破綻した07年、彼の報酬額は過去最高の28億ドルだった。08年のリーマンショックを受けてもなお、その額はわずか3億ドル減少しただけだ。彼がなぜそこまで無傷でいられるのか不思議だが、本人に聞いても答えが戻ってくることはないだろう。彼にとって、それは語るまでもない「明快なこと」なのだ。
ニューヨーク・タイムズ(USA)より
◆4、多額の寄付金で社会貢献
サイモンズには慈善家としての顔もある。ヘッジファンドで得た破格の資産を、数学や科学、教育、保健分野の支援に投じ、自閉症の研究にも積極的に貢献している。06年には数学と科学の研究費として、ニューヨーク州立大学に2500万ドルを寄付。同大学には08年にも幾何学と物理学の研究費として、さらに6000万ドルを寄付している。
サイモンズが慈善活動に開眼したのは、自閉症の娘や、最愛の息子2人の不慮の死が影響しているとされている。彼に敵が少ないのは。利益を自分の懐に溜め込まず、社会に還元し、循環させるその独自のやりかたにあるのかもしれない。英国の有力紙フィナンシャル・タイムズは06年、サイモンズを「最も賢い億万長者」と賞賛している。
ニューヨーク・ウィムズ(USA)より
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金融危機の震源地ニューヨークで、破格の報酬を受け取る投資家の素顔
リーマン・ショックもどこ吹く風 年収2500億円のヘッジファンドの王者
◆ジェームズ・サイモンズ/資産運用会社ルネッサンス・テクノロジーズの創業者で元数学者。マサチューセッツ工科大学(MIT)で数学を学び、23歳にしてカリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得。1961~64年にMITとハーバード大学で数学を終えた後、米国防衛分析研究所(IDA)にて5年間、研究員として勤務。68年、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の数学部長に就任。76年、米国数学界の権威あるウェブレン賞を受賞。82年にルネッサンス・テクノロジーを創業。現在、およそ200億ドルの資産を運用している。
成功の鍵は「元数学者!?」メディア嫌いで知られる男が科学誌の取材に応えた。
―取初に数学に興味を抱いたのはいつですか?
サイモンズ(以下S) 数学は幼い頃から好きだった。ラビ(ユダヤ教の指導者)になりたいと思ったこともあるけれど、大学に入ってからは、数学一筋だった。ただひたすら理論証明に熱中していたよ。
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S 私は常にトップクラスの才能を求めている。ルネッサンスは教育機関ではなく、あくまで研究機関だからね。スタッフの多くはすでに複数の論文を発表し、それぞれの専門分野である程度の名声を得ているか、そうでなければ投資先の市場の数理モデルを構築できる、優れたコンピュータ科学者だ。相当高い基準を設けているとは思うが、結局、そこに結果がついてくるんだ。
―さまざまな学術分野の研究者を採用しているのはなぜですか?
S 当社は数学的な理論だけを絶対視しているわけではない。大量のデータを分析し、市場の動向を探るというビジネスには、天文学的なセンスも大切だ。あらゆる仮説を証明するには「木を見て森を見る」ことも重要だから、当社では天文学者も採用している。数理モデルの構築には数学だけでなく物理学も必要だ。そのため常にあらゆる研究分野を見渡して、その時々に必要なものを活用している。研究だけでなくビジネスという別の情熱も必要だから、結構大変なんだ。数年後には引退したいといつも言っているんだが、きっとその頃には、また別の仕事を抱えているだろうね。
―ビジネスが成功した要因として運はどの程度影響しましたか?
S ヘッジファンドが成功する確率は7割。残りの3割は損をするが、それは運の問題だ。投資の世界では当然ながら運が左右する。だが幸い、当社は運に左右されにくいヘッジを設けている。
―数学界に未練はないですか?
S 大学には大学の良さがあるが、後悔するほどのものはないよ。何事も妥協点が必要だ。完璧なものなんてないんだよ。
―もっと積極的にメディアに露出したいという願望はないですか?
S ジョージ・オーウェルの小説、「動物農場」に登場するロバのベンジャミンがこんな台詞を言うんだ。「神様は僕がハエを追い払えるようにしっぽを下さった。でも僕はむしろ、しっぽもハエもなかったらいいのにって思うんだよ」ってね。私がメディアに対して思うのは、じつにそんなところだよ。
シーズ・マガジン(USA)より
サイモンズ「4つの戦略」
◆1、世界有数の頭脳集団をフル活用
サイモンズが率いるルネッサンス・テクノロジーズの武器は、数学者や統計学者など世界有数の理系エリート集団だ。社員300人のうち、約半数が博士号を取得している。これは同社が高度な数理モデルに基づいて市場を分析し、独自のコンピュータ・プログラムで自動売買を行う「クオンツ運用」と無関係ではない。
かつて太陽の当たる場所の変化が市場に及ぼす影響について研究を試みたというサイモンズは、物理学や天文学の知識もビジネスに活用する。常に「新しい理論の誕生」を求め、あらゆる物事の無限の可能性を信じて投資を惜しまぬ彼のもとには世界中から稀有な才能が集結する。才能が成功を、成功がまた才能を呼ぶ“黄金の図式”がここにある。
プルームバーグ(USA)より
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設立20周年を迎えたルネッサンスの旗艦ファンド「メダリオン」は、ヘッジファンド史上最も成功を収めている伝説的ファンドだ。運用資産は80億ドル(08年8月時点)。08年は80%のリターンをあげた。通常ヘッジファンドは運用手数料として2%、成功報酬として利益の20%を投資家から受け取るが、メダリオンは運用手数料が5%、成功報酬は利益の44%と高額。同ファンドの驚異的な成功率と手数料の高さを見れば、そのトップに君臨するサイモンズの報酬が高額になるのは当然だろう。
メダリオンに投資できるのは、サイモンズ本人と彼の取引先の個人(多くはファンドマネジャークラスの超富裕層)、社員とその友人に限られている。まさに富のスパイラルだ。
インスティテューショナル・インベスター・マガジン(USA)よリ
◆3、秘密主義で黙して語らず
業界を震撼させたメダリオンの成功で、サイモンズの名は業界の外にも知れ渡った。彼を知らぬ人がいるとすれば、それは彼が、自ら多くを語らないからだろう。メディアに露出することを極力避けてきたサイモンズには、有名になりたいなどという願望は、まったくない。彼が成功を手にした最大の理由は、じつはこの秘密主義にある。
米国でサブプライムローンが破綻した07年、彼の報酬額は過去最高の28億ドルだった。08年のリーマンショックを受けてもなお、その額はわずか3億ドル減少しただけだ。彼がなぜそこまで無傷でいられるのか不思議だが、本人に聞いても答えが戻ってくることはないだろう。彼にとって、それは語るまでもない「明快なこと」なのだ。
ニューヨーク・タイムズ(USA)より
◆4、多額の寄付金で社会貢献
サイモンズには慈善家としての顔もある。ヘッジファンドで得た破格の資産を、数学や科学、教育、保健分野の支援に投じ、自閉症の研究にも積極的に貢献している。06年には数学と科学の研究費として、ニューヨーク州立大学に2500万ドルを寄付。同大学には08年にも幾何学と物理学の研究費として、さらに6000万ドルを寄付している。
サイモンズが慈善活動に開眼したのは、自閉症の娘や、最愛の息子2人の不慮の死が影響しているとされている。彼に敵が少ないのは。利益を自分の懐に溜め込まず、社会に還元し、循環させるその独自のやりかたにあるのかもしれない。英国の有力紙フィナンシャル・タイムズは06年、サイモンズを「最も賢い億万長者」と賞賛している。
ニューヨーク・ウィムズ(USA)より
◆あなたにぴったりの税理士を無料で御紹介致します