黒猫亭日乗

題名は横溝氏の「黒猫亭事件」と永井荷風氏の「断腸亭日乗」から拝借しました。尚掲示板が本宅にあります。コメント等はそちらへ

怪談~その4

2015年08月14日 | 夏向きの話
夏向きの話、と銘打って始めた私的な体験談はもうネタ切れである。最後に、実はコレが一番実害がある話で占めくくって終わろうと思う。
私の実家のお墓は京都の某永代供養式のお墓である。お墓のマンションという奴だ。私が一人娘であったため、永代供養式の墓を購入して無縁仏になる危険に備えていた訳である。元々の先祖代々のお墓は、というと、不幸な話だがかなり昔に来た神戸の大型台風が原因の山崩れのせいで流されてしまっていた。
という訳で、かなり長い年月、空っぽの墓に盆暮れにはせっせとお参りしてお経をいただいていた。そのからっぽの墓だが、不思議なことに読経がはじまってしばらくすると私が笑い出すようになってしまったのだ。ヒマだから余計な想像をし、思い出し笑いをしてしまって止まらない、というような単純な話でも不遜な話でもない。ごくごく真剣に祖先を思い真摯に手をあわせているにもかかわらず、余計な事は考えないように頭をからっぽにすればするほど、くすくす笑いは毎度止まることはなかった。親には叱られる。お坊さんには申し訳がない。だが、笑いを止める手立てはない。そのうち、親は私を墓参に伴う事はなくなった。
他の場所ではお経を聞いても笑わないのは経験として一応わかってはいたけれど、さて困ったのは主人の父の葬儀の時である。もし、万が一また笑い出したらどうしよう。対処する方法は無いし、誰に話しても理解してはもらえぬ。心からの恐怖である。とはいえ、喪主の嫁が葬儀に出ないわけにもいかない。笑いませんように、と天やら神やら仏様に祈ったものである。
墓でケタケタと笑い出す。話としては地味だが、私個人としてはこれが一番困る話である。




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