栗太郎のブログ

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映画 「桜田門外の変」

2010-10-28 18:19:22 | レヴュー 映画・DVD・TV・その他

史実に忠実たろうとする姿勢は、痛いほど画面からにじみ出ていた。
とにかく襲撃場面、荒々しいシーンではあるけれど、一人一人の演技が丁寧だなあと感心した。
それに全体にわたっての衣装や道具など、とても繊細な拵えで見入ってしまった。
また、ロケ地もいい。桜岡の家なども風格を感じる見事なものだった。潜伏した岩穴もそのままの出来でうれしかった。
渡辺裕之、本田博太郎、池内博之、渡部豪など茨城出身の役者も多く、皆、いい役どころで華があった。

印象に残ったシーンといえば、柄本明扮する金子孫二郎が、薩摩側の追っ手に捕らえられた場面。
同志の有村雄助から、薩摩は挙兵しないと聞いたあと、
「見誤ったわれらが悪いのだ」(たしかこんなセリフ)と、身を震わせながらうめく。
このとき、終始冷静だった金子が、唯一感情を表にだすのだ。
その柄本明の凄みがいい。

しかし、2時間にすべてを詰め込もうとすると、どうやら伝わるものも伝わってこないらしい。
役者は迫真の演技で、当時の烈士に負けないほどの真剣みがすごいのだけど、時代背景を知らずにこの映画を見た人にとって、なんでそこまでアツくなってるの?と分からないんじゃないのかなあ。
襲撃を映画の前半にもってきたせいか、過去を振り返るシーンが多くなってしまい、順番を整理しきれない。
最近ゆかりの地を訪ね歩いている僕でさえ、少々戸惑いがあるくらい。
やはり、時系列にしたがって物語を進めたほうが、襲撃に向けてボルテージがあがる心理が理解できると思った。
また、登場人物も多すぎる。春嶽がちょこっと出てきて義憤を訴えても、この人どれくらい偉い人?ってくらいの認識じゃもったいないと思う。
西郷どんも、久光に疎んじられて流刑にあった過去があるからこそ、一番最後の桜田門の場面での述懐に深みがでていると思うのだ。そういう背景もみたかった。
やはり、尊王攘夷派と開国派の対立の過程、なにゆえ大老暗殺にまで突き進むのか、そこを伝えるのには尺が足りないのだろう。

さておき、物語の本質へ。
当時、清国のアヘン戦争の先例を引き合いに考えれば、開国が正しかったのか?
それとも、あくまでも武力でもって夷敵を排除することを第一とするべきだったのか?
それはわからない。
結果として、日本は戊辰戦争という内戦の末に明治の世になったが、そこには外国の政治介入はなかったのだから、結果オーライといえるのか。
鉄之助が言う。「大老の首ひとつ獲るのに、どれだけの命を落とせばいいのか。」
まさに、幕末、清国の悪例の二の舞を踏まずに済んだ日本だけど、安政の大獄、桜田門外の変、はては、京都での蛤御門、池田屋・・・、戊辰の役はいうに及ばず、佐賀、西南にいたるまで、日本は明治の世を手にするために、幾万もの命が散っていった。
彼らの思想の右左、保守革新、その対立はあれども、いずれも彼ら自身は正しい道だと思って命を賭けた。
その犠牲を踏み台にして、今の日本がある。その気概は十分伝わる映画だった。



映画『桜田門外ノ変』公式サイトhttp://www.sakuradamon.com/


10点満点中満足度、6.5★★★★★★☆



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