栗太郎のブログ

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映画「希望の国」

2013-02-21 18:55:56 | レヴュー 映画・DVD・TV・その他

昨秋。
栃木県内で、シニア世代のあるスポーツ大会が行われた。
毎年行われるというその大会は、都道府県対抗ながら、参加チームは30余。
関係者に、47に遠く足りないんですけど?とたずねると、栃木はフクシマに近いからって理由で、中四国・九州の県が参加を見送ったらしい。
事故から一年半経っているのに、それほどアレルギー反応することに驚いた。
栃木どころか、福島にだって多くの人が暮らしているし、身体に無害って訳ではないにしても、わずか数日栃木に滞在したところで後遺症が残る訳でもないのに。
おまけに将来あるティーンエイジでもあるまいしと、やや自嘲気味にあきれながらも、やはり西日本の人からみれば、放射能は得体の知れないものに思うのが心情なのだろう。

映画『希望の国』にでてくる人々も、目に見えない放射能におびえるのだ。
架空の地「長島県」でおきた、大地震による原発事故が、平穏な酪農一家の生活を引き裂いていく物語。
フクシマのときに後手後手に回った政府の対応を、辛辣に、コミカルに描いている。
フクシマの過去の記憶が、人々を不安にさせていく過程がリアル。
基準の曖昧な行政、右往左往する住民。
そこにはフクシマの事実が反映されていて、ほぼドキュメンタリだと思って見たほうが納得がいく。
だからこそ、うろたえる人々の言動を薄ら寒い思いをしながらみていた。
タイトルに「希望」をうたい、どこかに根拠のない「希望」を匂わすことで、最後の「絶望」への落下が胸に響く。
ただ、夏八木勲のぶれない信念こそが救いだった。
小物や台詞の端々の伏線で、夏八木が登場人物の中で一番、放射能の何たるかを知っていることがわかり、その夏八木の選んだ最後だからこそ、納得がいく絶望だったが。
もしも、同じこの映画を3年前にみたとしたら、どうせつくりもののウソだと聞き流してしまうような話だった。
ほんとはそんな想像力のなさこそが、一番、薄ら寒いことなのかもしれないけれど。

皆が恐がって手を出さない「原発もの」をあえて取り上げた勇気には賛辞を送りたい。
この映画をゲテモノのように非難する人もいるけれど、監督なりに真摯に震災に向き合っている印象は受けた。
しかし、「愛があれば大丈夫」とかの陳腐なセリフには、そのセリフこそ大丈夫かよ?とずっこけた。
愛ですべてを捨てることはできても、愛ですべてを手にいれることなんてできないよ。
そう白けながら、いや、なにもなくなったら最後には愛しか残らないって言いたいの?とも思う。
最後、たしかに夏八木はなんの躊躇もなく捨てたのだ。その起こした行動の基準は、一点の迷いもない愛だった。


なんだかわかんないとこも多かったのが正直なとこ。でも満足度は、7★★★★★★★

『希望の国』



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