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ナチ時代の娯楽映画って面白いらしい


最近読んで面白かったので紹介します。
ナチ娯楽映画の世界ナチ娯楽映画の世界
瀬川 裕司

平凡社 2000-07
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戦前から映画産業が盛んだったドイツではナチ時代も大量の娯楽映画が作られていたのだそうで。
例によって老獪なゲッペルスはかなり陰険な統制をしている訳ですが、
老獪なだけあって「大衆娯楽としての映画」というポイントを外しては
客が来ない=誰も見ない=プロパガンダになんない、ということはよ~くご存知。
映画会社はさっさとアーリア化してもスクリーンの女神は実はドイツ人じゃなかったり、
ナチ嫌いの人気活劇俳優は映画でもあんまりナチ的でない性格のヒーローを演じ続けていたり。
でも監督はゲシュタポに逮捕されて拘置所内で「自殺」してしまったり。
第三帝国特有の奇形的な恐怖がここでも現出していた訳ですが、
著者によれば今までは一部の映画のみを対象とした、妙にステロタイプな
「この時代の映画はすべからくプロパガンダであり、ナチであり、呪われているのだ~っ!」
という言説のみが映画の歴史として書かれ、存在が抑圧されていたのだそう。
(あ、これはあくまで旧西独の話で、戦争責任への理解が違った東独では
 あっさりOKでTVでがんがん放送していたらしい)
そりゃ~いかんよねえ。
ということで、正面からこの時代の娯楽映画を紹介した本です。
映画が窒息へと向かう兆候は確かにあったけれども、
どうやら完全に窒息する前に第三帝国が崩壊しちゃったらしく、
だから今見てもまだまだ楽しくて魅力的な映画がイッパイあるらしい。
同時期の日本映画は速攻で窒息させられたらしいので
(統制する側が官僚で原理主義的だからね、見もしないような映画を作らせて平気なのよ)
イロイロ考えさせられるものがありました。
で、甘粕はゲッペルスを目指す、という論を後日展開する予定。
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