ウツウツ記

毎日の生活で感じたことを書いています。

わからない世界はある。

2012-12-14 10:47:52 | 日常
数日前にみたバラエティ番組が澱のように心から離れない。
それは、悩みを抱える芸能人に沢山の個性あふれる人達が
回答するという番組。
回答者の略歴はさまざま。
カウンセラーもいれば、教育関係者もいるし、
子役タレントもいる。
で、私が見たのは、タレントのクリス松村さんの悩みを
扱っていた。

彼(?)の悩みは「何でもズバズバ言い過ぎること」
あんまり単刀直入に切り込むから、それでは相手が傷つくし
友人もいなくなってしまうよ、と
周囲の人が心配して悩み相談にきました、という設定だった。
さまざまな回答が寄せられるうちに、
実は彼の悩みの底にはもっと根深い問題があるのではないか、
ということになり、結局それは、実父との関係にある、となった。
17年間音信不通という関係であること、
葬式にも出るつもりはない、という覚悟を話すと
その態度に非難が集中した。
家族の縁とはそういうものではない、
老いた父親とはきっとわかりあえるのだから歩み寄るべきだ・・・

見ていて、悲しくなった。
やっぱりな、という思いですごく心が重たくなった。
私には彼の気持ちがよくわかる。
きっと沢山の出来事があり、彼はその都度、理解してもらおうとしていたはず。
それをきっと何度も踏みつぶされて、彼の心も踏み潰されて
そうして、自分を大切にするために、沢山の葛藤や罪悪感を持ちながら
やっと得た回答が音信不通だったと思う。
彼が彼として生きるために必要な状態だったのだ。

でも、世間はわからない。
とっても立派な肩書があったって、権威があったって
人の気持ちを理解できない人はいるのだ。
自分と相手は違う、というこの単純な事が理解できない人はいる。
確実にいる。
そのことがわからない。

親は子供がかわいい。
多くの人にとっては、そうだ。
でも中には、可愛くないと思う人もいるし、
自分の思い通りの子供でなければ要らない、と思う、そんな親もいるのだ。
自分の子供だから、可愛く明るく正しく強く。
弱虫の出来損ないなんて要らない、と駄々をこねる親もまた、
確実にいるのだ。
多くの人は、そんな親には当たらないから、理解できないんだろう。

私のカウンセラーはよく言う。
「そういう親子関係を理解できない人はたくさんいる。
 だって、そういう関係にないのだから、わからなくても仕方ないんだよ。
 でも、だからといって、そういう親子関係が全く存在しない訳でもない。
 確実にある。
 確実にあるのだから、自分が出した答えが間違ってるとは思う必要はない。」と。
私も自分が出した答えなのに、いつも葛藤や罪悪感が付きまとう。
段々に薄れつつはあるけれど、それでもいつも、ついてくる。
時々、今もなお罪悪感というもので私を縛り続ける母親を更に憎く思ったりもする。
もう憎いという感情からは離れたはずなのに。

自分の出した答えが揺らぐのは、こんな世間の壁にぶち当たるときだ。
理解してもらおう、とは思っていないけれど
こんな関係もある、と想像してくれたらいいのに。
TVの中の彼も、きっと傷ついたと思う。
彼の答えに間違いはないのに。
いや、タレントなのだから、それも織り込み済みとわかっていれば
それはそれでいいのだけれど。

彼の最初の悩みであった「ズケズケした物言い」にも
私はわかる気がする。
ずっとそう言われて育ったのだ。
ズケズケ言われて、成長したのだ。
何のフォローもなく。
よく、わかる。
私もズケズケ言われて育った。
堪らず言い返すと「だって本当のことでしょ。事実でしょ」と言われた。
そう言われたら、言い返せない。
だって、本当だから。
でも、その事実になるまでの過程や気持ちを理解してほしかった。
今なら、そう思う。
でも、その時はわからなかった。
仕方ないから、相手が言い返せない事実を積み上げて
影に隠れて内緒で自分のやりたいことをやった。
大人になって初めて、何もズケズケした物言いをしなくても
相手に気持ちは伝わること、がようやくわかった。
でも、私もズケズケした物言いの癖は治らない。
他の言い方を考えると、結局言葉が見つからずに話せなくなることもしばしばだ。
カウンセラーからまるでアヒルの子のように
話し方を教えてもらうことも多々ある。

単なるバラエティなのに、と思う。
沢山の回答者がいることは、それはそれで面白いのにな、と思う。
でもやはり、つくづく人の悩みにこたえるのは相当に難しい。
自分にもわからない世界はある、まずそんな心構えが必要なんだろうな。
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4 コメント

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「子を思わない親はいない」 (はな)
2012-12-17 13:01:24
この番組、私も観ました。
クリスさんが、「父親がレコードを全部捨てた」と言ったとき、彼の受けた衝撃が想像できました。「捨てる」ことは、子どものなかの何かを殺しているんです。私も、自分で好きなものを選択すると、親の名誉欲が満たされるものでないかぎり、たちまち否定されましたので、よくわかります。
私がまだ親との関係で悩んでいたとき、「子を思わない親はいない」と、非難の口調で言う人たちがいました。でも、「子を思わない親はいる」のです。
私もズケズケ言われて育ちました。最も傷が深かったのは、「負け犬ということを忘れるな」という言葉です。負け犬というレッテルを、自分の心からはがすのに、とても長い時間がかかりました。いま、姉が親に代わってズケズケ言ってくるので、閉口しています。先日も、私の人生全否定のような言葉を笑いながら言っていました。

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大変でしたね。 (くんくん。)
2012-12-17 15:46:45
はなさんも見ていらしたのですね。
私もレコードの発言を聞いた時に、ぞっとしました。
でも、わからない人はわからないんですよね。
自分の子供だから愛するのではなく、自分の理想にかなう子供なら愛する、という親は確かに存在するのにね。

自分の子供に対して「負け犬」と言うなんて!
どれだけ相手が傷つくか、想像できないのでしょうね。
それとも、相手を打ち負かし支配することから逃げられないのか。。
はなさん、大変でしたね。
今はお姉さんが代役を果たしてくれるのですか・・・
私の姉も以前は母と折り合いが悪かったのに、私が母を拒絶するようになってから、急に仲良しになったみたいです。変なの・・・・
誰かを貶めることで自分の位置を確認したいのでしょうか。
これもまた、辛い生き方でしょうに・・・

自分の気持ちを大切に、そして相手の気持ちも想像できる人でありたいな、と思います。
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ほんとうに (りさこ)
2013-01-25 09:26:36
人の領域に無神経に入り込む母に育てられて
それが正しい人間関係のあり方だと思っていました。
今 人にはそれぞれ他人には分からない事情があるのだということがやっと理解できたように思います。
人に偉そうにいいの悪いのと言っていた自分がいます。自分の事を洗いざらいぶちまけたくてしょうがなかった自分がいます。
人の事は分からない。だから自分の事を分かって貰えなくても仕方がない。
そう思えるようになって荷物がかなり軽くなりました。
返信する
私も同じでした。 (くんくん。)
2013-01-25 17:58:41
りさこさん、私も同じです。
私もエラそうに、訳知り顔で人に接していました。
「正しい事は正しい」と言い張る母に育てられたからです。
その反面、同じように自分のことを全部わかってほしくて仕方ない私もいました。
一番理解してほしい人に理解してもらえていなかったからでしょうね。

人と自分は違う。
それは自分の子供であっても。
でも違うからといって、気持ちが交流できないわけじゃない。
どちらか一方が我慢する関係でもない。
違いがある、わからない世界もある、と認識さえすれば、人間関係はずっと楽になるんですよね。。

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