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新王座かドーピングか? Core i7 12700を動画エンコードで評価!

2022-02-06 14:59:23 | 意味なしレビュー
若干納得していない点も残っていますが、先日購入したIntelの第12世代CoreのCPU、Core i7 12700の性能調査をほぼ終えましたので、報告します。

まずはいつも通り組み立て時のトラブル報告から(笑)。まぁ今回はハード的なトラブルは無かったんですが。
マザーは前回書きました通りB660M D3H DDR4。BIOSは公式サイトからダウンロードしたF5を使いました。Windowsをインストールすると起動してLANが有効になってインターネットにつながると同時にGIGABYTEのユーティリティであるAPP Center が自動的にインストール(UEFIからの設定で無効も可)仕様になっており、その中に@BIOSというBIOSアップデートツールが入っております。最初はこちら任せでサーバーから自動ダウンロードでBIOSもドライバも任せようとしたのですが、@BIOSでダウンロードできるBIOSはF4どまり。しかも無茶苦茶不安定で何度テスト中に勝手に再起動がかかったことか・・・泣くくらい。最悪だったのはLANのドライバを壊しやがったこと。おかげでネットに接続できなくなり、ハードウェア的に壊れたんじゃ・・・と大慌て。別PCからドライバを落としてきてインストールしたらあっさりと直ったので一安心。結局ツールのサーバー経由でなく公式サイトからダウンロードしてきたBIOSとドライバで安定させることができました。気を付けましょう。

メインとなるCore i7 12700および比較対象として用意したPCの仕様は以下の通り。PBP/PL1/TDPで表記される消費電力や発熱量の目安となる値を65Wで、GPUを内蔵でそろえた割と平等な条件になっているものと思います。

Core i7 12700
リテールクーラー
B660M D3H DDR4
DDR4-3200メモリ8GBx2
内蔵GPU Intel® UHD Graphics 770 
Windows 11

Core i7 11700
虎徹MarkII
H570 Phantom Gaming 4 
DDR4-3200メモリ8GBx2
内蔵GPU Intel® UHD Graphics 750
Windows 11

Ryzen 7 5700G
リテールクーラー
ROG STRIX B550-F GAMING 
DDR4-3200メモリ8GBx2
内蔵GPU Radeon™ Graphics 8
Windows11

以下この3システムはCPUの型番を取り、12700/11700/5700Gと呼称します。SSDはいずれもNVMe接続のM.2.SSD、PCI-E3.0動作のものです。また、11700のみCPUクーラーが変更され、なおかつPL1を本来の65Wではなく95Wで動作させています。こうでもしないと第11世代はパフォーマンスが出ず、比較対象にならないものなので、ご了承ください。

使うソフトは動画エンコードのHandBrake。1月末~2月当初現在時点で最新版の1.5.2を使いました。元動画は毎度ワンパターンの1440x1080・49分・MPEG2-TSの動画。これをエンコードします。最初はx264を使ってH.264/AVCへの変換。条件は
・平均4000Kbps
・フレームレートはSameで固定
速度をVerySlowにし、あとはデフォルトのままで行っています。

12700 29分49秒
11700 48分12秒
5700G 42分25秒

速ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 異次元じゃん。これ一つだけ未来からやってきたCPUみたい。もう細かい検証の必要なし・・・と最初は思いました。でも、Core Tempというソフトで温度を計測してみると、12700はエンコード開始するとあっという間にCPUクーラーが爆音をたて・・・まぁ音はいいんですが最高速回転で回りだし、かつ温度は100度~99度に張り付き。噂に聞く省電力のEコアすら88度張り付きです。Core Comp換算の消費電力はほぼ常時120W強!130Wになると一瞬数値が落ちますが、それでもエンコード中は110Wを切ることはありません。おそらくリテールクーラーを使った現環境では130W消費で100度に達してしまい、少し落としている、ということなのでしょう。一瞬噂に聞いた「第12世代CoreはLGAの形状ややり方が変更になったため、強い圧力がかかってヒートスプレッダ を少し曲げてしまい、中央部分がへこんでしまうのでまともに冷却が出来ない」という話が頭をよぎりました。ですが、それが原因で100度に達してしまうならそもそもパフォーマンスが出ないはず。それにエンコードのような高負荷がかかっていない状態なら暖房のかかっていない寒い部屋なら20度を切るくらいまで下がりますし、それもおかしな話。歪みの話はマザーボードによって程度は違うとも聞きますし、ウチのはそれとは違うように思います。だいたい最低でも130W~110Wの消費電力ってなんなんですか。12700のPBPは65Wなんですから65Wを基準に動作すべきです。と、いうわけで本来の仕様に近い動作をさせるべくUEFIをいじりました。その結果

Tweaker→CPU詳細設定→TURBO POWER制御→POR

と設定することで消費電力は65W前後まで落ちました。PBPと消費電力は必ずしもイコールではないかも知れませんが、11700がPL1 95W動作でCore temp計測で95W前後で動作しているので、まぁこれが本来の姿だと思います。高負荷状態でも最初はブーストもちゃんとかかっていますしね。デフォルトの設定ではとても常用したくないですが、これなら安心です。以下の計測は原則12700はPOR状態で動作しています。
そういう状態になったことで、今度はエンジンをx265に切り替えてH.265/HEVCへの出力をやってみましょう。あとは先のH.264/AVCと全く同じ、すなわちH.265/HEVCのVerySlowエンコードです。

12700 9時間15分29秒
11700 11時間14分58秒
5700G 10時間8分19秒

長時間かかりましたがそれだけに12700の速度がよくわかります。なんだ12700、余計なことしなくても速いじゃないですか。ただ、時間がかかりすぎるため、これ以降は
・H.264/AVCはx264のVerySlow
・H.265/HEVCはx265のMedium
とさせていただきます。

H.264/AVC
12700 36分46秒
11700 48分12秒
5700G 42分25秒

H.265/HEVC
12700 33分07秒
11700 40分27秒
5700G 38分26秒

・検証/Eコアの影響
第12世代Coreの大きな特徴の一つがEコアという省電力動作向けのコアを搭載したことです。これによって「従来よりも多コアになった」と評価する向きもありますが、当然ながらメインであるPコアと比べるとパフォーマンスは落ちるため、ヘタに連動させると足を引っ張ってスコアが落ちるのではないか? という気もします。そこでUEFIでEコアを無効にして計測してみます。

H.264/AVC
12700(全コア) 36分46秒
12700(-Eコア) 41分18秒

H.265/HEVC
12700(全コア) 33分07秒
12700(-Eコア) 34分01秒

Eコアを無効にしたことでH.264/AVCが大きく速度を落とし、5700Gより若干速い程度になったのに対し、H.265/HEVCは影響は大したことはないように見えます。ここで検証ソフトをTMPEGnc Video Mastering Works 7に変更してAVX2の有効無効も交えてやってみます。
ちなみに第12世代Coreでは第11世代では使えた拡張命令であるAVX512が使えなくなっています。Pコアの中に機能では搭載されているという話ですが、BIOSによって無効化されているとのこと。残念とも言えますが、むしろ足を引っ張るケースもあったくらいなのでIntelとしてはAVX512は失敗と思っているのかも。

H.264/AVC
12700(全コア/AVX2有効)
 32分26秒
12700(-Eコア/AVX2有効)
 35分43秒
12700(全コア/AVX2無効)
 31分43秒
12700(-Eコア/AVX2無効)
 36分03秒
11700(AVX2有効)
 41分03秒
11700(AVX2無効)
 42分11秒
5700G
 36分34秒
5700G(AVX2無効)
 37分51秒

H.265/HEVC
12700(全コア/AVX2有効)
 34分03秒
12700(全コア/AVX2無効)
 40分15秒
12700(-Eコア/AVX2有効)
 34分29秒
12700(-Eコア/AVX2無効)
 43分33秒
11700(AVX2有効)
 39分24秒
11700(AVX2無効)
 49分38秒
5700G(AVX2有効)
 36分07秒
5700G(AVX2無効)
 44分13秒

AVX2の効果が薄いとは言え、x264においてAVX2を無効にしたほうがAVX2有効にした際よりわずかですが速かったするあたり、今までのCoreと比べるとAVX2の扱いが変更になっている感が強めです。一方肝心かなめのEコアですが、x264では差が大きかったのに対しAVX2の効果が強いx265では差が大してつきません。ただ、EコアとAVX2の両方を無効にした場合は再び差が~x264ほどではないにしろ~大きくなっています。あくまで素人考えですが、動画エンコードの場合AVX2が働く場合はEコアよりもAVX2優先で仕事が回され、働かない場合はEコアに振られるという感じでしょうか。Eコアは最適化次第ではそれなりに速度アップに貢献することはありそうですが、現状ではプログラム側から見れば決して優先してサブの仕事を分けられる存在ではない、という扱いを受けていそうです。現状のエンコードエンジンの場合、x264はEコアが働き、x265はあまり働いていないという認識で良さそうです。ただ、少なくともプログラムがPコアと同列に扱って仕事を割り振り、足を引っ張るという傾向は見られませんでした。ここら辺がWindows11は第12世代に最適化されているということなのでしょう。

最後にQSVによるエンコード。A's VideoConverterでやりたかったのですが、なぜかいくらやっても11700のH.265/HEVCが速くならずにCPUエンコード並みの速度になってしまったので、TMPEGncを使います。H.264/AVCはもうCPUエンコードで速度も十分なのでH.265/HEVCのみを同条件で。

12700 11分10秒
11700 11分19秒
5700G 04分39秒

第11世代と全く変わってないですね。

以上、Core i7 12700を見てきました。BIOSのデフォルトで動かさない評価には「意味がない」と考える人も多いかと思います。ただ、わたしから見ればデフォルト状態はメチャクチャ活を入れたオーバークロック状態にしか見えないんです。実はIntel、どうもこの12700をばらまいているらしいんです。Youtubeとか見ると、登録者多めの自作PC系でいくつものチャンネルが第12世代向けマザーボードのプロモーション動画を公開していますが、評価用としてほぼ必ず12700、無印を使ってるんですわ。普段ならi7かi9はK付き以外眼中になし、な人でもK無CPUな12700を使っているあたり、評価用としてIntel側が指名して提供していると思われます。その大半が「発熱量が多い」と軽く触れるだけで高消費電力状態でRyzenと比べ、異次元の性能を出していることを公開している・・・。OC状態のCPUと定格を比べているようなもんで、正直アレはいろいろマズイだろ、とこう思ってしまうのですよ(あ、当然ですけどわたしの12700は自腹自前ですよ)。おまけにある程度の時間かけて行う動画エンコードであの状態で使うのは問題があります。事実上電力を目いっぱいかけてぶん回させるのが今のIntelの方針なのでしょうが、CPUクーラーの付属していない12700KならともかくK無CPUの12700はそれなりに負荷のかかる作業をリテールクーラーで、と考えて選ぶ人が少なくないCPUだろ、それが高発熱状態でしか評価されないのはおかしい、と考えて本来のPBPに近いだろう消費電力65W状態で動かしてみました。わたしの試した状態だとリテールクーラーでもエンコード中にCore temp計測で70度いくかいかないか、ですし暖房を入れていない寒い部屋だと60度いかないほどで十分冷却できています。

そして、余計な活入れによる誤魔化しなどしなくても第12世代Coreは優秀なCPUです。今回のテストでもZen3の5700Gを全項目で上回っています。ただ、それなりに差がつくのはEコアが効率的に使えている場合だけであり、Eコアを無効などすると僅差になるあたり、AlderLakeとZen3の差は世間でいうほどはない、と言えます。ただ、Zen3の方がクロックは常時上だったのでクロックあたりの処理能力ではあきらかにAlderLakeの方が上です。
ただ、やっぱりQSVがほったらかしなんですよねぇ。噂に聞くIntel製GPUを搭載したArcは第11世代および12世代Coreと連動してエンコード処理を行える(動画エンコードかどうかははっきりしませんが、多分動画エンコード機能はあるでしょう)とされており、速度も速いとか。ぜひ試してみたいですが、価格がなぁ・・・。ロークラスで価格が安く、エンコード能力だけ上位並みというグラボが出てくれれば飛びつきますが、難しいでしょう。

第12世代Coreには前述した「圧力でヒートスプレッダが歪む」疑惑があります。マザーボードにもよるので必ず大きくゆがむとは言い切れません。わたしは調べてはいないですけど、少なくとも冷却がが出来ない、という事態には今のところなっていません。長く使っていればわかりませんが・・・。問題なく使えるかどうかギャンブルに近いものがあり、それを恐れるようならメーカーから正式なコメントや対策が発表されるまで買うのは待ち、手持ちのシステムを使うのがいいでしょうね。

 
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2 コメント

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Unknown (kazuma)
2022-02-08 07:09:41
QSVを初めて使ったときは画質はともかくその時短には驚きましたが、エンコーダは更新されてないってことでしょうか、残念。これ以上は一段の向上がない、のか。今でも数世代前のQSV常用で、充分といえば充分満足してますけど。
性能的にIntelはたがを外してきた感じですね。
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Unknown (krmmk3)
2022-02-09 12:34:50
>kazumaさん
QSVは商業サイトやインフルエンサーから評価対象にならない機能ですからね。評価されない機能より評価されやすい数字のアップにリソースを割り振ってい作ったんでしょう。AMDがFluid Motion Videoを削ったみたいに。それでもArcとの連動があるという話ですからまだ性能アップは期待できると思います。
本来ユーザーが自己責任でやるような設定をデフォルトで仕掛けるという悪いたがの外し方しましたからねぇ。後で発展の足を引っ張らないといいんですが。
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