持続する夢

つれづれにふと気づいたことなど書き留めてみようかと
・観劇生活はえきさいてぃんぐに・日常生活はゆるゆると

月影十番勝負 約束

2006-03-20 00:14:15 | 演劇:2006年観劇感想編
月影十番勝負 第十番 サソリックス『約 yakusoku 束』
劇場:IMPホール
作:千葉雅子
演出:池田成志
出演:高田聖子,木野花,千葉雅子,伊勢志摩,池谷のぶえ,加藤啓,池田成志


月影十番勝負。高田氏が年に一度、劇団☆新感線から離れ。彼女の好む作家や演出家や役者を集め、上演されてきた芝居の。今年は、ついにファイナル公演。
今回は女囚物。精神異常者で、サソリのような殺人者・奈美子。捕われて改心し、社会に戻り。それでも、消せない過去に追われて。再び手を血に染めて。。

歪(ひず)んだところに居ると、人の心は少しづつ変形する。人格を正しく保つ、ということに。ずいぶんな精神力を必要とするくらい、人は弱い。もともと動物の世界は弱肉強食で、喰われないために死をかけて闘うのが自然の営みで。そして。人は畜生であってはならないと、この手段を禁じていて。だから、激情は理性で抑えることが正しいことなのだろう。
だけど。抑えられないほどの出来事や、理不尽に抑え過ぎることが。「正しい」というところから、遠ざからせる。それでも。なにが正しいのかを、教えられずに育ってさえも。「正しくある」方に向かおうとするのも、きっとほんとう。

「ふつう」に憧れて、やっと叶うのに。幸せをかみ締める間もなく、追ってくる者がある。こういう妄執を繋がせるほど、奈美子は艶っぽい。艶をかき消して、硬質に生きてみても。その内側には、満ちているものがありそうで。叩き壊して、あばいてみたくなるような女。。逃れるために、人の身体を傷つけて。そのたび、自身の心を傷つけて。
ラストを反転にて→今まで、激情のままに人を切ってきたからと。あっさり、自分の指を切り落としてしまう奈美子は。身体の痛みのほうが、心の痛みより軽いみたいだ。
「次に生まれてくるときには。誰にでも抱かれるおんなになる」と言った奈美子が、哀しい。次に生まれてくるときは。誰にも追いつめられない女の子に、生まれてきてほしい。


客席を使う演出で。役者さんが近くを通りすぎるのは、けっこう至福。そこで立ち止まられて、演技をされたりしたら。それが、ごひいきの役者さんだったりしたら。きっぱりはっきり、理性が吹っ飛ぶ。・・・あろうことか、思わず目をそらしてしまったよ。なるしー!(←池田氏愛称) こころの準備ができてなかったんだよ! あ、もったいない(泣)。