Feel in my bones

心と身体のこと、自己啓発本についてとつぶやきを。

近況を交換し合う/川上弘美『蛇を踏む』

2006-10-24 06:47:23 | 読書ノート
昨日。午後、帰って来てからいろいろやっていたら友人から電話がかかってきてかなり話しこんだ。お互いの近況とかをいろいろ話していると、自分のいる位置や今やっていることが見えてくるところがある。なかなか胸突き八丁の状況ではあるが、頑張れば前に進める状況だということも分かる。そういう確認はときどきは必要だ。

川上弘美『蛇を踏む』を少し読み進める。すらすら読めるという種類の小説ではないが、その世界がだんだんわかってきたのでまあ自分のペースで読んでいるという感じだ。すこしキビが悪いが、蛇と人間とのかかわりというか、変身譚のような話の展開が日常間と不思議な古代感あるいは中世感とミックスしてこの世ならぬ世界が現出している。不思議な感覚を持った人だなと思うが、そういう感覚が作り出す世界というのもこちらも手探りな感じでそのあたりがちょっと面白い。まだ48ページ。

蛇を踏む

文藝春秋

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バロックの森を聞く。弦の響きが気持ちいい。熱いお茶が美味しい寒い朝である。




『読書三昧』に以下の三冊を追加しました。

藤原正彦『国家の品格』

三浦展『下流社会』

小林秀雄『本居宣長』


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読書三昧

2006-10-23 16:22:50 | 読書ノート
『読書三昧』に以下の3作品を追加しました。

小林秀雄『本居宣長』
三浦展『下流社会』
藤原正彦『国家の品格』
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仕事というより作業/日本ハム1勝/自民党2勝

2006-10-23 14:29:21 | 雑記
昨日からずっと「仕事というより作業」をやっていたらどうも疲れが出てきた。何をやるにも、この「仕事というより作業」という部分はついて回るが、これを如何にうまく効率的に、しかも品質を保ちつつ片付けるかというのはなかなか難しい問題だ。しかしそういう部分なくして人間の仕事の全体性というものはない、というふうにも思うし、ある意味仕事というものを成り立たせている土台の部分でもあるので、それをどのように片付けていくかはもう少しうまくできる方法を考えられればと思う。

午前中でかけて銀行や郵便局を回り、ついでに日本橋と丸の内で書店を何軒か梯子。いくつか目に付いたのはあったが、買わず。オアゾの地下のSomething Rougeでケーキを買って帰る。

そういえば読んでいなかった、ということを思い出して川上弘美『蛇を踏む』を引っ張り出してきて電車の中で少し読む。ああ、結構面白いな。元理科教師の数珠屋の店員が公園で蛇を踏んだらその蛇がお母さんと称して家に上がりこんでいる。なんだか御伽噺みたいだが。まだ最初の少ししか読んでいない。

蛇を踏む

文藝春秋

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新庄が逆転激走、日本ハム1勝だ(日刊スポーツ) - goo ニュース

日本シリーズ第二戦。第一戦はダルビッシュのやや自滅っぽい敗戦だったが、第二戦はルーキー八木とシリーズ未勝利の山本の投げ合い、先に痺れを切らしたのは山本の方だった。八番金子にセンター前に抜かれ、2点タイムリー。谷繁のブロックも新庄がかわしてホームイン。セギノールの特大アーチも飛び出して、最後はマイケルが〆るという完全な日本ハムの勝ちパターン。やはり八木の頑張りがすべてだったな。小笠原がまだ無安打だが、これから札幌に帰って気分を変えて、第三戦ではのびのびと戦って欲しい。

衆院補選自民2勝 “小沢神話”に陰り 民主党内、再び路線対立も(産経新聞) - goo ニュース

衆院補選は自民が連勝。安倍首相だけでなく、小泉前首相という強力な集客マシンがある自民党の方が、やはりしばらくは選挙は圧倒的に有利なのではないか。小沢・菅・鳩山の民主党では、やはりもうアウト・オブ・デートという感が否めない。



『読書三昧』に以下の三冊を追加し、登録数が70冊になりました。

犬養道子『ある歴史の娘』
佐島直子『誰も知らない防衛庁』
プーシキン『大尉の娘』

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読書三昧

2006-10-22 20:06:15 | 読書ノート

『読書三昧』に以下の4作品を追加しました。

梅田望夫『ウェブ進化論』
北村暁夫『ナポリのマラドーナ』
矢島尚『好かれる方法』
小川洋子『深き心の底より』
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中国によるチベット弾圧動画

2006-10-22 08:13:13 | 時事・海外
こちらのニュースを見てYouTubeを探してみた。

こちらや、そのほかにも動画がいろいろあるようだ。中には18歳以上であることを示しログインしないと見られないのもある。

北朝鮮の陰に隠れて、より深刻なのは大国として振舞う中国の少数民族の弾圧状況だろう。

こちらはチベット仏教の僧侶たちを弾圧する場面。欧米では非難の声が高まっているというが、日本ではまだ微弱なようだ。中国の実態はもっと広く認識されるべきなのだと思う。
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ダルビッシュがんばれ/治外法権麻雀

2006-10-22 06:55:04 | 時事・国内
昨日は疲れが出てたいしたことは出来ず。少し反省点もあり。疲れていたり気分が乗らなかったりしても、雰囲気作りはしなければいけない。

夜は日本シリーズを見る。買い置いていたカバを開けてチーズをかじりながら見ていた。ダルビッシュの立ち上がりは最高で、荒木・井端と連続でバットを折り福留は三球三振。こりゃあ行くかなと思ったら2回はいきなりウッズに四球、井上敬遠とかやっているうちに本人どうも分けが分からなくなってきたらしく、3回までで3点取られてしまった。川上からも2点は取ったのだが、山田尚志の言うように外角が多い配球が少々消極的な印象を与えた。まあダルビッシュ、いい勉強をさせてもらったという感じなのだろう。次は中四日なら第5戦、中6日なら第6戦だ。次回に期待。

日本ハムの敗因はやはりバッテリーの若さだったかなと思うが、中日の勝因は誰もが書いているがショートの守備だ。外野の守備は日本ハムのほうが勝るが、内野の固さはイタリア並み。サッカーと比較しても意味ないが。難しい打球を次々に軽々と処理されては、ファイターズのバッターもあっけに取られただろう。今期中日の試合はほとんど見ていないのでそう印象はなかったが、競った試合で好守が投手を救うのは本当だなと思った。

試合結果は残念なものだったが、まあまだ始まったばかり。すぐ気持ちを切り替えて、今日は八木だろうが、「生きのいい投球」で雰囲気を立て直して欲しい。今日勝てないと札幌での胴上げがなくなる。……そうか、ベテランの味にやられたと考えるなら、きょうはあえて金村をぶつけるという手もあるな。どうなるかな。

***

コンビニに買い物に出たとき、神田たけ志『雀鬼桜井章一 激闘治外法権麻雀』(竹書房、2006)を買う。桜井章一が出てくるものはマンガは見つける度に買っていたのだが、今までもときどき話題には出てきた「治外法権麻雀」が取り上げられていた。場所は外国大使私邸のいわば治外法権、バックは権力、相手は伝説の男たち、と確かに話としてはこれ以上ない状況での麻雀。人間の業の集大成のような状況だ。その背景に桜井の38度線上での事業が絡む。あらゆる裏技が駆使されて役満を連発しあう男たちの戦いにはくらくらしてしまう。読了。

雀鬼・桜井章一激闘治外法権麻雀

竹書房

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北朝鮮核問題についての観測

2006-10-21 16:21:31 | 時事・海外
ちょっと追加。

北朝鮮の核問題、どうやら一段落というか小康状態になったようだ。

北朝鮮の核実験は結局失敗で、もう一段階の実権をやるにはもう少し準備が必要で、そのためには時間稼ぎが必要だ、という観測があるが、それが一番現実に近いのではないかという気がする。

実際のところはよくわからないのだが、しばらくは動きが止まるのではないかという気がする。
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fomaとmova/たましいの探求/日本シリーズ

2006-10-21 16:14:24 | 雑記
昨夜帰京。夜まで仕事をし、8時過ぎの特急に乗る。信州はもう寒い。駅のホームにいる時間をなるべく少なくする。特急は高尾に入ってから減速し、結局20分以上遅れた。中央線で東京に出、日本橋まで歩いて東西線に乗る。東京は暑い。ジャケットを脱ぐ。

帰ってきてうだうだいろいろやっていたら3時過ぎになった。集合住宅の水道管の交換工事をやっていて、昨夜戻ったときには仮設管使用が始まっていたので、水を思いっきり出しっぱなしにして流す。特に問題はないようだ。お湯をためて入浴。

朝起きたら10時前になっていたが、どうも調子が上がらずうまく動けない。昼食を買いに一度外に出たが、食後横になったらまた寝入ってしまった。

携帯のサイトをいろいろ工夫していて、自分の携帯では見られないサイトがあるのでいろいろ調べたらドコモの携帯にもmovaとfomaの二種類があるということを知る。movaが第二世代、fomaが第三世代の携帯ということらしい。自分のはなんだろうと思って携帯の領収証を見たらmovaと書いてあった。ああそうだったんだ。

教えて!gooとかを見ていたらmovaはfomaに比べてエリアが広いということを知る。そういえば前回携帯を変えたとき、そういう理由で今のを選んだ気がする。何しろ田舎と往復するので、使える範囲が狭いのは困る。しかしよく考えてみたら田舎でも高校生の持っているのはどうも最新機種っぽいし、使えないことはないんだろうなとも思う。料金プランもfomaの方が安いようだし、考えてみるのもよいのかな。

小川洋子『深き心の底より』読了。最後のほうが、金光教とのかかわりのことが書かれていて、個人的に興味深かった。大学生のときに、宗教とのかかわりについて自分の中で決着がつき、その後も信者として一貫しているというそのあり方がこの人の独特の世界観に強い影響をもたらしているのではないかと思う。たましいなどないという人であったら、これだけ深くて広い精神世界の探訪を真剣になってやることは不可能だとおもうし、そういう働きが低下していることが現代のさまざまな問題の根源なのだと考えてみたりする。

深き心の底より

PHP研究所

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今日から日本シリーズ。中継は21日TBS、22日フジ、24日テレ朝、25日テレ東。これで札幌ドームで日本ハムの胴上げ、の予定。今日はダルビッシュと川上か。交流戦は日本ハムが勝ち越している。中日の二遊間の美技も楽しみだが、日本ハムの外野の好守も見たい。昨年のロッテもたいしたものだったが、今年の日本シリーズも期待大だ。


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アメリカに初の黒人大統領が誕生するか/『アンネの日記』を火中に投じるネオナチ

2006-10-20 11:51:13 | 時事・海外
昨日は朝から出かけて松本で仕事。今回の仕事のうち一番どうなるのか予想のつかなかった回だったのだが、自分なりに受け入れられる片付け方が出来てほっとしている。午後の田舎道を歩くと風が快い。朝夕は冷え込むのだが、日中はかなり暖かく、風も優しい。途中まで歩いたところで同僚の車が拾ってくれ、駅まで送ってもらった。電車の時間までかなりあったので近くの本屋に行って本や文房具を見る。長野県ではどういうわけか、本屋では必ず文房具を売っている。文房具屋には本は置いてないが。

夜は仕事の始末をつけたり別の仕事をしたり。夜食事をするとき報道ステーションを見ていたら唐カセンの平壌訪問のニュース。この『厳命』の人が今中国外交のトップだと言う。北朝鮮はどのような反応をしたのか。

夜は疲れて早く寝た。朝も6時には起きられず6時半になる。散歩に出かけ戻る。朝は曇っていた。9時に歯医者の診察があって出かける。今回で一応治療は終わり。結局、右上だけ歯槽膿漏が進んでいた原因はわからずじまいなのだが、状態はよくなっているとのこと。なんだか面倒な病気だ。

今はかなり晴れている。歩くのが気持ちいい。帰ってきて何の気なしにCNNを見る。ラリー・キング・ライブでイリノイ州選出のバラック・オバマー上院議員のインタビューを見ていたが、非常に好感のもてる人物だった。ケニア移民とアメリカ人の間に生まれたと言うことだが、母親の名はイギリス系の名なので白人か相当古くからいる黒人ということではないかと思う。この人物が次回の民主党の大統領候補に名が上げられているという。確かに東アフリカ系の顔をしているのだが、とてもスマートでインテリジェントな印象を受けた。1961年生まれで若々しいし、カリスマ性もあり、黒人政治家らしいあくの強さもない。グーグルで検索してみると日本語ではほとんど名があがらず、僅かに東亜日報でアメリカ政府はi-pod政府を目指さなければならない、つまりよく仕事が出来て競争力がある政府を作らなければならない、と発言しているのが引っかかるくらいである。端的に言って日本では全く注目されていない政治家といっていい。細かい政策を熟読しているわけではないので問題がないと断言は出来ないが、非常に興味深い人物である。

民主党の大統領候補といえばヒラリー・クリントンだが、ヒラリー氏よりはるかに好感が持てる。スピーチの内容もジェファソンやフランクリンを引用したり、アメリカの「結束」を訴えていて、二つのアメリカの分裂に苦しむ現代にはふさわしい政治家だ。サイトに共和党のリンカーンの肖像画が掲げられているのは、「分れた家は立つことが出来ない」という有名なリンカーンの演説に由来するのではないかと思う。

まだまだ黒人大統領を選出するような度量はアメリカにはないような気もするが、タイガー・ウッズのようなさわやかさを持つ黒人大統領が選出されるならば、アメリカもまだまだ捨てたものではない、という気持ちにさせられる。まだまだ日本では知られていないが、注目したい政治家だ。

***

小川洋子が谷崎賞を受賞した。もうますます凄い感じだ。『深き心の底より』を読み進む。『アンネの日記』についての考察が深く、実は読んだことのないこの本をはじめて読んでみてもいいなと言う気にさせられた。同じ昨日にドイツではネオナチが『アンネの日記』を大勢で火中に投じて気勢をあげたのだと言う。人間の中の何かと何かの戦いは、人間の心の底でも、政治的な行動としても、ずっと続いている。

深き心の底より

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懐かしい人に会う/思ったよりずっと凄い人なのかもしれない

2006-10-19 07:45:23 | 読書ノート
今朝は寒い。濃い霧が降りている。ここ数日、日中は相当気温が上がって汗ばむくらいなのだが、朝夕はとても寒い日が続いていて、秋も深まってきたなと思う。ナナカマドの実も色づいてきたし、紅葉も少しずつ進んでいる。

今朝は時間がなくてあまりかけないのだが、昨日読んだ、というか少しずつ読んだ二冊で感銘を受ける部分がそれぞれあった。一冊は西川栄明『木の匠たち』。木工家槙野文平の項で白洲正子との交流が出てきた。白洲は槙野の作品を見て「乱暴だけど面白いわねえ」と言い、特に修行はしていないということをいうと「そうだと思った」と言ったという。鍛冶に走ったりすると「家具屋は家具を作れ」といい、「絶対に上手くなるなよ」と言ったという。また椅子を作るようにいらいしたときの葉書が残っていて、「椅子を作ること。もうぢき死んぢゃうのだから急ぐこと 白洲正子」とあの白洲の字で書いてあって可笑しかった。なんだか懐かしい人に思いがけないところで出合ったような気がした。

木の匠たち―信州の木工家25人の工房から

誠文堂新光社

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もう一冊は小川洋子『深き心の底より』。あまり考えないで読んでいたのだが、ときどきびっくりするような言葉に出会う。最初は何の気なしに読んでいても後で心に深く入ってくるような。「深き心の底」というのが決して修辞ではなく、ものを作る行為の本質が底にある、ということがわかったときも驚いた。ホロコーストを描いたエリ・ヴィーゼル『夜』の中で、収容所を爆破したかどで幼い少年が処刑されるとき、「神さまはどこだ、どこいおられるのだ」とだれかが呟いたとき、心の中でエリ少年は「どこだって。ここにおられる―ここに、この絞首台に吊るされておられる」という。この言葉は神の死を意味しているように思われるが実はそうではなく、そこに新たな紙を見つけたのだ、という小川の指摘はやはりある種恐ろしい。人が物語を作り出しながら生き、物語の力によって生きているということを小川は確認しているのだ。そしてその働きを失ったとき、人間のたましいは死ぬのかもしれないと思った。

深き心の底より

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甲野善紀のサイトで「肉体が死んでも霊魂は死なない」のではなく、「霊魂が死んでも肉体は死なない」のであり、そちらの方がずっと恐ろしい、というようなこと(かなり私が恣意的に解釈しているが)を書いていて、そういうものと通じるものがあった。

小川洋子は今まで二冊だけしか読んでいないが、思ったよりずっと凄い人なのかもしれないと思う。作家には作品の凄さに惹かれる人もいるし、作品より作家そのものの考え方やそういうものに惹かれる人がいるが、小川は私にとっては後者だ。自我の殻の下にある深き心の底をのぞき、そこへ降りていくこと―それは村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』の中に出てくる井戸のイメージに重なるのだが―こそが、今自分に必要なのではないかと考えさせられている。



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