Feel in my bones

心と身体のこと、自己啓発本についてとつぶやきを。

アンジェラ・アキのオールナイトニッポン

2006-06-20 08:52:19 | 雑記
いろいろものをやったり本を読んだり、少し新しい創作の下書きをしてみたりしながら夜を過ごす。アンジェラ・アキのブログで夜1時からオールナイトニッポンのパーソナリティ(まだこういう言い方するのか)をやるということで、3時までは聞いてられないが何かに録音しようと思い、探すが結局カセットに(古)録音することにする。1時までうだうだして録音を始めたが、ついつい聞いてしまい、じゃあ2時まで聴いてカセットをひっくり返してから(笑)寝ようかと思って2時まで聞き、でもだんだん話が佳境に入ってきていてもうちょっと聞こうと思う。彼女が日本に帰ってきたのが2002年、メジャーデビューしたのが2005年。その間もいろいろ苦労したようだ(ラジオでは明言しなかったが)が、初志を実現したのがすごいと思う。自分がこの三年なにをやってきたのかと思うと、ちょっと恥ずかしくなった。

もう遅いから寝ようと思ったがそういうことを考えていたら寝付けなくなってしまい、寝られないなら聞こうとまた聞き始める。印象に残った話はいくつもあった。最初は過呼吸が出るほど緊張していたらしいが、のってくるとアンジェラの世界が迫力を持って展開して来た。明言しなかったが言葉の端々から、徳島の田舎や岡山にいたときに「ハーフ」ということで相当苦労しただろうことはうかがえた。ハワイやワシントンに行ったときはもちろん相当自由になったと思っただろうけど、音楽活動を始めて東京で仕事をし、またアメリカに戻るときに成田空港から離陸したときに下の景色を見て「ああ、日本がホームなんだな」と強く思ったのだという。この感覚はすごく理解できる。アメリカに何度も行っていたころ、あの成田空港を離陸するときと着陸するときの風景が、自分が日本に縛り付けられた人間なんだなと強く思わせるのである。そういう感覚はどのくらいの人にあるのだろうか、分からないが。

圧巻だったのは「強い人だった」という徳島のおばあちゃんの話。常々、「負けたらだめだ」といわれていたというが、アンジェラがハワイにいるとき交通事故で入院し、もう言葉が喋れなくなっているのに五十音図を使って会話し、「あんた、負けたらあかん」と言われたのだという。これはもう感動するしかない。そういうふうに言ってくれる人がひとりは必要なんだとアンジェラは言うが、それは負けそうになることがよくあるからだろう。

全体に、オーラというか雰囲気というか、まだ荒削りで新鮮だけれども、大物になるよなと思う。オリジナルの作品を作るときも、英語で好きな歌を聴いていて、これを日本語で言ったらどんな感じになるのかと考えたりやってみたりするのが楽しいと言っていた。それで彼女の歌詞に「強引に進んでいく時間の冷酷な足音がする」とか「常温で生きれば胸など激しく揺さぶられる事は無い」といった歌詞が出てくるんだなと思う。最初はそこが生硬だと思ったけれども、そこに「方法」があるのだということを理解する。そういうものをつかんでいるというのは強いなと思う。パッと消えるアイドルではなく、アーチストとして歴史に残るような存在になっていくのではないかと思う。



というわけで話を聞いているうちにインディーズ時代のミニアルバムも聞きたくなりアマゾンで購入したのだった。うーん、ひとりのアーチストにこれだけ入れ込むなんてことは、高校生時代のポール・マッカートニー以来かもしれない。

ONE
アンジェラ・アキ
インディペンデントレーベル

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バイロン『マンフレッド』

2006-06-20 08:00:37 | 読書ノート
月曜日。だいぶ暑くなった。午後でかける。近くの古本屋が実は案外本が揃っているということを認識して、もう一度行ってみる。買ったのはバイロン『マンフレッド』(岩波文庫、1960)とクッツェー『夷狄を待ちながら』(集英社文庫、2003)。岩波文庫の古いものは手軽に読めて名作、みたいなものがたくさんある。大概安いし、結構掘り出し物だ。
夷狄を待ちながら

集英社

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知らないうちに南砂町のNTTグラウンドがあったところに研究施設のようなものが出来ていて、横が緑道になって稲荷通りと駅がショートカットできるようになっていた。このあたり昔から非常に不便に感じていたので、これは便利だと早速歩いてみる。まだあまり知られていないのか歩く人も少ないし、車は通れないからなんだか味わいのある道になった。散歩や駅への行き帰りに使えそうだ。結構歩いているはずなのだがこういうところは案外気がつかない。三砂中もだいぶ便利になったのではないかと思う。ローカルな話題。

南砂町から地下鉄に乗って新御茶ノ水に出、神保町まで歩く。数軒本を見て回ったが結局何も買わなかった。半蔵門線で三越前に出、プレッセまで歩いて地下で洋梨のタルトを食べるが、一緒に頼んだ珈琲が不味い。テイクアウトにすればよかった。日本橋の丸善まで歩き、本を物色。最近気になっていた松尾理也『ルート66をゆく アメリカの「保守」を訪ねて』(新潮新書、2006)をついに買ってしまった。最近文学書や小説を読んでいると、新書のような数十分で読めてしまいそうなものに700円も投じるのはいささか躊躇するようになっている。しかし考えてみたらあっという間に読める漫画雑誌に300円投じるのは躊躇してないのだから理屈にあわない。しかしアメリカの「ハートランド」について考察したいという思いはずっとあったのでちょっと読んでみようと思う。

ルート66をゆく―アメリカの「保守」を訪ねて

新潮社

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もう一度プレッセにもどり、夕飯の買い物をして地下鉄で帰る。南砂町で降りて、新しいルートで家に帰ってみる。稲荷通りから西に向かって歩くと、丁度夕日が沈んでいて、ああいい風景だなと思った。南砂三丁目の夕陽。

地下鉄の中でバイロン『マンフレッド』はほぼ読了。短い劇詩。ファウスト的な人物。いくつか引用してみる。

p.63「結局この男の覚えたのは私たちがよく知っている一事だけ――/つまり知識は幸福ではないということ、/学問とは無知を別の種類の無知と取りかえることに過ぎない、ということでございます。」
バイロンらしい言い草。ロマン主義。あらゆる知識を得、あらゆることが可能になったという肥大した自我。それが並んでいるところはいかにも退屈なのだが、これが「ヨーロッパの自負」というものだよなあと思いつつ読む。しかしその肥大した自我が女性との罪ある関係に悩むという、現代人から見るとある種のアンバランスがあるのが面白い感じがする。

p.79「わたくしも若いころには/そうした地上の幻想や、高尚な願望を持っておりました。たとえば、他人の心をわが心とし、国民の啓発者となり、どこかへ知らぬままにも/向上して行きたいなどという――いや墜落かもしれませぬ。/だが墜落にしても、山間の瀑布が、/目くるめく高みから身を躍らせて、/あわ立つ深淵の激動のさなかに/…/その淵の底深くに力強く横たわる、そのようなことを――だがそれも過ぎ去ったこと、わたくしの思い違いでした。」「と申しますのは?」「自分の性質を制することが出来なかったからでございます。およそ人を支配せんと欲するものは人に仕えねばなりませぬ。卑しい奴輩の/あいだにあって力ある者たらんと欲すれば、おもねり、哀願し、二六時中眼をくばり、/あらゆる場所に探りを入れ、虚偽の権化とならねばなりませぬ。大衆とは/そういうものなのです。わたくしは群れに/交わることをさげすみました、たとえ首領になるにしても――狼の群れであろうと。/獅子は一人ぼっちです。わたくしもそうなのです。」
うーん、この饒舌さ。一瞥して次に行ってしまえば一瞬だが、打ち出してみるとこんなにくどくどいろいろ言っていたのかと改めて驚く。「人を支配せんと欲するものは人に仕えねばなりませぬ」とはどこかで聞いた台詞だが、バイロンだったんだなあと思う。

p.98「過去においておれの力は、/お前の輩との契約によって購ったものではない。優れた学問によるのだ――難行苦行、奔放な勇気、/長期の徹宵、不屈の心力によるのだ。」
この台詞は明らかにファウストを意識している。マンフレッドはメフィストフェレスに魂を売ったファウストではない、と宣言しているわけである。これが近代人の自負というものだろう。18世紀後半と19世紀前半の絶対的な差。少なくとも主観的には。

p.21-25の呪詛が誰に向けられたものなのか、解説にいろいろ書いてあるが、よくわからない。あんまりぴんと来ない。特定の人間ではないような気がする。

最終的に、p.100「お前ごときものがおれを誘惑したのではない、誘惑できたわけもない。/おれはお前にだまされもしなかったし、お前の餌食でもない――/おれ自身がおれの破壊者だったのだ。そして今後も/それにかわりはない。――帰れ、見込み違いの悪鬼めら!/死の手はおれの上にある――が、おまえの手ではないのだ!」と叫んでマンフレッドは死んで行く。こういう明確な近代人像は実はあんまり読んだことがなかった気がする。読了。50円は安い。(マーケットプレイスで見たらユーズドで1840円だった。びっくり。)

マンフレッド

岩波書店

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