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手話通訳者のブログ

田舎の登録手話通訳者のブログです。

手話通訳者の「あるある」

2015-04-24 06:38:49 | 手話
例えば、病院に通訳に行った時。
待ち時間に、申請者さんといろいろ話す。これは単なる雑談ではなく、本番の通訳をよりスムーズに行うために、いろいろ聞くのである。
どのような症状なのか、など。

で、長い待ち時間の後、やっと順番になって、申請者さんと一緒に診察室へ。

ドクター:「今日はどうなさいましたか?」
申請者:「・・・・・」

申請者さんはチラリとこちらを見て、手話で内緒話。
そう、聴者の世界でも「コソコソ話」があるように、手話の世界でもあるんや。

「さっき話したやろ。たいしから言ってくれればええやんか」


こういう場合の対応は、ケースバイケースである。
基本的には、わしら手話通訳者は「通訳」に行っているのであって、上記のケースで、ドクターに対して、
「患者の症状の説明」
をする立場の人間ではない。

ただ、申請者さんの状態にもよる。
高熱があって、ドクターの前に座っているのが精いっぱい・・・なんて状態の場合は、さきほど聞き取った症状の説明を日本語対応手話で、喋りながら手話を表して行い、ドクターに説明すると当時に申請者さんに確認をとる、という作業を行うこともある。


手話通訳者は基本をしっかり踏まえた上で、柔軟に対応すべし。




申請者さんたちに提案したいこと

2015-04-23 06:27:44 | 手話
聞こえないと、日常的に、いろいろと不便なことがある。
突然、どこかに連絡しなければならない事態となり、連絡手段が電話しかない、というケースもある。
こんな時、安心して頼める手話通訳者がいた方がいいと思う。

まず、日常的に、手話通訳者派遣制度を利用して欲しい。
そして、信用できる手話通訳者を見つけて欲しい。
信用できる手話通訳者を見つけたら、月に1回程度、その人を指名して手話通訳者派遣申込をして欲しい。
毎月会っていれば、人間関係ができる。

手話通訳者指名については、地域によって扱いは様々。
全面的に指名を禁止している地域もあるが、ぜひ一度、手話通訳者を指名して派遣申込をしてみて欲しい。

手話通訳者だって生身の人間である。
普段、全く音沙汰ないろう者から突然頼まれごとをしても、正直言って、対応するのは難しい。
継続的に通訳現場で会っているろう者から頼まれれば、
「無理をしてでも、なんとかしてあげたい」
と思う。




手話通訳士実態調査事業報告書から/政見放送

2015-04-21 00:58:24 | 手話
http://www.jyoubun-center.or.jp/wp-content/themes/joubun/pdf/houkokusho/s-d8-pdf04-H21.pdf

P.24より
政見放送の経験者は、23.1%。他の場面(司法、大学等、テレビ)の経験者は、ほぼ50%。
手話通訳士の半数が、政見放送を除き、司法、大学等、テレビといった高度な手話通訳技術・知識が求められる場面で、手話通訳を行っている。
政見放送の手話通訳については、平成7(1995)年の参議院選挙から開始されたが、東京の日本放送協会(NHK)局で収録されてきたため、関東在住の手話通訳者にその機会が限られてきたという面がある。平成21(2009)年8月の衆議院選挙では全国8か所の日本放送協会(NHK)局で収録されるようになった。今後、政見放送の手話通訳を手話通訳士が担う機会が拡大していくものと考えられる。
これらの領域については、専門的な研修が必要とされている領域だと言える。




失敗談

2015-04-20 00:17:40 | 手話
自分の失敗談を書かせてもらお。
親友のKはろう者である。元々、彼と出会ったことが手話との出会いであった。

むかし昔そのまた昔の学生時代、まだ手話通訳者としての資格も持っていない時。
Kと学生食堂でコーヒーを飲んでいた。
その時、
「あのー」
と声をかけてきた学生がいた。

「手話って、すごい早いんですね。初めて、近くで見たから、つい、ずっと見てしまいました」

Kに通訳した。Kは、
「手話に興味を持ってくれて嬉しい。よかったら、手話サークルに入らない?」
と、気さくに応えた。

相手の学生は「そこまで興味はないので」と断り、自分のことを話し始めた。
彼は経営情報学部の学生で、SE(システムエンジニア)専門コースを専攻していた。
「オタクっぽい人だな」と思っていたが、予感が的中。
どういうわけか、プログラミングのことを延々と話し始めた。
アセンブラがどうの、プロトコルがどうの、内容がさっぱりわからない。
当然、通訳も大変苦労した。

彼はなんと30分以上、ずっと、自分の得意領域であるプログラミングについて語り続けた。

(なんや、こいつ、手話に興味があるんじゃなくて、自分の好きなことを語りたいだけやないか)

だんだん、不愉快になってきた。
でも、Kはニコニコしている。人のいいやっちゃな。

とうとう我慢できなくなり、立ち上がった。
K、飯食いに行こう。

相手の学生に「飯を食いに行くんで」と断って、さっさと学生食堂を出た。
彼は「学生食堂で食べればいいじゃないか」とは、言わなかった。

振り返って、驚いた。いつも温厚なKが怒っている。
「たいし、どうして途中で会話を切ったんだ?」
う・・・


手話通訳中、通訳者は主体的行動をとってはならない。
これは大原則である。


しかし、自己弁護させてもらうと、上記は「通訳中」の話ではない。
ごく当たり前のキャンパスライフのひと時であり、俺の行動が「間違い」だとは思わない。


ただ、この時に強く反省したことが、後の手話通訳活動に役に立っている。