手話通訳者のブログ

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地元のろう者/Eさん

2015-10-07 01:43:07 | 手話
手話に関して「恩師」はいない。
強いて言えば、地元のろう者たちに育ててもらった。
Eさんは、俺を育ててくれた地元のろう者たちの筆頭である。

Eさんはもう80代。高齢である。
この方は地元ろう世界の重鎮。
ろう協会長を20年以上勤めた後、老年部の会長となり、現在に至っている。

非常に長いお付き合いである。
年齢差は父親と息子ってとこだから、時に厳しく、時に優しく、ご指導いただいた。
手話通訳者になる以前からの付き合い。
手話通訳奉仕員認定試験直前の会話は、今でもはっきり覚えている。

「手話表現も、読み取りも、甘い。それでは試験に合格できません」

Eさんは、かなりはっきりと喋ることができる。
そして、誰に対しても丁寧な言葉を使う。

手話通訳者のほとんどは女性。今でもそうだが、当時は若い男性なんて、とても珍しかった。
だから、先輩のおばちゃん通訳者たちからはチヤホヤ(?)していただいたから、厳しい言葉ではっきりと指摘してくれるのはEさんだけだった。
おばちゃん通訳者たちが、
「ちょっとEさん、厳しすぎる。もっと優しくしたって。若い男性なんてめったにいない世界なんよ。大事に育ててやって」
なんて言っていたものだ。

先日、久しぶりにEさんに会った。
久しぶり・・・なんと、最後に会ってから20年以上たっていた。


Eさん、お久しぶりです!
「おー、たいしさん、久しぶり。昔はいろいろあったね。厳しく接したのは、たいしさんを育てるため。決して悪気はなかった。悪く思わんで、水に流してくださいよ」


再会して最初にかけられた言葉が、これ。
実に意外だった。
Eさんに悪感情を抱いたことはない。感謝こそすれ、「悪く思う」なんてあるわけがない。