言の葉花壇

何度聞いても美しい日本語に、今日もマナ女とカナ女がにぎやかに呟きます。ぜひお気に入りを見つけてください。

月読の

2017年11月30日 | 万葉集
第 0670 ◆ ◆ 湯原王の歌一首
月読の 光りに来ませ あしひきの 山きへなりて 遠からなくに
湯原王 ◆ ◆
      万葉集 第四巻 より
::: 読み :::

つくよみの ひかりにきませ あしひきの やまきへなりて とおからなくに

::: 意訳 :::

月の光をたよりにいらっしゃい。
あなたと私は“あしひきの”山を隔てるほど遠いというわけではないではないでしょう
::: 備考 :::

湯原王 (ゆはらのおおきみ)の 生没年はわかってないの。天智天皇の孫に当たり志貴皇子の子で、歴史的には活躍した形跡がないけど、歌人としては天平前期の代表各で、繊細で素敵な作品がとても多いの。

ホンマやね。「月読」なんてロマンチックな言葉やね。

月読とは月読命(つくよみのみこと)の事で、 『古事記』に月の神で、夜の世界を支配するとあるよね。お月様は太陽のように力強くないけど、澄みきった明るさと繊細さが一途に会いに来て欲しい気持ちを表してるよね。
「あしひきの」は山の枕詞で、足を引きずるように山のすそが長く引いている様子の事で、なだらかで優しい山の事ね。この歌は女性の立場で詠んでいる歌で、湯原王はとても繊細で優しい方だったようね。

月の光の中をはるばる山を越えて会いに行く。
あ~~~、待っている方も待ち遠しいやろうね。
う~ん!ロマンチック

散らまく惜しも

2017年11月22日 | 万葉集
第 1517
◆ ◆ 長屋王歌一首
味酒 三輪の祝の 山照らす 秋の黄葉の 散らまく惜しも
長屋王 ◆ ◆
     
万葉集 第八巻 より

::: 読み :::

うまさけ みわのはふりの やまてらす あきのもみちの ちらまくをしも

::: 意訳 :::

三輪神社で神職が奉仕しているその山を、照らすばかりに色づいた秋のもみじが散ってしまうのは惜しまれることよ

秋の紅葉の散りゆくのを惜しむ歌やね
でも、詠み手が長屋王という事で、ちょっと斜めから見てみるわ。
長屋王は奈良時代の大臣で、対立する藤原氏の陰謀によって謀反を密告され、 藤原宇合(ふじわらのうまかい)らの率いる軍勢が長屋王の邸宅を包囲して、 家族と供に即日自害させられるのよ。
後に密告は「誣告 (虚偽の告訴・告発) 」 であると『続日本紀』に記載されてるわ。
無実の罪やった「長屋王の変」 やね。
味酒(うまさけ) は三輪にかかる枕詞。
祝 (はふり)は、神官の役職の一つ。
黄葉(もみじ)は紅葉のことで、万葉集ではほとんどが黄葉を使ってるけど、 長屋王の子供に黄文王(きぶみのおう)という人がいて「味酒 (うまざけ)」「ウマ」宇合「ウマ」にかけて 黄文王を助けて欲しいと願ったのでは? とも解釈できるわね。
実際、黄文王藤原不比等の外孫だった事もあって死を免れているわね。
政治的陰謀渦巻く時代の有名な悲劇のひとつやね。