恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

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紅一さんと2人だけの夜 

2014-09-07 09:40:11 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉紅一

えー、なんだか思わせぶりな題名ですが。
先日、『世界で一1番アツい夏~夜のビーチ~レポ』で、譲二さんと紅一さんが恋敵になる話を妄想するかもと自分で言い出しちゃいました。



でも、恋敵とまではいかないかな…。
このお話の時期は、譲二さんルートでヒロインが大学卒業後からプロポーズされるまでのどこか。

こちらは紅一さんを知らない人のためにおまけ。

 


付け足すと、紅一さんは譲二さんのお兄さんです。何歳上かはわからないけど、私は3歳くらい年上なのかなと思っている。
この憂いを含んだ瞳が魅力的なんだよね。
ヒゲ男じゃないけど、私的にビジュアルは大満足の人です。


☆☆☆☆☆
茶倉譲二~喫茶店クロフネのマスター、実家は茶堂院グループという大企業。
佐々木百花~譲二さんの10歳下の恋人、今は介護の仕事をしている。
茶倉紅一~譲二さんの兄、茶堂院グループの経営者

☆☆☆☆☆
紅一さんと2人だけの夜 その1
〈譲二〉
 茶堂院グループの別荘に百花ちゃんを連れて行く。
三泊四日で好きなように使っていいと言われている。
 別荘のある土地のリゾートホテルを買い取る交渉をするとかで、珍しく兄の紅一も泊まることになっていた。

紅一「譲二、久しぶりだな。あ、佐々木さんも」

百花「お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」

譲二「兄貴、百花ちゃんも一緒に呼んでくれてありがとう」

紅一「お前にはまた今度のプロジェクトを手伝ってもらわないといけないからな…」

譲二「それって、やっぱり俺が加わらないとまずい?」

紅一「ああ、是非頼みたい。提携先の企業の条件の一つだ。つまり、お前が茶堂院グループを立て直した手腕が認められてるってことだからな」

 俺は小さくため息をついた。
 実家を手伝ったときから覚悟はしていたが、やはり小さな喫茶店のマスターのままでは周りが許してはくれないみたいだ。

 兄貴と一緒に泊まるとは言っても、兄貴は仕事で来ているのでそんなに顔をあわす機会はなかった。
 食事も一緒に食べたのは最初の日の夕食だけで、翌朝俺たちがゆっくり起きて来ると、スーツ姿で出かけようとしていた。

百花「おはようございます」

譲二「兄貴、おはよう。もうでかけるの?」

紅一「おはよう。ああ、そろそろ出かけないと約束に間に合わない」

譲二「朝食は?」

紅一「いらない」

譲二「朝飯抜きは体にわるいぞ」

紅一「いつもこんなもんだ。それじゃあ、佐々木さん、ゆっくり楽しんでください」

百花「はい。ありがとうございます」

 その日はゆっくり朝食を済ますと(二人だけだと色々とすることがあって、朝食を作るにも時間がかかった)、別荘の近くの観光地巡りをして過ごした。


☆☆☆☆☆

 夜遅くなって、兄貴が帰って来た。

紅一「ただいま」

百花「お帰りなさい」

譲二「おかえり。兄貴、飯は?」

紅一「まだ食べてない」

譲二「だろうと思った。兄貴の分、すぐ温め直すよ」

紅一「すまない」


☆☆☆☆☆

 翌朝の朝食の時、兄貴に今日の予定を聞いた。

紅一「今日は、特に人と会うような仕事はないんだが、溜まっている事務処理を一日かけてしようかなと思っている」

百花「大変ですね」

譲二「兄貴も少し休んだら? 事務処理は午後からにして、午前中は俺たちとでかけないか? 何なら仕事は俺が手伝ってもいいし」

紅一「俺がいたんじゃ二人の邪魔じゃないのか?」

譲二「まあね。でも、俺たちは昨日一日二人きりで過ごしたし、半日くらい兄貴と3人でも大丈夫だよ」

百花「そうですよ。一緒に出かけましょう」

譲二「百花もこういってくれているし、少しは休息しないと…」

紅一「ありがとう…。それじゃあ、そうしようかな…」


☆☆☆☆☆

 3人で森林公園を散策している。
 山で高低差があるせいだろう、百花の息が少し弾んでいたので、ベンチを見つけて休憩をとった。

譲二「何か買って来ようか?」

百花「さっき通りかかったお店にラベンダーソフトって書いてありましたよね?」

譲二「わかった。百花ちゃんはそのラベンダーソフトね?」

百花「あ、私も一緒に行きます。」

譲二「いいから、いいから。足が疲れているんだろ? 少し休まないと、まだまだ歩くんだから…。兄貴は?」

 兄貴も思った以上に疲れているようだ。
 昨夜はもしかして夜遅くまで仕事をしていたんじゃないだろうか? 少し、顔色が悪い。

紅一「アイスコーヒーかなにかが飲みたいが、自分で行くよ」

譲二「兄貴も少し休んだ方が良さそうだよ。兄貴の分も俺が買って来るから待ってて」


☆☆☆☆☆
紅一さんと2人だけの夜 その2
〈百花〉
 3人で森林公園に来ている。

 譲二さんが飲み物とソフトクリームを買って来てくれることになった。

 待つ間、紅一さんと譲二さんの子供の頃の話をしている。
 私が知る譲二さんは中・高校生の頃と大人になってからだけだから、譲二さんの子供の頃の話を聞くのは楽しい。

紅一「譲二は負けず嫌いだからな…」

百花「そうでしょうか? いつもみんなのことばかり気遣って、自分のことは後回しで…」

紅一「そう言う所が負けず嫌いなんだ。人に頼れば楽になることでも、全部自分で抱え込んでしまう。ま、俺も人のことは言えないが…」

百花「譲二さん、もう少し私に頼ってくれたらいいのにと昔から思ってました…。私がまだ子供だから頼ってもらえないのかな? 早く大人になりたいって…」

紅一「譲二が唯一頼っているとしたら、それは佐々木さんだと思うけどな」

 紅一さんは優しい笑顔をみせた。どことなく譲二さんの面影がある。

百花「そうでしょうか?」

紅一「茶堂院グループの立て直しのために実家にいた3年間、期待していた以上の働きをしてくれた。
あれは佐々木さんがいてくれたからだと思う。
嫌なことも多かったろうし、辛くてキツいこともあったろうが、そういうところは決してみせなかった。
以前だったら、俺にもぶっきらぼうに当たっていただろうけどね。
きっと、佐々木さんと早く一緒に暮らしたいからあんなに頑張れたんだろう。
それは譲二が佐々木さんを心のよりどころにしているからだと思う」

百花「紅一さんにそんな風に言ってもらえると嬉しいです。私、これからももっともっと譲二さんの役に立ちたいです」

 譲二さんが戻って来た。

譲二「ごめんね。なんだかすごく込んでいて、遅くなった」

百花「すみません。譲二さんだけに並ばせて」

譲二「いいよ、いいよ。そんなの気にしなくて…。って、2人は結構打ち解けてるみたいだけど、何話してたの?」

百花「えっと…、譲二さんの子供の頃の話」

譲二「えーっ、兄貴、変なこと話してないだろうな?」

紅一「心配か?」

譲二「何話したんだよ?」

百花「変なことなんて話してないですよ」


☆☆☆☆☆

 午後からは、譲二さんは紅一さんの仕事を手伝い始めた。

譲二「ごめんね、百花ちゃん」

百花「いいえ。お仕事頑張って、紅一さんを手伝ってあげてください。あとで、コーヒーを持って行きますね」

譲二「すまないね」



☆☆☆☆☆


 小一時間経った頃、コーヒーとクッキーを載せたお盆を持って、紅一さんの部屋をノックした。

 なんだか言い争うような声がしている?

譲二「兄貴は疲れているんだから、俺が行くよ」

紅一「しかし、お前は佐々木さんとの休暇中なんだし…」

譲二「昨夜だってあんまり寝てないんだろ? 無理して車の運転中に事故でも起こされたら困るだろ? ちょっとは俺に頼れよ」

紅一「だが、俺の仕事なんだし…」

 2人に話を聞いてみると、電話があって急に書類を届けなくてはならなくなったそうだ。車で片道一時間半はかかる場所らしい。
 しばらく言い争っていたが、結局紅一さんが折れて、譲二さんが書類を届けに行くことになった。

譲二「百花ちゃん。ホントごめんね。この埋め合わせは今晩するから…」

 その埋め合わせがどんなことかわかったので、私の顔は真っ赤になってしまった。


☆☆☆☆☆
紅一さんと2人だけの夜 その3
〈百花〉
 譲二さんが出かけて、もう二時間はたっただろうか。

 突然の激しい雷の音。私は悲鳴を上げてうずくまる。

(譲二さん…早く帰ってきて…)

紅一「佐々木さん、どうしたんだ?」

私の悲鳴を聞いて紅一さんが駆けつけてくれた。

百花「…その…すみません…。雷の音に驚いただけで…」

紅一「この建物の中にいれば、雷は大丈夫だ。避雷針もついているし」

百花「そうですね…」

 建物の中にいても、あの光と音がだめなのだというのはとても言えない…。

百花「譲二さんは…大丈夫でしょうか?」

紅一「車だからな…。屋外にいるわけじゃないだろうから心配はいらない」

 その時、ひときわ大きな閃光と雷鳴がほぼ同時に聞こえた。

 私は悲鳴を上げると紅一さんに抱きついてしまった。

紅一「…佐々木さん…。大丈夫か?」

 私は恐ろしさに返事をすることもできない。

 紅一さんはそんな私をぎこちなく抱きしめてくれた。

紅一「大丈夫だよ…。大丈夫。…心配しなくてもいい」

 紅一さんの声は譲二さんより少し低い。

 だから、今まで、声が似ていると思ったことはなかった。

 でも、紅一さんの腕の中で、その声だけを聞いていると譲二さんの声のように聞こえた。

 パニックに陥った私はただただ、その声に縋り付き、紅一さんの胸にしがみついていた。




☆☆☆☆☆


 雷は収まったが、雨は相変わらず激しく降っている。

 譲二さんから電話が入った。

譲二「百花ちゃんごめん。雷、大丈夫だった?」

百花「はい。私は建物の中にいるし…。それより譲二さんは大丈夫でした?」

譲二「うん。俺は雨も雷も車に乗ってからだから、大丈夫だったよ。ただ、そっちの別荘に向かう道が土砂崩れで通行止めになっていてね…」

百花「うそ…。じゃあ、今日はもう帰って来れないんですか?」

譲二「ああ、他にルートがないかと探しているけど…あっても細い道だろうから、夜に通るのは無理だと思う」

百花「そんな…」

譲二「ごめんね。側にいてあげられなくて…。兄貴はそこにいるかな?」

百花「隣の部屋にいます」

譲二「ちょっと兄貴に代わってくれる?」


その4へつづく


☆☆☆☆☆

兄弟って本当によく似てるよね。声とかちょっとした仕草とか。
声なんか電話の向こうだと全く判別できなかったりする。
不思議なのは癖や仕草。もしかして遺伝子レベルで「ここで唇の左側だけあげて笑う」なんて書いてあるのかと思ってしまうほど。


☆☆☆☆☆

 この話をupする準備をし出した頃から、広島の豪雨災害がとてもひどい状態だというのが分かり始めて、日を追うごとに大変な被害が明らかになりました。
 この大規模な土砂崩れで亡くなられた方に哀悼の意を表します。

 また、全国各地でも豪雨による災害が広がり、いつ我が身に降り掛かるか分からない状況です。
 この話にも道路が土砂崩れで寸断されてというエピソードが出てきますが、本物の自然の力に比べると私の考える物語など本当にしょぼいもんだと思い知らさせます。

 まだまだ、行方不明の方もいることですし、この話をupするかどうか迷いましたが、紅一さんの話は今upしないと何ヶ月もそのままになりそうな気がするので、あえて今upすることにしました。

☆☆☆☆☆
紅一さんと2人だけの夜 その4



紅一さんは譲二さんと電話で話し込んでいた。

紅一「佐々木さん」

百花「はい」

紅一「譲二は土砂崩れで道路が寸断されて、今日はこの別荘には戻れなくなった」

百花「ええ、譲二さんから聞きました」

紅一「すまない…」

百花「え? 紅一さんが謝ることじゃ…」

紅一「いや…。今日の仕事は譲二に行かせるんじゃなくて、俺が行けばよかった。
そうすれば、俺ではなく譲二がここにいたのに…。
譲二が気軽に動いてくれるから、あいつに任せたんだが…。」

 心の中で、留守番をしていたのが譲二さんだったらよかったのに…と一瞬思ったことを見透かされた気がして、私は慌てた。

百花「それは…。でも、こんなに急に天候が悪くなるなんて思ってなかったことですし…」

紅一「譲二がいなくて心細いだろうが、俺で出来ることは何でもするから我慢してくれ」

百花「紅一さん、どうか頭をあげてください」



〈譲二〉
 百花が兄貴と2人きりで一晩を過ごす。そう思うといても立ってもいられない。

 もちろん、あの堅物の兄貴のことだから、何か間違いが起こるはずはない。

 はずはないと思うが…、それでも兄貴と2人きりにしておきたくはない。

兄貴は電話で、

「こんな悪天候に無理をするなよ。何処か泊まれるところを見つけるんだぞ。佐々木さんのことは心配しなくても大丈夫、俺がついている」

と言っていたっけ…。

「兄貴と一緒だから心配なんだ」

とはさすがに言えなかった。



 地元の消防団の人の話では、あの別荘地に通じる道はもう一つあるという。

 しかし、その道は待避所以外では対向出来ないような細い道で、こんな荒れ模様の夜に通るのは自殺行為だそうだ。

「そんなに急いでいるなら、この頃のことだから、朝の4時にでもなれば薄明るくなるんだから、その頃に出発したらいい」

と、その人は教えてくれた。

急がば回れ、兄貴と百花のことは気になるが、今は車の中で仮眠を取って、朝を待とう。


〈百花〉

雨足はどんどん強くなった。

屋根や窓を叩きつける雨の音で、大きな声で話さないとお互いの声が聞こえない。

譲二さんのことを心配しながら、夕食のしたくをする。

食材は3人分用意してあったが、2人分の食事を作る。

紅一さんと差し向かいで食卓についた。

紅一「すまないね。佐々木さんに何もかもしてもらって…。俺は譲二と違って料理はできないから…」

百花「いいえ、料理は好きなので…。譲二さんにも色々教えてもらったし」

紅一「あいつは何でも小器用にこなすからな…。料理も子供の頃から見よう見まねで、それなりのものを作っていた」

百花「そうなんですか?」

紅一「ああ、うまくできない時には料理の本をひっくり返したり、コックに質問したり…」

百花「ふふ、何だか目に浮かびます」

 食事も後少しで終わるという時だった。突然、灯りが消えた。

百花「きゃっ!」

紅一「停電だ…。佐々木さんはじっとしていて…。非常用のろうそくを取ってくるから」

 紅一さんは室内に何があるかよく分かっているらしく、手探りで隣の部屋に行くと火をつけたろうそくを載せた燭台をもって現れた。

紅一「ついでに配電盤も見て来たが、この家ではなくここに通じている電線の何処かが切れたみたいだ」

百花「大丈夫でしょうか?」

紅一「この天候だからな…。今日のことにはならないだろう」

百花「そんな…」

紅一「もう一つ燭台を持って来たから、これを使うといい」

百花「ありがとうございます。あ、食器は片づけます。」

紅一「いや、この暗闇だから、食器を運ぶのはろうそくの灯りだけでは危険だ。明日、明るくなってからにした方がいい」

百花「わかりました。それじゃあ、自分の部屋に下がりますね。おやすみなさい」

紅一「ああ、おやすみ」
その5へつづく


☆☆☆☆☆

紅一さんは絶対料理できないと思う。
譲二さんが特殊なだけで、メイドもコックもいる大企業の御曹司は料理できなくて、当たり前だよね。


☆☆☆☆☆
紅一さんと2人だけの夜 その5
〈百花〉
 自分の部屋にもどった。机の上に燭台を置いてパジャマに着替えた。

 広い部屋にポツンといると、譲二さんがいないことを改めて思い知らされた。

 寂しい。
 
 …それに譲二さんは大丈夫だろうか?

 泊まる所をみつけられて、ちゃんとベッドで休めるといいんだけど…。

 まさか、この嵐の中、無理に車で進もうとしていないよね…。


☆☆☆☆☆


 雨と風の音に怯えながらも、いつしかうつらうつら眠っていたようだ。

 ドーン‼︎バリーン!! ガシャーン!!

 突然の大きな音に驚いて目を覚ました。一体何が起こったのかよくわからない。

 部屋の中には雨まじりの風が吹き込んでいる。

紅一「佐々木さん! 大丈夫か?」

 部屋にパジャマ姿の紅一さんが駆け込んで来た。

百花「はい…。大丈夫です」

紅一「怪我はないか?」

百花「はい」

 私がベッドから抜け出そうとすると紅一さんに止められた。

紅一「待って! 割れたガラスが散乱しているみたいだ。俺がそっちへ行くからそこにいてくれ」

 紅一さんはベッドのところに来るとしゃがみ込んだ。

紅一「だめだ…。佐々木さんのスリッパの上にもガラスが飛び散っている」

百花「どうしましょう? スリッパを振ったらガラスも落とせるんじゃ…」

紅一「いや。万が一破片が残っていたら危険だ。佐々木さん、ちょっとごめん」

 紅一さんはそういうと私を抱き上げた。

 驚いたが、少しぐらっとしたので思わず紅一さんの首に手をまわした。

 譲二さん以外の男性に抱き上げられるのは初めてだ…。胸がドキドキしている。

 紅一さんはダイニングの椅子に私を下ろした。

 そして、ろうそくに灯りを灯した。

紅一「佐々木さん。ここで待っていてくれ。玄関に行ってスリッパを取って来る」

 そう言うとすぐさま暗闇の中に姿を消した。

その6へつづく


☆☆☆☆☆

ヒロインが『譲二さん以外の男性に抱き上げられるのは初めてだ…。』と言ってますが、書いた後で、本編プロローグでリュウ兄にお姫様抱っこされてたのを思い出した。
(^▽^;)
でも、ま、ヒロイン本人もリュウ兄のことは忘れてしまっているってことにしときましょう。

 

☆☆☆☆☆
紅一さんと2人だけの夜 その6
〈百花〉
 もう眠れそうにないので、お湯を沸かしココアを二人分作った。

紅一「ありがとう」

百花「いったい何が起こったんでしょう?」

紅一「庭の木が倒れて、佐々木さんの部屋の窓を直撃したみたいだな」

百花「大きな音と同時に風が吹き込んで来たので、びっくりしました」

紅一「ベッドが窓際になくて本当によかった…。佐々木さんに何かあったら、譲二になんて言い訳したらいいかわからない」

百花「いえ、紅一さんのせいじゃないですし」

 そう言いながらも、今になって恐ろしくなって来た。

(譲二さん…。早く会いたい)

紅一「佐々木さん、大丈夫?」

百花「え?」

 自分でも気づかないうちにガタガタと震えていた。

 そして、その震えは止まりそうもない…。

紅一「そんなに震えて…」

百花「大丈夫です。…本当に…大丈夫」

 譲二さんがここにいたら、抱きしめて、よしよししてもらえたのに…。
 そう思うと涙が溢れて来る。

紅一「佐々木さん…。泣いちゃだめだ…」

 紅一さんはおずおずと私を抱きしめて、背中をポンポンと叩いてくれた。
 そう、まるで譲二さんが私にしてくれるみたいに…。

 譲二さんのことを思い出して、私はますます泣きじゃくってしまった。

 紅一さんの厚い胸に縋り付いて泣きじゃくる。

 さっきスーツ姿の紅一さんに抱きしめられた時には気づかなかった紅一さんの胸の鼓動が聞こえた。

 紅一さんもドキドキしているんだ。

 そうだよね。
お互いパジャマ姿のままでこんなにも密着しているんだもの。

紅一「…泣かないで…」

 目をつぶっているとその声が譲二さんの声に聞こえて来る。

紅一「あと数時間だ…。そうすれば朝が来て、譲二も帰って来る…。それまでの辛抱だ」

 紅一さんに抱きしめられているとだんだん落ち着いて来た。

 …でも、もう少しこうしていたい。

 紅一さんの温もりに包まれていると、抱きしめてくれているのが紅一さんなのか譲二さんなのかわからなくなってきた。



☆☆☆☆☆

 
 紅一さんに抱きしめられたまま私は眠ってしまったらしい。

 気がつくと紅一さんの部屋のベッドに寝かされていた。起き上がると紅一さんがソファーの上で眠っていた。

 雨も風も夜中のうちに収まったようで、昨夜の天気がうそのように穏やかな朝の光が差し込んでいた。




「百花!兄貴!」

 譲二さんだ!
 こんなに朝早く戻ってきてくれたんだ。

 私はベッドから滑り降りるとドアを開けて廊下に飛び出した。

☆☆☆☆☆
紅一さんと2人だけの夜 その7
〈譲二〉

 対向車が来ないかヒヤヒヤしながら道を辿ったが、無事に別荘に辿り着くことができた。

 車を止めて降りるとなんだか様子が変だ。

 庭の大きな木が倒れて、別荘の窓を直撃している。

 あれは俺たちの部屋がある辺りだ。血の気が引くのが自分でもわかった。

譲二「百花!兄貴!」

 叫びながら別荘の中に入った。廊下を進むとドアを開けて百花が飛び出してきた。

百花「譲二さん!」

 百花を思い切り抱きしめる。

譲二「大丈夫?怪我していない?」

百花「譲二さんこそ…。こんなに朝早く。無理して危なくなかったの?」

譲二「俺は大丈夫だよ。ちゃんと明るくなってから出発したから…」

 ふと目を上げると兄貴がドアのところに立っていた。
 そういえば、百花が出てきたのもあのドア。兄貴の部屋からだった。

紅一「譲二、早くついたな。無理したんじゃないのか?」

譲二「出発は空が白み始めてからだから、無理はしてないよ。それより、ここの方がなんだかひどいことになってるじゃないか」

紅一「ああ。お前からの電話があった後、停電して…。それぞれの部屋で休んだら、夜中にすごい音がして、佐々木さんの部屋に木が倒れて来た」

譲二「それで、百花は?」

紅一「ああ、割れたガラスはベッドにまでは飛んで無くて大丈夫だった」

 俺にしがみついたままの百花を抱きしめる手に力が入る。

譲二「怖かったろ?ごめんね、一緒にいてあげられなくて」

百花「怖かった…」
譲二「うん…」
百花「すごく会いたかった…」
譲二「うん…」
 兄貴が軽く咳払いをする。

紅一「お前も疲れているだろ?2人で俺の部屋で少し休め」

譲二「兄貴は?」

紅一「コーヒーでも入れてくる」

譲二「コーヒーなら俺が…」

紅一「お前は佐々木さんのそばにいてあげてくれ」

 兄貴の言葉に甘えて、兄貴の部屋のソファに並んで座った。

 どちらからともなくキスを求めあう。

 どんどん深くなって、止められない。

 気づくとパジャマ姿の百花は胸元がはだけてしまっていた。
 外れたボタンを留めてやる。

譲二「ごめん」

百花「ううん」

 百花は潤んだ瞳で俺を見つめた。

 あまりの可愛らしさに、気持ちをなだめるのに苦労した。

譲二「それで…部屋が使えなくなった後は…兄貴の部屋にいさせてもらったの?」

百花「最初は2人でダイニングにいたんだけど、私が眠っちゃったみたいで、紅一さんがベッドに寝かせてくれたみたい。それで紅一さんはこのソファで眠ったみたい」

 ということは、兄貴は百花を抱き上げて運んだのか…。

 ダメだ。それ以上想像するな…。

 嫉妬心が湧き上がって来るのを必死で抑え込む。



☆☆☆☆☆


 着替えを取るために2人の部屋に入ると想像以上の被害だった。

 よく、こんな中で怪我一つせずに無事だったものだ。百花も割れたガラスが散乱する部屋を見て震えが止まらなくなってしまった。

 俺はそんな百花をしっかり抱きしめて慰めた。

 運もよかったのだろうけど…、すぐ百花を部屋から救出してくれた兄貴のお陰でもある。

 兄貴には嫉妬と感謝、両方の思いが込み上げて、なかなか複雑だ。

 部屋のガラスは少し片付けたが窓に刺さるように倒れ掛かった木は素人ではどうしようもない。
 俺たちは今日帰る予定だったし、兄貴も勧めてくれたので、昼過ぎには出発することにした。

譲二「兄貴はどうするの?」

紅一「壊れた部屋をそのままにするわけにはいかないし、業者に来てもらって復旧するまでしばらくはここにいようと思う。仕事にも好都合だしな」

譲二「そうか…。一人で大丈夫か?」

紅一「壊れたのはあの部屋だけで、あとは無傷だから生活には支障がない」

譲二「いや、そうじゃなくて…。食事とか洗濯とか…」

紅一「まあ、俺でもなんとかできるだろ」

百花「昨夜はありがとうございました」

紅一「ああ、俺は大したことはしていない。とにかく佐々木さんが無事でよかった」

 兄貴が百花を見つめる目が今までよりずっと優しい気がしたが、これは俺の嫉妬のせいだろうか?


☆☆☆☆☆
紅一さんと2人だけの夜 その8
〈譲二〉

 車で出発する。百花が見送る兄貴に手を振る。

 それが、とても熱心すぎるように思えるのも俺の思い過ごしなのだろう。

百花「紅一さん、一人で大丈夫でしょうか?」

譲二「そうだな…。でも、俺が言っても聞かないからな…頑固だから…」

 百花が突然笑い出した。

譲二「え? どうしたの? そこ笑うようなとこ?」

百花「ごめんなさい。紅一さんも譲二さんのことを似たように言ってたなぁって思って」

譲二「えー、似てたとしても明らかに俺の方がましでしょ?」

百花「どうかな?」

譲二「ひどいなぁ。絶対俺の方がましだって…」

百花「ふふっ」

 いつものように2人で会話しているうちに、兄貴への嫉妬心はいつのまにか心の隅に追いやってしまった。

〈紅一〉
 譲二たちの車は小さくなり見えなくなった。

 寂しいがとてもホッとしている。昨夜は本当にどうなることかと思った。

 譲二の大切な百花さんに何かあったらと思うと気が気でなかった。

 いずれ義理の妹になるのだから、心の中くらい佐々木さんではなく名前で呼んでもいいだろう。

 「いずれ義理の妹になる」と考えると胸がちくりと痛むのはなぜなんだろう?

 今までは、そんなことはなかったのに…。

 ふと、昨夜の百花さんを抱きしめた感覚が蘇る。柔らかくて、かすかに甘い匂いがした。

 そして、俺の腕の中で震えて泣きじゃくっていた…。

…あの時、彼女が愛しくて愛しくて…。

 俺の腕の中で疲れて眠ってしまったときの可愛らしさ…。


 俺は何を考えているのだろう…。

 彼女は譲二の恋人なのに…。

 それも弟が何年もかけて大切に愛して来た恋人だ。



 邪な考えを心の底に押し込めて、やるべき仕事に考えを向ける。

 業者には連絡したが、見積もりに来れるのは早くても午後遅くになると言っていたな…。

 それまで昨日やり残した仕事を片付けてしまおう。

『紅一さんと2人だけの夜』おわり

☆☆☆☆☆
紅一さんとの絡み、こんなもんですかね。
なにせ、大好きな彼女と何度も一夜を過ごしても手を出さなかった譲二さんの兄ですから…。しかも、堅物。
これが同じ兄でも桃護さんなら、軽いキスぐらいしそうですけど…。

もっとはっきりした恋敵になるには、こんな話を2、3回重ねないと無理な気がする。
続編書くべきでしょうかね?
その場合、テーマを別に設けるべきなのか?

 譲二さんも紅一さんもお互いのことを思い合っている兄弟だから、同じ女性を好きになったら切ない話になると思う。


『ひとつ屋根の下ストーリー』 ~眠れないシェアハウス編・譲二~

2014-09-06 20:58:02 | 吉祥寺恋色デイズ

ちょっと切なかったよ~。
(;_;)

 

いつも優しくて、温かい譲二さんが少し冷たくて、一定以上近づかないように距離をとってるんだもん。

千影がつれなくても、全然平気だけど(元々そういう不器用な人だし、いや妖か)、譲二さんがつれないのはちょっとショックだった。
(ノ◇≦。)あんな譲二さんを見たのは初めてだもん。

 

ヒロインはそんな譲二さんが気になって、彼に近づきたくて、色々するんだけど、譲二さんの周りには見えない壁があって近づけない。

 

そんな譲二さんが餌をやってる猫のノラちゃんにだけは心からの笑顔を見せてて、ヒロインはノラちゃんを羨ましく思う。

 

ヒロインは譲二さんに好きだって告白するけど、すげなく断られてしまった。

 

過去に何かあって、人とは深く交わるのを拒絶してるみたい。

 

それでも、譲二さんが風邪をひいて寝込んだ時、その看病をしてあげたり、猫の餌を作ってやったりしたことで、少しずつ心を開いてくれるようになった。



今回のヒロインは美大生で、絵の道に進むのを親に反対されて、独り立ちするためにシェアハウスに住むようになったんだよね。
だから、本編のヒロインより自分の夢がはっきりあって、それに打ち込んでいる人。

 

ヒロインの設定が少し違うことで、それに対する譲二さんの少し違う一面もみれて、いいよね。d(^_^o)





夢にひた向きだからこそ、課題が上手くできなかったり、コンクールでコネのある相手に優勝をさらわれて、悔し涙を流したりする。そんなところを譲二さんには目撃される。

 

そういうエピソードが重なって、譲二さんもヒロインのことを慰めてくれて、なぜ心を閉ざしているのかを教えてくれた。



譲二さんにはシェアハウスの経営を一緒にやってた婚約者がいたんだけど、ある日突然、その婚約者は出て行ってしまったんだって。

 

本編でも明里さんに失恋したエピソードがあるけど、婚約までしていた恋人に棄てられるのは、よりダメージがきついよね。

 

本編でも、自分が傷つくのを恐れて、ヒロインに積極的になれなかった譲二さんだけど、今回はヒロインからの告白すら拒絶するくらい臆病になってしまったんだね。

 

そういう譲二さんは切なくて、愛しくて、何かしてあげたいって思った。

 

さて、ヒロインの両親は何とかヒロインを家に連れて帰りたいと思ってて、譲二さんと剛史くんの留守に強引に家に連れ帰られてしまう。

 

でも、家に譲二さんが現れて両親を説得してくれる。

 

そして、2人で手をつないで帰ってきたシェアハウスの前で譲二さんがヒロインに好きだと告白してキスしてくれた。

 

本編でもそうだけど、ヒロインが目の前からいなくならないと自分の気持ちに素直になれないんだねぇ、譲二さんは。
(⌒-⌒; )

 

で、スチルですが、エプロンを脱ぎながら、振り向いてる譲二さんで、とっても色っぽくて素敵です。

 

スチルについても、「焼き直しじゃなく、他のみんなみたいな新しいのが欲しい」と要望出したので、聞いてもらえたみたいで嬉しい。

 

今回はいつもと違う譲二さんで、新鮮だった。涙を滲ませながら読んじゃいました。




この後ネタバレ。
カレ目線最後の決めゼリフ。

















覚悟して。オレが本気になったらこんなものじゃないよ?


誰よりも大事にして…世界一、幸せにしてあげるからね。

 

*・゜゜・*:.。..。.:*・'(*゜▽゜*)'・*:.。. .。.:*・゜゜・*
うん。知ってるよって思った。

 

でも、私は譲二さんと同じ時を過ごせるだけで幸せなんだけどね。(〃∇〃)

ムフフ(^ω^)

2014-09-05 20:31:38 | 吉祥寺恋色デイズ
ムフフ(^ω^)

『ひとつ屋根の下ストーリー』
~眠れないシェアハウス編~



私、譲二さんはないだろうd(^_^o)って言ってたけど、配信されたね。

シェアハウスってことなんだけど、剛史くんは同居人で、譲二さんは管理人らしい。

この頃番外編で、譲二さんの話が増えててうれしい。
(^ν^)

アンケートで要望として書いたりしたんだけど、採用してもらえたのかな?

番外編のアイカレでも、ちゃんと譲二さんルートがあって嬉しかった。

もちろん、みんなと同じアイドルじゃなくて、プロダクションの社長だったけど。

確かに年下の幼なじみたちと一緒に歌って踊る譲二さん((((;゜Д゜)))))))は想像出来ない。

一昔前のどん兵衛CM、アイドル編の武田鉄矢みたいになっちゃうのかな?
(^◇^;)

てな訳で、さっそく譲二さんの『ひとつ屋根の下』ストーリー、読みに行ってきます。
(^ν^)

剛史くん共々、またレポするかも。



『ひとつ屋根の下ストーリー』 ~アブナイ兄弟編・理人~

2014-09-02 20:19:56 | 吉祥寺恋色デイズ

りっちゃんの話、とっくに読んでたんだけど…。

 

設定とプロローグはハルくん編と全く同じ。


りっちゃんは兄弟になっても相変わらず馴れ馴れしい。
「お姉ちゃんなんだから膝枕して」とかね。

しかも、この話でもりっちゃんは同じ大学の一年後輩で、実は顔くらいは知ってたっていう設定。

ヒロインは人懐っこいりっちゃんに振り回されていつしか好きになってしまう…という感じ。

でもね、「兄弟だからこれ以上近づいてはダメ」と距離を置こうとするヒロインに見せつけるように他の女の子とイチャイチャしてみせる。

 防音付きの自分の部屋に連れ込んでみたり…。といっても、ピアノを教えてあげてただけなんだけど。
(;´▽`A``

 りっちゃんはビジュアル的には好きだし、友達としても大好きなんだけど、彼氏としてはやっぱり苦手だな。
┐( ̄ヘ ̄)┌
 わざとヤキモチを起こさせようとしたり、相手にしないとむくれたり…。

 ハルくん編では、キスどまりで教会での誓いが最大イベントなんだけど、りっちゃん編では最後までいっちゃいます。

( ´艸`)
 わっ、展開 はや! です。

 手の早い弟に、側でヤキモキしながらアタフタしてるハルくんがとても可愛かった。
(≧▽≦)

さて、ハルくん編で書くかもと言っていた譲二さんの「ひとつ屋根の下」ストーリー書いちゃいましたので、近々upします。

だってね、譲二さんの「ひとつ屋根の下」の番外編はでないような気がするんだよね。
(。・ε・。)
本編自体が「ひとつ屋根の下」だし…。

 〈今日からあなたが下宿することになった喫茶店の二階。
なんと10歳年上の素敵な男性と2人だけで暮らすことに!!
部屋を訪ねると上半身裸の彼にドキドキ!
「○○ちゃんはオレ一筋だもんね」といいながら肩を引き寄せられたり…。
めくるめくトキメキの毎日が続く!!〉


 とかいうキャッチコピーができそうでしょ?