恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

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秘め事~その6~その9

2014-12-02 08:18:13 | ハル君ルートで茶倉譲二

ハルルートの譲二さんの話の続編
『それぞれの道』で譲二さんがヒロインと別れて、七年が経ち、ヒロインはハルくんと結婚した。
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秘め事~その1~その5の続き



秘め事~その6

〈譲二〉


 美緒が帰る前に、いつものようにコーヒーを出した。

美緒「ありがとう。昔から譲二さんのコーヒーが好き。」

譲二「美緒ちゃん…。こういうことは今日で最後にしよう…。」

美緒「え?」

譲二「もちろん、ただコーヒーを飲みに来てくれるのは構わないし、ただのおしゃべりでも相談事でも俺は喜んで相手になる。
でも、もうこれからは二階に上がるのはやめよう…。」

美緒「…」

譲二「俺は美緒ちゃんのことを一生好きでいると言ったろ?」

百花「譲二さん…」

譲二「だから、美緒ちゃんと俺はそういう関係でいる必要はないんだ。
去年、7年ぶりに美緒ちゃんに会った時、俺は一目で美緒ちゃんの虜になった。
だから、今でも…そしてずっとこれからも俺は美緒ちゃんのものだと思ってくれていいよ。」

美緒「それじゃあ、譲二さんはもう誰とも結婚しないの?」

譲二「ああ、恋人も作らない。信じてくれていい。
だから…、体の関係は解消しよう。」

 美緒は俺にしがみついた。

美緒「でも、それだと私は譲二さんを縛り付けるだけになるよ…」

譲二「美緒ちゃんが縛り付けるんじゃないよ…。
俺がそうしたいだけ…。
自分の気持ちに素直になったら、美緒ちゃんを好きでいるしかない。
今まで何年もその気持ちを押さえ込もうとしてきたけど、それは不自然なことだとわかったから」

美緒「私はハル君の妻のままなのに?」

譲二「ああ、他人の妻を好きになるのは人の道に外れているかもしれないけど、思うだけなら許されると思う。
でも、今までみたいに体の関係を続けるのは良くないよ…。
美緒ちゃんは俺に『抱いて欲しい』と言ってたけど、きっと本心からじゃなかったと思うんだ」

美緒「本当にそう思ってたんだよ」

譲二「思っていたかもしれないけど、それだとずっとハルを裏切って苦しいままだよ。
俺に抱かれるのは、罰のつもりじゃなかったの?」

美緒「罰って?」

譲二「俺のこともハルのことも思い切ることができなくて、ズルズルとどっちも裏切って来たことへの罰…。
これは責めているんじゃないよ。
美緒ちゃんはハルの妻なのに俺に抱かれることで、わざと自分を苦しめているんじゃないか?」

美緒「譲二さんに抱かれることが罰だなんて…」

譲二「だって、このままこんな関係を続けていたら、美緒ちゃんが辛いだけだろ?」

美緒「…」

譲二「俺は美緒ちゃんが好きだから、何度でも抱きたいよ。
でも、美緒ちゃんが苦しむのを見るのは嫌だ。
美緒ちゃんには幸せになって欲しいんだ」

美緒「譲二さん…」


 俺たちはしっかりと抱き合った。




 チャイムと同時にドアが開き、数人の客がドヤドヤと入って来た。




 俺たちは慌てて離れたが、既に遅かった。



 俺と美緒が抱き合っている姿はしっかりみられたし、それを目撃したのは、一護と剛史…、それに春樹だった。



その7につづく

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秘め事~その7

〈春樹〉

 午後、仕事が一段落した頃に一護からメールが来た。

『やあ、元気か?

 最近、会えてないな。
今日たまたまタケと休みが重なって、一緒に過ごしているんだが、
お前はどうだ? 
仕事が早く切り上げられるなら夕方からでも会わないか?
夕方からならリュウ兄と理人も来られると言っていたぞ。
                     一護』


 大きな仕事が一段落していて、部下に任せてもよい仕事ばかりだったので、直ぐに一護に電話した。

春樹「やあ、メールありがとう。」

一護「ああ、元気か?」

春樹「ああ、今日はもう仕事を終わりにしてもいいから、すぐ合流できるよ。
どうすればいい?」

一護「今タケとも話してたんだけど、久しぶりにクロフネに行かないか?
おまえ全然行ってないだろう。」

春樹「…先週くらいに一度行ったよ。
譲二さんとしか会わなかったけどね」

一護「そうか。ま、俺たちは集まれてもお前がいないことが多いから、クロフネにいくぞ。
それでいま事務所なのか?」

春樹「ああ、ちょっと片付けたら出られるよ」

一護「それじゃあ、俺たちが事務所に寄るよ。
それで、一緒にクロフネに行こう」

春樹「わかった。じゃあ待ってる」

 美緒にも電話してみたが、留守電になっていた。

 そこで、『これから、みんなとクロフネに集まることになった』とだけメールして一護たちを待った。


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剛史「理人は直接クロフネに来るそうだ。
リュウ兄も学校が終わり次第、クロフネに来てくれるそうだ。」

春樹「本当に久しぶりだな。」

一護「美緒は来るのか?」

春樹「留守電だったから、クロフネに来るようメールだけしたよ。」

 そんな話をしながら、3人でクロフネに入った。



 そこには譲二さんに抱きしめられる美緒の姿があった。

 2人は慌てて離れたが、俺の目には残像のように抱き合う2人の姿が残った。

春樹「何してるんだ!!」

 俺は叫んで駆け寄ろうとしたが、一護とタケに両脇から腕を捕らえられた。


 美緒は顔を伏せて青ざめている。

 譲二さんは何事もなかったかのような表情で俺たちに「いらっしゃい」と言った。

 腕を振りほどこうと暴れる俺を押さえつけながら、2人は口々にいう。

一護「落ち着け、暴れるんじゃない。」

剛史「しっかりしろ。まずはマスターの話を聞こうぜ」

春樹「放せ! これが落ち着いていられるか。美緒は俺の妻なんだよ!」


 俺が叫んだ時、チャイムがなって、理人が入って来た。


理人「一体なんの騒ぎなの?」




その8につづく

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秘め事~その8

〈春樹〉

 俺はみんなになだめられて、ひとまずソファーに座った。

 リュウ兄も来て、その場の異様な雰囲気に盛んに理人を問いただしている。

 譲二さんはやはり何事もなかったかのように、みんなにコーヒーを出している。

 そんな譲二さんを俺は心底憎いと思った。

理人「それで、マスターが美緒ちゃんを抱きしめてたの?」

 みんな気まずそうに黙っている。

竜蔵「ジョージ、そんな人の道に外れたことをしたのか?」

理人「本当のとこどうなの?
 やっぱり抱きしめていたわけ? マスター?」

譲二「抱きしめていたのは…、本当だ」

 俺が立ち上がって殴り掛かろうとするのを一護と剛史が両脇から座らせる。

譲二「別に変な下心で抱き合っていたわけじゃなく、美緒ちゃんを慰めていただけだ」

春樹「単に慰めているようには見えなかった」

 俺は譲二さんを睨みつける。

譲二「ハル、この間来た時にも言ったけど、俺は時々美緒ちゃんの愚痴を聞いてあげている。
ただ話を聞くだけだけど、この頃美緒ちゃんは精神的に不安定みたいで、涙もろくなっているみたいだ。
今日も泣き出したので、背中を叩いて慰めていただけだ。」

春樹「美緒、そうなのか?」

 美緒は青ざめたままうつむいて、小さな声で「うん」と言った。

 「なんだそうだったのか」とみんな口々に言う。

 本当にそうだとみんな思ったわけではないだろう。

 俺たちの仲が気まずくなるのをいぶかって、慰めていただけということにしたいだけだ。

 俺はその場ではそれ以上問いただすことができなかった。

 ぎこちない笑みを浮かべ、みんなの話に加わった。

 美緒はそっと俺の隣に座って、時々心配そうに俺を見つめている。

 俺は美緒を安心させようと微笑んだ。


 3人の中で譲二さんだけは、まるで部外者のように何事もなかったかのような表情をしていた。

 譲二さんはいつも穏やかで落ち着いているが、今も動揺などしていないかのような顔をしているのは憎たらしかった。

その9につづく

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秘め事~その9

〈春樹〉

 俺が美緒と譲二さんの仲を疑うようになったのは、譲二さんがクロフネに帰って来てからだ。



 結婚前に一度美緒と喧嘩して、美緒が家出をした時にクロフネに泊まったことがあった。

 元恋人の譲二さんと2人きりということで気を揉んだが、美緒は何もなかったと言っていた。

 その後の美緒の様子も特に変わったことはなかったから、何もなかったのだろう。



 結婚式には譲二さんも来てくれた。

 だから、昔のことは昔のこととして、俺たちの結婚を祝福してくれているのだろうと思っていた。



 結婚後しばらくしてから、美緒の様子がおかしくなった。

 ひどく塞いでいたり、急に明るく朗らかになったり…。

 それは、2週間ごとくらいの周期で変わっていた。

 そして、その変わり目の時にどうもクロフネに行っているのではないかと疑うようになった。

 美緒がクロフネから出て来るのを見たという人もいたし、先週美緒自身の口から、「昼間時々クロフネを訪ねている」という話も聞いた。

 もちろん、なじみの喫茶店に行くくらい、好きにさせてもいいはずだ。

 理性はそう言っているが、感情はついていかない。

 クロフネには譲二さんがいる。

 しかも午後の客のいない時間帯だ。

 譲二さんは美緒の元恋人で、しかも俺のことを好きだった美緒を無理やり自分のものにしてしまった前科もある。

 何より、俺自身が当時恋人同士だった譲二さんから美緒を寝取ったという負い目があって、俺の心は穏やかではいられなかった。


〈譲二〉
 春樹たち3人に美緒と抱き合った姿を目撃されてしまった。

 ベッドで美緒を抱いている姿を見られた訳ではないのが、不幸中の幸いだろう。

 しかし、「もうこんなことはやめよう」と話し合った矢先だったのに…。

 そして、抱き合ったと言っても、それは恋人としてではなく、本当に美緒を慰めるためだったのに…。



 俺はみんなの前でしらを切り通した。

 美緒は青ざめているので、白状しているようなものだ。

 俺だけでもなんとか申し開きをしておかないと…。

 俺はともかくハルとずっと暮らして行く美緒が辛いだろう。

 動悸は激しかったが顔には出さずに済んだ。

 その前はともかく、その時は本当に慰めていただけだから嘘をついた訳ではない。

 みんなそれで一応矛を収めてくれた。

 もちろん内心は分からないし、ハルが納得していないのは顔を見ればわかる。

 早く1人になりたかったが、その夜は遅くまでみんなで盛り上がった。

 ほとんど貸し切り状態で、俺は厨房と店を何度も行き来した。



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 みんなを送り出し、やっと店を閉める。

 シャワーを浴び自分の部屋に戻った。



 シーツの皺が昼間の彼女との情事を思い出させた。

 疲れきっていた俺は、そのままベッドに潜り込んだ。

 彼女の匂いが残っていないか嗅いでみる。

(未練たらしいな、俺は…。自分から止めようと言ったくせに…)



 もう美緒はクロフネに訪ねて来ることもないかもしれない…。

 今日のようなことがあったら、いくらなんでもハルが許さないだろう。



『秘め事』おわり


続きは『焦燥』~その1~その4です。