旧約聖書の創世記第21章にイサクとイシマエルのお話が記載されている。
『・・・・・・
そこでサラは身ごもり、アブラハムに、その老年におよんで一人の男子を生んだ。それは神が先に告知された頃におこったのである。アブラハムは自分に生まれた子、サラが彼に生んだその子の名をイサクと名づけた。アブラハムは神の命のように八日目にその子イサクに割礼を施した。アブラハムはその子イサクが生まれた時百歳であった。・・・・・・
サラはエジプト女のハガルがアブラハムに生んだ子が、自分の子イサクと遊んでいるのを見た。そこで彼女はアブラハムに言うには、「この婢とその子を一緒に追い出して下さい。この婢の子はわが子イサクと一緒に跡継ぎになるべき者ではないのですから。」この言葉でアブラハムはその子のために大いに悩んだ。しかし、神はアブラハムに言われた。「あの少年と君の婢のことで悩まなくてもよい。サラの君に言うことは何でも彼女の言う通りに聞いておやり。イサクから生まれる者が君の裔とよばれるべきだから。しかし、婢の子もまたわたしは大いなる民とする、彼もまた君の裔だから。」アブラハムは翌朝早く起きてパンと水の皮袋をとってハガルに与えた。・・・・・・』ここでいうエジプト女ハガルの子とはイシマエルのことである。
ところで、アブラハム合意というイスラエルとアラブ首長国連邦の国交正常化協定というものがあることをご存知だろうか。または、アブラハム合意和平協定ともいうらしい。ウィキペディアによれば…『アブラハムの宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)の始祖でかつユダヤ民族(イサク)とアラブ民族(イシュマエル)の共通の父祖であるアブラハムの名に因んで「アブラハム合意」と名付けられた‥‥ということだ。つまり、ヤハウェの神は異母兄弟であるイサクの末裔もイシマエルの末裔も等しく「大いなる民」として栄えていくと言っているのである。さらに言えば、イスラエルの民もアラブの民もともに栄え、共存していくと言っているのである。
全く別のお話であるが、今から52年以上前の昭和46年2月に小日向白朗は「アジアの平和と進歩のために」と題する提言を行っている。提言先は当時ベトナムでの泥沼戦争で悩んでいたアメリカである。キッシンジャーを通じてニクソン大統領にこの提言は受け入れられた。そのなかで白朗は、『・・・・・アメリカが真にアジアの平和と進歩のために図ろうとするならば、いっそう思い切った政策の切りかえを必要としていることは明らかである。その第一はベトナムの和平である。いまや武力によるベトナム問題の解決が不可能であることは明白である。アメリカが速やかに戦斗を終結し、南ベトナムからの撤収を実行すれば、和平後のベトナム復興とメコン開発のための国際協力の道が開かれ、それはアジアはもとより、アメリカにとっても長期的な利益を保証するものになるであろう。・・・・・』としている。歴史の事実はそれから2年後の昭和48年3月29日までにアメリカ軍のベトナム完全撤退が達成され、ベトナム戦争の終結に向けて動き出している。
ここで単純なゲームをしてみたい。イサクの代わりにイスラエルをイシマエルの代わりにハマスを入れてみたらどうなるだろうか。また、「ベトナム戦争に悩むアメリカ」の代わりに「パレスチナとの紛争に悩むイスラエル」を、「ベトナム」の代わりに「ガザ」とでも入れてみたらどうだろうか。
しかし、である。・・・イスラエルもハマスも非戦闘員である女子供一般市民の命を数多奪った大罪は贖われなれければならないのは厳然たる事実である。さらに、今ある問題、例えば、大陸と台湾、北朝鮮と南朝鮮の問題も同根であると思うのである。10数以上ものいろいろな癖のある民族を包含する多民族国家を13世紀から20世紀までの700年間ちかくものながきにわたりリードしてきたあのハプスブルグ家の知恵をいま一度思い出すのも一興ではないだろうか。キーワードは“異種との共存”だろうか。(文責:吉田)
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