2023.4.14 ARAB NEWS Japanは、「カタールとバーレーンが国交を回復するとバーレーン通信社(BNA)とカタール外務省が発表した。」と報じた。さらに、「2カ国の国交回復までに、アラブ諸国によるカタールとの国交断絶が解除されてから2年以上要した。」加えて「1月にバーレーンの皇太子がカタールの首長と電話協議しており、この湾岸の2カ国が、関係修復に向けて動いているとみられていた。」とある。つまり、中東での動きはかなり普遍的な趨勢を背景としているということではないだろうか。
習近平氏の仲介でサウジとイランが国交回復したのも、時事通信が「シリアのアサド大統領は(3月)19日、アラブ首長国連邦(UAE)を訪問し、ムハンマド大統領と会談した」と報じたのもつい最近のことだ。イラン及びアラブ諸国で大きなうねりが感じられる。さらに言えば、ウクライナ紛争の効果ともいえるかもしれないが、BRICS+アルファへの経済パワーの集中傾向がうかがわれている。金融界でもドルの凋落が目立ち始めている。何か大きなうねりを感じるのは私だけか。
ところで、今朝ちょっと遅起きしてしまったのだが、朝食の時にラジオのスイッチをひねった。たまたま国際政治学者の高橋和夫氏がインタビューされていた。テーマはイラク戦争から20年ということのようだった。今から20年前の5月2日にブッシュはイラク戦争の総括、いわゆる勝利宣言を発している。ところが、実はこれこそがアメリカ一極集中体制の終焉の始まりであった、と高橋氏は総括していた。単純に大量破壊兵器がなかったからアメリカの信用が失墜したということではないだろう。絶頂時のアメリカであれば、その道のプロであるCIAあたりが証拠捏造くらいちょちょとやってしまっていたはずである。その後アフガンでの痛手も重なり、アメリカは再起できないくらいにまで凋落しているというのが実態であるのではないだろうか。
個人事であるが、イラク戦争の時に私はイラク人二人を含む数人の仲間たちと一緒に戦後復興をにらんでイラクを支援しようというNPO法人を立ち上げていた。ところが、勝利して終結したはずのイラクからいつになってもアメリカは撤退をしなかった。早く撤退してくれれば、世界中から復興資金が投下され、イラクは日本の戦後のように経済復興し、経済は急成長していくだろうと読んでいたのけれど、そうはならなかった。逆にぐちゃぐちゃになってしまったのは皆さんご存知のことだ。そして、今もなおイラクはしっかりとした一つの国家の体をなしているとは言い難い、と同氏は指摘している。アメリカって本当に懲りないというか、罪深い国だなと感じてしまう。・・・結局NPOは解散してしまった。少しだけ医療支援をしただけに終わってしまったのである。もちろん持ち出しだけであった。
そういえば、フランスのマクロンさんが「アメリカの従属国じゃないよ、同盟国なんだよ」と当たり前のことを言ってアメリカに嫌われてるって話もあるらしい。誉れ高きヨーロッパのど真ん中にある“フランス王国”がなんでアジアの片隅にある台湾などというところのいざこざに巻き込まれなくちゃいけないのよ、といったところだ。当然のことだが、もともとフランスはそういう国柄でもある。別にアメリカのリーダーシップが劣化したということを示しているわけではない。その昔16世紀フランソワ1世がハプスブルグのカール5世と対立していた頃、敵の敵は味方だよねー…とばかりにがちがちのカトリックのくせにルター派と組んだり、スレイマン1世と組んでみたりするのもなんとも思っていないリアリストのDNAを引き継いでいるのだ。・・・・岸田さんもこのくらいのことを言ってくれたらスカーっとしたのにね。「ウクライナ、そんな遠い国のことに口出すほど日本は暇じゃないよ…」みたいな。
そう、いずれにしてもこの失われた20年、この時間を経て世界はデタントへとシフトしていると思う。アメリカがいくら火の粉をまき散らしたとしても、人の心は動かせない。それはまさに高橋氏の言われるように「終焉の始まり」だったのだろう。
(文責:吉田)