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「ある島の可能性」の読書メモ 5 ~ ティヤール・ド・シャルダン

2017-04-03 | ウエルベック

ウエルベックは、セリーヌ、サルトル、ジュネを下衆連中と言っている。そうかなぁ。

花のノートルダム (光文社古典新訳文庫)
Jean Genet,中条 省平
光文社

また、ティヤール・ド・シャルダンを持ち出し、ショーペンハウアーの言葉を借りて、コケにしていく。シャルダンの思想を煮え切らない愚かな人生観と馬鹿にしている。

現象としての人間 [新版]
美田 稔
みすず書

そこで、ティヤール・ド・シャルダン(1881年~1955年没)の思想をネットで調べてみた。

  • テイヤールの思想は”キリスト教的進化論”と言われている。それは、テイヤールが古生物学上での人類の進化過程を研究した上での、人類の進化に関する壮大な仮説であるようだ。『現象としての人間』が彼の代表作。
  • ところが、進化論を承認していなかった当時のローマ教皇庁によって(テイヤールの思想は)否定され、危険思想・異端的との理由で著作は禁書となった。でありながら、『現象としての人間』は複写回覧されて、多数の人の読むところとなった。
  • 以下が、その”キリスト教的進化論”の概要。
  1. 宇宙は生命を生み出し、生物世界を誕生させることで、進化の第一の段階である「ビオスフェア(生物圏)」を確立した。
  2. ビオスフェアは、四十億年の歴史のなかで、より複雑で精緻な高等生物を進化させ、神経系の高度化は、結果として「知性」を持つ存在「人間」を生み出した。
  3. 人間は、意志と知性を持つことより、ビオスフェアを越えて、生物進化の新しいステージへと上昇した。それが「ヌースフェア(叡智圏」。
  4. 未だ人間は、叡智存在として未熟な段階にあるが、宇宙の進化の流れは、叡智世界の確立へと向かっており、人間は、叡智の究極点である「オメガ点」へと進化の道を進みつつある。
  5. 「オメガ」は未来に達成され出現するキリストである。
  6. 人間とすべての生物、宇宙全体は、オメガの実現において、完成され救済される。  
テイヤール・ド・シャルダン (聖母文庫)
竹田誠二
聖母の騎士社

まるで、SFや精神世界で泳ぐ一部の作家たちの思想に近い感じがする。宇宙精神と個々の人間の意識は統一される、、そのようなロジックが多い。自己啓発書の一部でもそのような思想を持つ者がいる。

 

しかし、ウエルベックも本作品では、宇宙人はもしかして未来人かもしれない、、というドキッとするようなことを登場人物に言わさせている。そういう視座からみると、ティヤール・ド・シャルダンの思想を案外馬鹿にしてはならない、、と思える。

 

本日、p98/537通過。続く。 


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