kirekoの末路

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シナリオ【絶句】-1

2005年12月23日 19時31分26秒 | バイオハザード・OB・FILE『K』完結
AM0時53分 ガソリンスタンド給油機材前

巨大な爬虫類の化け物の屍骸がひどい腐臭を放ちながら洗車機と共に燃えている。
いつの間にか慣れてしまった普通の世界では感じる事の出来ない異臭。
八人の行き着く先々で確実に襲ってくる化け物の恐怖。
かすかな希望と圧倒的な絶望を感じながら、八人の中には
いつの間にか、何とも言えない連帯感が生まれていた。

尾山と綾香と五郎と恵がスタンド給油機前にたたずんでいる。

「・・・あと一匹いるはずだ」
五郎はキョロキョロと目を盛んに動かしている。
室内料金所で賀居を襲ったトカゲの化け物が万が一生きていたらと考えると
まだ気は抜けない。
さっき撃った時の反動で未だ震える指が
銃のセーフティレバーに手をかけたまま、
五郎はガソリンを取りに行った四人の帰りを待っている。

五郎の手には飛鳥から受け取ったHKG3。ライトに当たり
まるで本物の銃であるかのような鈍い光沢を放っている。
まだ銃の弾倉には少量だが弾が入っているようだ。
五郎のポケットにはマガジンが一個入っている。


「もってきたよー!」
ガソリンスタンドの奥から人影がスタスタと走ってくるのが見える。
スタンドのバックライトに当たると顔がうっすらだが見えはじめる
・・・声の感じからして、どうやら貴美子のようだ。
手にはポリタンクがゆらゆらと腕の運動と共にゆれている。
男性でも重く感じるそのガソリン入りのポリタンクを軽々と持ち上げ
驚くべき速さでこちらに向かってくる。

「ちょっ、ちょっとまってくださいよ」

「あの人・・力ありすぎ・・」
後ろから智弘と健二がポリタンクを一つずつ持ってこちらへ歩いてくる。
しかし貴美子のように軽々とは持てない様子で、引きずり気味に早歩き程度の
速度でこちらへ向かってくる。

「はぁはぁ、あの女化け物かよ・・」
飛鳥がその後ろからポリタンクを押すようにして追いかけてくる。
タンクの重さに少々息切れしながら、前列を走る貴美子が軽々と担いでいるのが
不思議でたまらないといった表情を浮かべる。


「これで、ガソリンは手に入ったわけだ」

「・・・なんとかなりましたね」

「早く車へ急ぐんじゃ、いつあの化け物が出るともかぎらんしのう」

「そうね、急ぎましょう」

「急ぐって言ったって、これ車の所までもっていくのに一苦労だよ」

「またこれ持ってくんですか・・・トホホ」

「智弘クン、泣き言いってると化け物に襲われちゃうよ?」

「へっ、チョロイチョロイ。化け物ぐらい俺がやっつけてやるよ」

八人が合流すると、それぞれ声を上げて言う。
ガソリンを手にしたことと、自分達で化け物を倒したこと
その事実が彼らを勇気付けているのだろうか
彼らの口ぶりからは、随分と余裕を感じさせる。


全員の足がスタンド前道路へと向かう瞬間、その時だった。


ドガァァン!ガン!ガンガラ・・


後ろの室内料金所のドアが大きな音を立てて破られる。



「ギャッ・・ギャッ・・」
壊されたドアの中から不気味な声が聞こえると
さっき見たあのトカゲの化け物に良く似た影が入り口に立っていた。
影はゆらっと前に歩きだすと健二達の方向に向かって走ってくる。


「お、俺のせいじゃないぜ!」

「クッ!」
さっきまで冗談を言っていた飛鳥が血相を変えて道路側に逃げ出そうとすると
五郎が銃のセーフティを解放し、トリガーに手をかける。


ドォン!ドン!


「ギャャッ!ギャギャ・・」
銃声がガソリンスタンド内に響き渡り、
化け物は断末魔の声を上げその場に倒れる。
緑色の腐った皮膚と血液と思われる液体が、その場にだらしなく広がっていく。
どうやら化け物は死んだようだ。
化け物の顔面から即頭部にかけて二発の弾痕が残っている。

「・・・?」
五郎が不思議そうにトリガーを確認する、自分の指は
まだ銃のトリガーに触れていない。
つまり撃ったのは自分じゃないのだ。

五郎が不思議そうに料金所のドアを見たその時
ドアの近くにドアを支えていた柱にもたれかかるようにしている人影が見える。

「あれは・・・人か?」

「まさか・・」
恵が指を指すと同時に五郎が化け物の屍骸を飛び越えて
室内料金所の人影に向かっていた。



「ッ・・よ、よお、生きてたか」
室内料金所のドア柱にもたれかかっていた影が口を開く。

・・・賀居だ。
賀居は片手で腹部を押さえ、自慢の銃を握り力が入らないのか腕をだらんと下へ
たらしている。

「賀居さん!」
五郎が満面の笑みを浮かべると、賀居はその場に崩れるように座り込んだ。
座り込んだ勢いで賀居のスーツの袖口から床に少量の血が流れる。


「・・うっ・・怪我を?!尾山さん!」

五郎は尾山を呼ぶと、他の六人も集まってきた。

「傷は浅いが・・こりゃいかんな、とにかく車まで運ぶんだ」
尾山はガソリンを抱えると道路に向かって歩き出した。
五郎は賀居をおぶさると、尾山の後に続いた。

AM1時21分 山道前道路 ワゴン車内

キーを挿しくるっとまわすとエンジン音がキュルキュルとうなる。
ガソリンを補充したワゴンは息を吹き返したようにアイドリングを始めた。
運転席には尾山と変わって飛鳥、助手席には恵が座っている。
後部座席前列には健二と智弘、綾香と貴美子が座っている。
後列には五郎と、応急処置を終えた尾山が賀居の容態を見ながら座っている。

「う・・くっ・・」
アイドリングの振動が傷に響くのか、賀居がうめき声をあげる。

「大した体じゃよ、普通なら意識を失うほどの激痛が伴う処置なんだが」
処置を終えた尾山が声をあげる。

「アメリカじゃ・・怪我なんて日常茶飯事だったからな・・」
少しうつむいた感じで尾山の問いかけに答える賀居。
修羅場をくぐってきた鍛えられた体と
鉄の意志力は彼の強さを確固たるものとしていた。

「おい尾山さんよ、終わったなら早速自衛隊の補給基地へ向かうぜ」
運転席の飛鳥が尾山に問いかけると、アクセルをゆっくりと踏み出す。

・・・ブゥゥゥン

ゆっくりとスピードを上げて走り出すワゴン。


道路を走ると、さっきまで居たガソリンスタンドが窓からみえる。
煌々としたライトがまだつき、めらめらと洗車機近くで炎が見える。

「・・・」
バックミラーでスタンドを見ている飛鳥。
少し寂しそうな表情を浮かべ、いつもの調子はどこへやらといったような寡黙さをうかがわせる。

長い沈黙が車の中を占領していた。


――十分後――

道は国道に入り、尾山の言っていた
自衛隊の補給基地まであと1時間といったところだろうか。

「そういえば、貴美子さんって昔何かやってたの?」
綾香が重い沈黙を破るように声をあげる。

「んんー?なんで?」
急に綾香に話しかけられたので少々驚きながら、質問がまったく疑問だったので
質問で返す貴美子。

「あんな重いガソリンの入ったポリタンクを持ちながら、どうしてあんなに走れるのかなーって思って」

「あー、あれねぇ。私タレントになる前は国体の選手だったのよね~。これでも国体選手の中では1,2を争う速さだったのよねー」

「へえ・・意外や意外ね・・」
それを聞いたとたん綾香をはじめ、健二や智弘まで表情が
変わり驚きの色を隠せないでいる。

「それに実家が漁師でねー、よく漁も手伝ってたから・・あんな重さのタンクくらいじゃへこたれないわよ!」
健二と智弘へ目配せをするように視線を浴びせる。
少しばつが悪い感じで、そっぽを向き窓の外を見る健二と智弘。

「まっ、そこらの頼りない男ドモよりは強いわよ」

「ええ・・そうね、ハハハ」

健二と智弘はさらにばつが悪そうに食い入るように窓の景色を見ている。

窓の外には道路の明かりとはまた別のスポットライトのような強い光りが見える。

「なんだあれ・・?赤いラントがくるくる回ってるけど・・検問か?」

「尾山さん家のテレビで見たけど・・・あれが自衛隊の検問じゃないの?」

健二がライトの赤さに少し疑問を持っているが、綾香の言葉にたしかにと頷く。


「・・け、検問?・・まてあのライトの色は・・」
後部座席で賀居が体を起こし赤く光るライトを見ながら辛そうな声をあげる。

「何かあんのか・・?」
賀居の声に反応した飛鳥がアクセルを踏むのをやめ、ゆるいブレーキをかける。



だんだんライトとの距離が近くなっていく。
するとうっすらとだが、人影が車のライトに映る。
影が動く気配はない。

「・・・?!」
賀居が目を凝らして人影を良く見ると、みるみるうちに表情が青ざめていく。


「車をUターンさせて・・・に、にげるんだ」

「・・なんで?」
賀居が飛鳥に苦しそうな声で言い放つ。
まだ飛鳥には現状がわかっていなかった。


「は、はやくにげろ!!」
賀居の声が車内中に響くと、検問のライトにあまりに大きすぎる人影が見えた。







「ア”!ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア!!」











そこに居たのは人間にしては大きすぎる腕足胸部が異常に肥大化した化け物だった。

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