kirekoの末路

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シナリオ【絶句】-2

2005年12月28日 20時19分13秒 | バイオハザード・OB・FILE『K』完結
AM1時32分 国道463号線 自衛隊検問

暗闇があたりを包み、空に浮かぶ月でさえ怪しげな雲に隠れ始めた。
そんな中、唯一の脱出経路を進む一台の黒いワゴンであったが
眼前に広がるのは妙に赤い光りを放ちながら回転するライト
検問らしきバリケードが幾つか見え、封鎖用のブロックが積み上げられている
そしてその前に立っていたのは、あたりに響く咆哮を撒き散らす化け物だった。

キューーィッ!キキ!

化け物の咆哮を聞いた瞬間、運転手の飛鳥は思わずブレーキを踏んでしまう。

「な、なんだよあれ!?」
「・・・早く逃げろ!!」
今までの出来事で多少の恐怖には抗体が出来ていた飛鳥達にも
目の前の余りに肥大化し人間の形をした化け物を見た瞬間、
二度とあってほしくない恐怖。その感覚をついぞ呼び覚ましてしまったのだ。


「オ゛ア"ア”―――――――ッ!!!」

再び化け物が咆哮をあげ、その大きすぎる腕らしき物を振り回すと
何か大きな物体がワゴンの手前の道路に、ドガンと鈍く大きな音を立てて
落ちてくる。

恐る恐る助手席にいた恵が、その物体を見ると
どうやら事切れてはいるが人間らしい。
迷彩服姿である事から、自衛隊の隊員だろうと思われる。
その男の肩には抉ったような大きな傷跡と何か鋭利なもので刺した傷が数箇所見える。しかしおびただしい血が迷彩服のあらゆる場所からこぼれている。
着地した拍子に道路の横へカラカラと音を立てながら隊員が被っていた緑色のヘルメットが転がっている。
手足はありえない方向へ曲がり、首はひしゃげて、顔は道路を引きずったように赤い血の跡を残し道路を下に向いている。


「・・・!」
「と、とにかく道を戻るぜ!」
余りの恐怖に言葉をなくした恵を横目に、ハンドルを思いっきりきって
アクセルを踏む飛鳥。

キュルキュルキュル!

その場でスピンするような動きをしながら後輪タイヤがすれる音を出し
排気口から白い煙を上げながらワゴンが物凄い勢いでUターンする。

「うおっ!」
「キャッ」
ワゴンの車内が急激にゆれ、同時に座ってる健二達の体も揺れ動く。

「・・・うっ!」
最後部の座席に居た賀居が車内の揺れでその場に倒れる。

「ぐっ・・おい飛鳥!もう少しゆっくり曲がれんのか!患者の傷に響くだろうが!」
とっさに倒れた賀居を支えると、運転席に向かって尾山が声をあげる。

「そ、それどころじゃねえっての!」
飛鳥がバックミラーを気にしつつ、向きの変わったワゴンのアクセルを思いっきり踏み、助手席の恵は助手席のバックミラーから化け物が動いているかどうか
しきりに見ている。

「・・・くそっ、ここにもか」
後部座席に居た五郎が、再び銃を組み立て始める。
その表情にさっきまでの余裕はない。


暗闇の国道を逆走するワゴン。
すでに検問から数百メートルは離れた場所に来たようだ。


ブゥゥゥン…

その時、後方からエンジン音と思われる爆音がワゴンの後方から迫ってくる。


「おい、あれは・・!?」
音に気づいた恵が、見続けていたミラー恵を見つめ、異変に気づく。


光だ、後方から二つの目のような光り方から車のライトと見受けられる。
だが後方からという事は、今まであのデカイ化け物が居た場所から来たと
言う事になる。


「まさか生存者が?」
後部座席から恵の声に気づいた健二が後ろを見て、迫るライトに気づく。
誰もが健二の推測を信じたいところだったが、目の前に起こる現実は
全員の願いを突き放すような結果でしかなかった。


「ア”ァ!マ”デァ!!」


闇夜に響く恐ろしい化け物の咆哮と共に、後ろからワゴンに迫るその車の全容が見える。

壊れたフロントガラスとへこんだボンネット、白と黒のラインと壊れた赤いパトランプから車種はパトカーと見える。その上にはさっきの化け物が悠然と乗っていているのだ。

化け物のその巨大な体が街灯に照らされ、
まるで点滅するように浮き出ては消えてゆく。
その光景はワゴンの九人を再び恐怖の坩堝へと落とすのに
それほど時間はかからなかった。


「え?!あれなんなのよー!」
「な、なんで追ってくるんだよー!」
健二と恵の異変に気づいた智弘と貴美子が化け物の存在に気づき、
パニック状態へ陥ってしまう。



「オ”ァア”ア”ア”ア”!!」

ワゴンと少しずつ距離を狭めるパトカーから再び化け物が咆哮をあげる!
化け物の胸からは何かぷらぷらと触手が下に出て伸びており、触手は
フロントガラスの中にある何かに刺さっているようだった。


ワゴンとの距離は、もう100mもない。


「お、おいスピードをあげろ!追いつかれてしまうぞ!」
尾山が後方から迫るパトカーを見て
少し動揺するように飛鳥に向けて言い放つ。

「んなこといったって!これが精一杯だよ!」
飛鳥の悲痛な叫びがワゴン中に響き渡る。
いつにもない必死さが表情を包む、額にはうっすらと汗が浮かんでいる。


ワゴンとパトカーの距離はもう50mを切り、化け物の全容が浮かんでくる。


「ご、五郎・・あれは!!」
尾山がパトカーの上に乗っている化け物を見ると、血相を変えて
五郎を呼びながら、パトカーのほうへ指を向ける。

「・・・そんな、ばかな!?」
五郎も尾山の指差した方向を見て、再び青ざめる。



――そこに居たのは自分達が交番で倒したはずの五郎の先輩だったからだ――



「・・・あの時倒したはずなのに、なぜ!?」

「まさかあの時のカーボレーン酸が化け物の遺伝子となんらかの結合を・・?」
五郎の信じられないと言った顔がさらに車内の恐怖を煽る。
何か考え事をしているのか、尾山はブツブツと親指の爪を噛みながら
口を動かしている。

「おい、もう後ろにいるぞ!」
助手席の恵がバックミラーを確認すると、もうすでに化け物のパトカーが
化け物の手の届く範囲まで近づいている。

「くっそおおおおお!」
必死でアクセルを踏む飛鳥だったが、メーターは速度の限界を示していて
これ以上の速度は出ない。


「ニ”グゥ!ェ!!イ”イ”イ”イ!!」


ブゥン!!ガシャーーン!


「うおっ!」
恐ろしい咆哮と共に化け物の肥大化した手がワゴンの後部座席横の車体を
思いっきり叩く!!
横にあった窓ガラスがばらばらに割れて、頑丈な車体が
まるでゼリーのようにグシャッとひしゃげる。

ワゴンがひとたびグワンと揺れると、化け物は少しバランスを崩したように
後方へ下がる。

「この・・・化け物め!」
恐ろしい勢いで飛び落ちるガラスを避けるように、
尾山が白衣を盾にガラスの破片をさえぎる。


「・・・ぐっ・・こんなときに・・」
賀居が傷ついた腹部を再び押さえ始める。
今の衝撃で傷が開いてしまったのか、苦悶の表情を浮かべる。


「尾山さん!賀居さんをこっちへ!」
周りの人間が慌てている中、賀居の苦しみようを見た綾香が声をあげる。

「そ、そうだな」
綾香に言われたとおり、前のシートを倒し
苦しんでいる賀居を前の座席へと滑らすように移動させる。


その時、また化け物のパトカーが近づき、後部のドアに一撃を加える。


ブゥン!ズガァァン!ガシャン!


「ぐっ!」
殴りつけられた衝撃でバックドアのガラスが吹き飛ぶと、
かがむように避ける五郎と尾山。

カチャン・・・

「くそっ!」
五郎が銃を構え、ガラスが無くなったバックドアのへりに銃を置き安定させ
化け物に向けてフルオート射撃をする!


ズガガガガッ!ガガガッ!


「アア”ア・・・アアアアア!!!」


弾は化け物の頭から右胸にかけて当たるが、まったく利いている様子がない。

のけぞることなく、さらに近づいてくるパトカーから、
また一発バックドアめがけて化け物の手が飛んでくる。


ズガン!ズガッ!ガランガランガラン・・・


恐ろしい破壊力に耐え切れなかったのか
えぐれるようにバックドアが外の道路へと吹き飛ぶ。
車内に外の空気が勢い良く飛びこんでくると
五郎が再びマガジンを取替え、銃を放つ!

ドガガッドガガガガッ!!

「くそっ!なんて奴だ!」
しかし、何処に当てても、化け物には傷一つつけられず利いていない。

「も、もう一回こられたらやばいぜ!」
運転席で飛鳥が悲鳴にも似た声を上げる。
たしかに車体全体が衝撃のせいで微妙な揺れを起こしている。
次の一撃でエンジンがストップしてしまうかもしれない。

「尾山さん!さっきアイツを倒したとか言ってたけど!何かあいつを止めれる方法ないの!?」
痺れを切らした綾香が後部座席に体ごと移動する。

「利くかどうか・・・わからんが」
尾山はジュラルミンケースを開けると一つ液体が入ったガラス瓶を出す。

「これは・・?」
綾香が尾山からガラス瓶をもらうと、その瞬間
また後方からパトカーと化け物が追いついてくる。

「い、いいからなげろ!」

「わかったわ!」
尾山の声が聞こえるや否や、化け物めがけて
ビンを投げる綾香。

ガツッガシャン!・・・シュー

ビンは化け物の胸部分に当たり妙な煙を上げている。

「ギャアアアアオォアオオオアオオオオ”!!!」

化け物の叫びと共に、少しづつ化け物が乗ったパトカーの速度が下がっていく。


シュルシュル!

だがその時、化け物の胸から触手のような何かがワゴン車内に進入するように
こちらに向かってくる。


「な、なに!?」

「!」

ガンッ!

綾香が触手に気づくと、それを見た五郎が銃のグリップ部分で触手を思いっきり叩いた。

触手は進行速度を弱めたが、まだ一本の触手が近づいてくる。

シュルシュル・・


「智弘!バーナーこっちに頂戴!」

「あ、あいよう」
綾香の声と共に智弘が持っていたバーナーを綾香に手渡す。


シュルシュル!

鋭利な刃物のようにとがった触手が綾香の眼前めがけて飛んでくる。


「こんのぉぉぉおおお!」
綾香が迫り来る触手に向けてバーナーを放つ!


カチッ・・・ボォォォォォォ!


800度を超えるバーナーの炎が触手を焼き払い
まるで導火線のように化け物の方向へ炎を進め
焼き焦げた触手は道路にボタボタと力なく落ちてゆく。


「や、やったわ!」
綾香が歓喜の表情を浮かべると減速を続けていた化け物のパトカーが
後方で炎上する。



バチバチ・・バチバチ・・


音を立てて闇夜に消えるパトカーを見て
五郎と尾山以外の全員が安堵の表情を浮かべる。




「やった・・んですかね」

「あれで終わったとは思えんが・・・」





五郎と尾山の言葉と怪訝そうな表情が車内の歓喜の声に紛れた。

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2 コメント

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更新期待っす!! (TROLL)
2009-09-30 22:08:26
バイオハザード・OB・FILE『K』~Nightmare without end~は、もう更新されないということでしょうか???
返信する
うーん (kireko)
2009-10-05 12:22:07
ただいま多忙のため無期限更新停止中なので、気が向いたら更新しようかなと思ってます。
返信する

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