おはなしきっき堂

引越ししてきました。
お話を中心にのせてます。

ほくろクラブ株式会社18≪修学旅行だ!その3≫

2009年03月06日 | ほくろクラブ
僕は夢を見ていた。
やまさんがお父さんと会おうとしてた時、いきなりズンズンとボスがやってきて
「あんたたち、何をしているのよ!先生にいいつけるわよ!」
わーーーっ!と思ったとき目が覚めた。
目をあけると横に寝ていたやまさんは座っていた。
もしかしすると眠れなかったのかな・・・。

「おはよう、やまさん」と僕が言うと
「うん、ウッチーおはよう。なんだか緊張して眠れなかったよ」とやまさん。

やっぱり・・・でも、僕も緊張しているのかもしれない。
だっていつもは起こされるまでおきないんだもん。
テンちゃんも起きていた。
「おはよう、いよいよだな」とテンちゃんがガッツポーズをした。
「そうだな!作戦実行だ!」と僕とやまさんもガッツポーズを返した。

・・・みずっちはと言うと・・・。
グーグーといびきをかいてまだ寝ていた・・・。

皆が起きて朝食を食べて、ホテルの周りを散策した。
僕のうちはこんな旅行なんてめったに来ない。
お父さんもお母さんも働いているから忙しいんだ。
でも、いつか家族で旅行が出来たら楽しいだろうな。
いつか・・・いつか・・・。

ホテルの人にお礼を言っていよいよチボリ公園に出発。
予定では着いたらお昼を食べて後は公園内を自由行動になる。
1時30分に多目的広場でやまさんのお父さんに会う。
ばれないようにしないと行けない。特に夢に出てきたボスには要注意だ。
何かと言うと僕らの行動に口出しをする。

僕ら4人はは黙ってバスに乗って、ついてもあまり騒がず、ご飯も黙って食べた。
赤城先生に
「お前たちがやけに静かだな。なんだ、けんかでもしたのか?」と言ってかえって怪しまれた。
大失敗!!!
「僕らはいっつも仲良しです!ちょっとよく寝れなかったので眠いんです!」といびきをかいて寝てたみずっちが言い訳をした。
僕らも「そうです!そうです!」と僕らもうなずいて作り笑いをした。
「お前ら、さては話ばっかりしてて寝なかったんだな!」と赤城先生はげんこつを作って笑った。

ほ・・・っ。
こればっかりは赤城先生に言えないや。
僕らはその後、急いでご飯を食べた。
先生の注意があり、自由行動になった。
僕らの向かうところは「多目的広場」
園内の地図を見ながら探す。
時刻はもうすぐ1時半。
他の学校の皆はアトラクションやジェットコースター、土産物屋に一直線だ。
僕らだけ違う方向に向かう。

やまさんはきょろきょろしてお父さんを探す。
一本の木の下に背の高いがっちりした男の人が手を振っていた。
「お父さん!」
やまさんが走っていった。
あれがやまさんのお父さんなんだ。
やまさんも背が高くて大きいけどやまさんのお父さんも大きい。
きっとやまさんはお父さんに似たんだな。

やまさんとやまさんのお父さんはベンチに腰掛けた。
あとの僕ら3人はそのベンチの裏側にやまさんとやまさんのお父さんを囲むようにして座った。

「元気そうだな透。それにこんなに背が伸びて・・・。もうお父さんと変わらないじゃないか。沙織とお母さんも元気か?」やまさんのお父さんが言った。
「うん、僕も沙織も元気だよ。でも、お母さんはちょっと疲れているみたい。最近は夜勤が多いしすごく痩せたような気がする」やまさんは下を向いてお父さんの顔を見ないで言った。
やまさんの言葉に僕は自分のお母さんのことを思った。
僕のお母さんもいつもため息をついて、いつも疲れている。
「そうか・・・。お母さんは頑張っているんだな」やまさんのお父さんは遠くを見た。
「・・・ねえ、お父さん。なんでうちを出て行ったの?」やまさんは顔をあげてお父さんを見た。
「・・・」
やまさんのお父さんはしばらく黙っていた。
そしてやまさんの方を向いて話はじめた。
「透はもう6年生だから、少しはわかるかもしれない。お父さんは透が1年生の時に会社を解雇された。すぐに仕事を見つけようとしたけどなかなか見つからなかったんだ。看護士だったお母さんはその時まで短い時間で働いていたんだけど、お父さんの失業のためにフルタイムで働き始めた。夜勤もその頃からするようになった。当然家のことはそれまでお母さんがしていたからめちゃくちゃになった。そのとき、お父さんは自分が働いてないのに何もしなかった。それどころか家事をしないお母さんをなじったんだ。段々、それでうまくいかなくなってね。お母さんが『何もしないなら出ていって!』と言った事にすごく腹が立って本当に出て行ってしまったんだ・・・。倉敷に知り合いがいてね、お父さんを雇ってくれると言ったのでこちらに住むようになって、お母さんとも正式に離婚したんだよ。すべてはお父さんが悪いんだ」

しばらく、二人とも黙ったままだった。
やまさんが、口を開いた。
「お父さん、オムライス作れる?」
やまさんのお父さんはちょっときょとんとしたけど
「ああ、最近うまく作れるようになったよ。一人暮らしだからね。それまで家事はお母さんに任せっぱなしだったけど、自分でなんでも作るようになったんだ。最初はすごく失敗ばかりだったけどね。オムライスも得意だよ」
「僕も得意なんだよ。お母さんと沙織に食べさせてあげるんだ」
「そうか、偉いな透は・・・。お父さんもお父さんの作ったオムライスを皆に食べさせてやりたいよ」

二人とも再び黙った。
僕はちょっと悲しくなった。僕もオムライスを練習してお母さんやお父さんに食べさせてあげたいな・・・。

「そろそろ行かないと」とやまさんのお父さんが言った。
やまさんは名残惜しそうだったけど。でもこれ以上いるときっと誰かに見つかってしまう。
やまさんのお父さんは僕たちに公園内で売っているキャラメルをひとつずつくれて、僕ら一人一人と握手した。
そして「ありがとう。いつまでも透と仲良くして下さいね」と言って立ち去っていった。
その後姿にやまさんが
「お父さん!多分、お母さんは『出て行って!』と言った事後悔していると思う!」と叫んだ。
やまさんのお父さんは後ろを向いたまま手をぐいっと顔に当てそのあとやはい後ろを向いたまま僕らに手を振った。
やまさんは泣いてなかったのに僕は少し涙が出た。

僕らは切ない気持ちになりやまさんのお父さんを見送っていた。
そのときだった。
「あっ!内田君たちこんなところで何してるの!」
!ボスとその取り巻きたちだ!や・・・やばい。
僕はあわてて涙をぬぐった。

「ウッチーがさぁ。ちょっと足いたいって言うから休んでたんだ」とテンちゃんがあわてていった。
「ふーん、内田君、なんだか泣いてるようじゃない。よっぽど痛いんだね。赤城先生呼ぼうか?」
「だ・・・大丈夫。もうかなり痛くなくなったから・・・そ・・・それに泣いてないよ」僕もあわてていった。
「そう、私たちは結構いっぱい乗って、今からお土産買いに行くんだけど、内田君たちも急がないとあまり時間ないよ。じゃあね」
とボスたち一行はみやげ物の方が関心があるみたいでそのまま立ち去っていった。

僕らは顔を見合わせた。
「よかった、作戦大成功♪」とガッツポーズをした。
みずっちが
「僕らも何かひとつでも乗ろうよ!」と言った。
「OK!ジェットコースターだ!」
僕らは駆け出した!

ジェットコースターで皆ギャーギャー言った。
特にやまさんがいつもになく騒いでいた。
僕もテンちゃんもみずっちも大声をいっぱい上げた。
やまさんが
「おとうさーーん!」って言ったような気がした。
少し泣いているようだった。
でも、ジェットコースターのスピードで涙も飛んでいってしまった。

ジェットコースターを降りるともう集合の時間になってしまった。
僕らはとっても疲れていた。
帰りのバスの中では皆ぐっすり寝てしまった。

僕は夢の中でオムライスを作る夢を見た。
でっかいでっかいオムライス。
僕とお父さんとお母さん3人で食べきれないほどの。
ふふ・・・こんなでかいフライパン僕の家にあったかな・・・。

そうして、僕たちの修学旅行は終わった。
切ない思い出とともに。

家で僕の帰りを待っていたお母さんが言った。
「楽しかった?」
「うん、楽しかった」
ポケットからやまさんのお父さんにもらったキャラメルが出てきた。
一粒食べたら、またちょっと涙が出そうになった。
やまさんは今どう思っているんだろう。

その時だった。
「勇気!なんで体操服お母さんがたたんだままなの?!」

あれれ・・・ばれちゃった。
僕は皆で翌日に着る服を着て寝たことを言った。

「プッ!フフッ!」お母さんが吹き出した・。
僕もゲラゲラ笑った・・・。



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