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おはなしきっき堂

引越ししてきました。
お話を中心にのせてます。

茜色のお花畑 2 (ミエコさん)

2020年02月05日 | 茜色のお花畑


久しぶりに見かけたので買って来た。
おとーさんが好きらしいので。
姫路にある「まねきのえきそば」のカップ麺。
近畿地区限定販売のよう。

天ぷらもあるんだけど、売り切れだった。
今度見かけたら買ってみよう。

マスクが品切れの中、苦肉の策でガーゼで作ってみようかと思い立つ。

ガーゼ、ウイルスは通しちゃうらしいけど、花粉はどうなんだろう。
何もしないで原付で走るよりは、きっと少しはましだろう。

ただ、昨日ふと使い終わった「使い捨てマスク」を洗ってみた。
いけるんじゃないだろうか。
洗剤で洗ったので、ふんわりいい匂いまでついた。
除菌は出来ているのだろうか?と思い、一応除菌スプレーを吹きかけた。
この除菌スプレーも、後少しなんだな。
次は洗う時に、「ハイター(台所用漂白剤)」を薄めて浸したらどうかと思う。
「ハイター」はいろんな物に最強なので。
でも、においが残るかな・・・。

耳が痛いというのはネットで調べて解決した。


ゼムクリップを繋げて耳にかけず頭の後ろからかぶるようにする。
かなりまし。
私は小さいマスクで2個のゼムクリップでちょうどだった。
人によって個数を調整すればいい。

もう花粉も飛んでいるし、何より田んぼをバンバン焼いている。
この煙を吸い込んだら、アウト。
この再利用でも十分いけるようだ。

後20枚ちょっとあるので、なんとか2か月は持ちそうだ。
一旦、マスクの事は解決したけど一応ガーゼマスクも作ってみようと思う。
昨日、作るつもりだったけどいろいろと他の用事が入り、夕方には置き薬の入れ替えの営業の人が来たのでちょっと無理だった。
営業の人が、「どこに行ってもマスクないの?聞かれて困っています」と。

今日、広告が入っていたのでジャパンに行ったけどやっぱり見事なほど空っぽだった。
除菌スプレーもなかった。
花粉ブロック用のスプレーは売っていた。
買う?と思ったけど今日はやめた。
少し帰ってから効果を調べてからにしようかと。
でも、次買いに行ったらなかったら笑うよね。

さて、今日は「おはなし」の続きです。
(自己満足と自分自身の目標の為書いています。読み飛ばしてくださいね)

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【茜色のお花畑 2 (ミエコさん)】

私はそのタクミの「にやり」を見て嫌な予感がした。

「さてっと、手始めに家の中見せてくれる?」
とタクミは家にずんずん入ってきた。

「あっ、勝手に入らないでよ!」という私の言葉を無視しタクミは入ってきた。

台所を見て、リビングに入る。
「なんだ、これ!」

タクミが言ったのも無理はない。
部屋の中には、
所狭しと「人形」が置かれてあったから。

「なんか気味悪いな~。これあんたの趣味?」

「違う。全部ママのよ」

母は「ビスクドール」のコレクターだった。
アンティークではなく、お気に入りの日本人作家の作品を集めていた。



タクミが言う。
「そういえば、ここまでビラビラじゃないけどあんたの服もこの人形のような服だな」

私は改めて自分の恰好を見た。
これらは、母が買ってきたもので、実は自分で洋服を買った事がない。
なので母が亡くなってからは、洋服はおろか下着なども買わなかった。
それと母は、年初めに下着を買ってきていた。
なので、ここ数年その新品が残っていたので買い替える必要がなかった。

「あんた、その服もこの人形も好きなのか?」とタクミが言う。

私は、正直その時「初めて」自分の好きな物を考えた。
服は着れるだけで良かった。
趣味と言えば、パッチワーク。
お気に入りのパターンは、派手な物ではなく色味を抑えたシンプルな物。
「違うと思う」

人形も実は怖かった。
綺麗だし、かわいいとも思うけど。
子供の頃はぬいぐるみが好きだった。
でも、母がぬいぐるみはダニがつくからと買ってくれなかった。
母が亡くなった今は自分パッチワークで作るようになった。
それが、今一番楽しい。

そうタクミに言うと
「了解」
と言って、タクミは人形たちをスマホで写真に撮り始めた。

「そういえば、あんたスマホ持っている?」

「持っていないわ。だって必要ないってママが言うから」

「けっ、ママ、ママってあんたいくつだ。ただ、今から契約するにしても無職だからな。一旦働き始めてから契約しに行くか。よし、全部撮れた。これ以外もあるか?」

私は、少し戸惑ったが私と母との寝室だった部屋に案内した。
そこにもかなりの人形があったからだ。

そこの人形の写真も撮り終えたタクミは言った。

「まず、働くにしてもその恰好をなんとかしないとな。出かけるから用意して」と。

私は、何故タクミに従うのかよくわからなかったが、家にかぎをかけ外に出た。

家の前には古い軽自動車が止まっていた。

「乗って」と言われ素直に乗ってしまった。

運転しながらタクミが言う。
「今、写真撮った人形は全部『フリマ』に出すから。売れたら全部親父が作ったあんたの口座に入るようにする。そういえば、あんた今現金持ってる?」
「5000円ぐらいなら」と。

「仕方ないな~。じゃあちょっと寄ってからだな」

それからしばらく車を走らせてタクミはある一軒の家に寄った。

古い家だった。
でも、なんか懐かしいような気もした。

「ただいま~。母さんいる?」玄関先でタクミが言う。

「あら、おかえり」と言って出てきたのは、年の頃は40代後半の女性だった。

「連れてきた」とタクミが私を指さして言う。

「あら、アカネさんね。私はミエコ。あなたのお父さんと夫婦でした」

この人が、父と再婚した人か・・・と驚きながら見る。

タクミによく似てほっそりとした人だった。
そういえば、母もほっそりとしていた。
ただ、私自身は誰に似たのかずんぐりむっくりで、母がよくため息を漏らしていたものだ。
「アカネちゃんに、似合う服は難しいわ」と。

「さあ、あがって。そしてお父さんに会ってあげて」

私は「お邪魔します」と言って家の中に入った。

仏壇のある部屋に通された。
写真が飾ってあった。

「お父さんよ」とミエコさんが言う。

写真をよく見ると、その男性は「私」によく似ていた。
うちの家には父の写真が一枚もない。
初めて見る「父」だった。
「私がこの人と知り合った頃は、お姑さんは亡くなった後だったの。なんでも自分の思い通りにしないと気が済まない人だったそうよ。あなたのお母様は、かなり辛い思いをされたみたい。でも、この人はまったくお母様をかばわなかった。あなたを連れてこの家をお母様が出た時も、自分の母親の方が正しいと思っていたみたいね。でも、母親が亡くなってから気がついたそうなの。自分はものすごくひどい事をしたのじゃないかと。ずっと謝りたいと思っていたらしいけど、あなたのお母様はそういった謝罪もあなたに会う事も拒否したんだって。一旦ついた心の傷はなかなか癒えないものなよ」

ミエコさんはそう言って一旦言葉を切った。

「私と出会った頃のこのひとにアカネちゃんはなんだか似ているわ。自分の「意思」を心のどこかに隠しているような感じね」

私はミエコさんの言葉を聞きながらぼんやり考えていた。
父に似ていた私。父の写真の横に祖父母の写真があった。
父は祖母によく似ていた。
その二人に似ていた私を母はちゃんと愛していたのだろうか?
『なんでも思い通りにしないと気が済まない』姑に私を通して復讐をしていたのではないのだろうか。
そんな思いがふと心の中に沸き上がった。
私は、頭を振った。
いや、そんな事はない。
母はいつも「アカネちゃんが一番大事。アカネちゃんの為ならママはなんでも出来るわ」と言っていた。

「なあ、母さん。服ってそんなばっかりみたいだ」
タクミが言ったので我に返った。

「そうねぇ。確かにこれじゃあね。私の服はサイズが合わないようだし、今から買いに行こう!」
ミエコさんはそういうと、タクミに車を出すように言って、後ろの座席に私と一緒に座った。

「ねえ、アカネちゃんは自転車に乗れる?」

「いえ、乗れません。母が危ないというので」

実は、練習をしたことがあった。
祖父が、誕生日に子ども用の自転車を買ってくれて教えてくれようとしたのだ。
でも、何度か転んだ時に血相を変えた母が来て祖父を止めた。
「自転車なんて乗れなくても困らないし、乗らない方が安全よ!」と。

それから、祖父も教えてくれず結局、祖父が買ってくれた自転車は、雨風にさらされてゴミとなった。

「じゃあ、練習しなくちゃね」

ミエコさんは、嬉しそうに言った。

車を数分走らせたところに「ユニクロ」があった。
入るは初めてだ。

タクミとミエコさんはひそひそと相談して、私に言った。
「まず、動きやすい格好にしなくちゃね」

数着のパンツやトレーナーを出してきて、私に「選ばせた」
どれもデザインはシンプルなもので、試着するととても動きやすい。
私は、服を自分で「選ぶ」事を初めてした。
今まで、パッチワークの布などは自分で選んでいたが、たまに母からの横やりが入る事があった。
「地味すぎるわよ」と。
母が亡くなるまでこういった手芸店も一人では入らなかった。
亡くなってから数年、布がなくなったのでやっと一人で買いに行った。
今、一人で買い物に行くのは、スーパーといつも行く手芸店だけだ。

初めてが多すぎて混乱しそうだ。

会計をミエコさんが済ませた。
「これは私からのプレゼントよ」と。
他人からプレゼントをもらうのも初めてだった。

その後、その店の前にあった証明写真機で写真を撮るように言われて撮った。
ミエコさんが、少しお化粧をしてくれた。
お化粧をするのは、成人式の写真の時以来だ。
その時、母が言った言葉が思い出される。
「あら、アカネちゃんはお化粧があまり合わないようね」
その時の写真は、赤い唇と頬が、浮き立ちなんだかとても醜悪でもう2度と見たくない。
派手な振袖も滑稽だった。
出来上がった証明写真は、とても自然でいつもの顔色より良く見えた。
唇もうっすらとピンクでいつもの私の顔より少し上だった。
そういえば、あの成人式の日以来、自分の姿を鏡でうつすのが怖くなっていた。
さっき、試着した時に久しぶりに自分の全身を見た。
シンプルな服は思いのほか、いつもの服より顔色が良く見え体型もカバーしてくれていた。

再び車に乗った時にミエコさんが言った。
「さて、買った服に着替えてから、履歴書書いて面接に行きましょう」

なんともびっくりだ。

ミエコさんの知り合いの社長さんが経営している金属加工会社がパートを募集しているらしい。
そこに面接に行くのだと。
私は慌てて言った。

「む・・・無理です。何もした事ないし。」

心配しなくて大丈夫だとミエコさんは笑った。
なんでも、その社長さんは父とも昔からの知り合いらしい。
私も赤ん坊の時に会った事があるのだとか。

「あなたの家から少し離れているのよね。だからしばらくの間は、タクミが送り迎えするわ。でも、自転車だったら10分ぐらいだから今日から特訓ね」

ミエコさんはタクミと同じ笑顔でニヤリと笑った。


                          <つづく>

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アカネの母親は今でいう「毒親」なのか。
そしてアカネの父親の母親も。
そのあたりを書いていきたいと思っている。
いろいろな母親の視点から。

実は、うちのおとーさんの母親、私から見たら姑も、独身の頃のおとーさんの服は全部買ってきていた。
就職してからの給料の大半を、いろんな理由で母親が管理していて、おとーさんが自由に出来るお金と言うのは今の小遣いとあまり変わらず。
服もセンスがいいならまだ良かったんだけど、ちょっとズレていた。
会社の人にからかわれたことも多々あった。
そりゃあ、からかわれるレベルだったんだけど(スーツで上下の色が違うとか。下着にでっかい字で名前が書いてあるとか)、姑は「なんでそんな事言われないと駄目なのか」がまったくわからず怒っていた。

これを書き始めるとなかなか長くなるので、省略するけど今ごろやっと「親からの呪縛」がおとーさんはとけて、最近は結構恨みつらみを言っている。
ただ、わかるのは姑なりに(ここ大事)息子の事を思って自分の信念の元にやっていた事。
私自身、母親になり少し気持ちがわかる。
子どもを支配というより、いつまでも自分の「子ども」としておいておきたいという感情。
でも、いつか「かわいい我が子」も青年になり、おっさんになる。
どこで手を放していくか、そこが重要なんだろう。

逆に私にあまり手をかけなかった私の母。
幼いころは、田舎の祖母の家に預けられていた。

両極端な母親たち。
でも、今どちらも自分の子どもには愛情があるのだけはわかる。
なんとなく。

午前中は良く寝るコブちゃん。
このぐらい夜中も寝てくれたらいいんだけど・・・。



<追記>
作ってみた。

感想はこちらに。


茜色のお花畑 1(始まり)

2020年01月29日 | 茜色のお花畑

やっと前の家の解体工事が終わったと思ったら、先週は野焼きの煙と灰が飛んでいて洗濯物を外に干せず。
おまけに顔に吹き出物は出るし、なんだかイガイガする。
花粉の季節が始まりそうだと、今日ダイソーにマスクを買いに行った。
なんか、棚がスカスカ。
よく見ると残っているのは「小さいサイズ」ばかり。
でも、私はそれでいいので購入。

それにしても余波はこんな田舎まで来たのかと思うが、よくよく考えればこのあたりの企業は「外国人」を多く雇っている。
近くにある大学は留学生も多い。
中国からの方もかなり多くもしかすると買い占めて、祖国に送られているかもしれない。

さて、今日は「おはなし」です。
ショート・ショートにしようと思ったけど、どんどん構想が膨らんでかなり長くなりそう。
それで、今日は(其の一)という事で。
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【茜色のお花畑 1 (始まり)】


私、「アカネ」は今あの日の事を思い出している。

母がある日いなくなって3年たった頃だった。
私は32歳だった。
病気で亡くなったのだが「私」にとっては急にいなくなったように感じたのだ。
母は私にとって唯一の家族でそして友達であり知人であった。
亡くなる前に病床で母は言った。
「あなたがちゃんと困らないようにお金も残してあるし、私の亡くなった後の事はちゃんと手配してあるから」と。
確かに母が病院で息を引き取ったあとは、母に指示されたとおりに電話をかけ葬儀屋に来てもらい予め母が頼んでおいたのであろう家族だけ・・・ほぼ私だけでの葬儀が行われた。
唯一、ずっと交流がなかった母の叔父だと言う人だけは、かけつけてきてくれてその後の事を全部やってくれた。
これも母がどうやら頼んでおいたらしい。
そのオジサンが言った。
「さて、君は働いていなくもなくこれからどうするつもりだい?もう32歳だよね」と。

そう、私は働いた事がない。
私は
「ママがお金を残してくれているから大丈夫です」とオジサンに答えた。
オジサンは呆れた顔をして、立ち去って行った。
どうやらあまり姪である母とは仲が良くなかったようだ。

母は「あなたが困らないように」と言っていたが、3年たった今貯金はあと20万になった。
母は確かにお金をたくさん残しておいてくれた。
でも、3年という年月、母と暮らしていた頃のよう自分の好きな物を買い続け、食事は全部買ってきたもの・・・そして、一番金額が行ったのは「家」だった。
家は、祖父からの持ち家だった。
相続税などの事も母が仕訳けてくれていたのだが、きっと母は「その後」の事は考えなかったのだろう。
昨年、大きな台風が来て修理が必要となった。
どうしたらいいのかわからなかった時に、飛び込みで業者がやってきた。
築年数が古い家なので、あちこち修理する必要があると言っていた。
びっくりするほどの金額を請求された。
後で知ったが、その業者は良くなかったらしい、結局直ってなかったところがあり、別の業者に来てもらうことになった。
それで、かなりのお金がなくなってしまった。
でも、まだまだあると思っていた。

だから、好きな物を買い続けた。
働くというのは私の頭にはなかった。
だって、母が働かなくていいと言ったから。

私は極端に人付き合いが苦手で、友達がいない。
人が言うには「空気が読めない」らしい。
勉強は得意ではなく、運動も出来ない。
唯一の趣味は、キルト・パッチワークをする事。
これは、祖母が教えてくれた。
高校を卒業するとき、母が言った。
「アカネちゃんは働かなくていいわ。ママが働くから」

母は、私が3歳の時に父と離婚して実家に帰っていた。
私と違い勉強が出来た母は大学の非常勤講師をしていた。
収入はあまりなかったが、祖父の家で暮らし家賃もいらなくて、また祖父母がそこそこお金を持っていたらしく、裕福な暮らしだった。
祖父が亡くなるまでは一流企業の重役だった祖父の年金や貯金が結構あり、母自身もそこまで働かなくて良かった。
母もまた苦労知らずの人だった。
だから、人がずっと生きていくためにどのぐらいのお金がいるのかわからなかったのだろう。

自分の欲しい物はすべて買い、また私にも与えてくれた。
私の好きな少女漫画などは母がすべて発売日に買ってきてくれた。
私はそれが普通だと思っていた。
だから、学校での会話がかみ合ってなかった。
高校入学した頃の事だった。
教室で1人の同級生の女の子が
「今日発売のバッグ付きの雑誌欲しいんだけど、今月お小遣いピンチなのよね。」と言った。
私は不思議に思っていった。
「ママに買ってきてもらえばいいのに」

シーンとなった。
その子は、顔を奇妙に歪まして言った。
「あんたおかしいわ」と。
周りでクスクス言う笑い声も聞こえた。
「ママが買ってきてくれるからだって」
「ママー、ママー」

私たちは親子というより姉妹と言った方がいい関係だった。
全部学校であった事を話した。
母は憤って言ったものだ。
「そんな、いじめる子たちと無理して付き合わなくていいのよ。」と。
小学校の頃からそうだった。
母は、学校に苦情・・・今考えるとクレームを言いに行った。
私はその時までもクラスでかなり浮いていたけど、いない存在になり3年間を過ごすことになった。
高校生にもなるとみんな成長をして、いじめるより無視をする方が効率がいいようだ。
友達はとうとう出来なかった。
でも、帰ると「ママ」がいたので、別に気にならなかった。

今、振り返ると確かにおかしい。
でも、母と祖父母だけの「家族」というくくりの中で私の感覚は一般とずれていた。
それでも、祖母だけは私に世間の常識を教えようとしてれてたし、料理なども教えてくれようとした。
この頃の家事全般は祖母がしてくれていた。
ただ、料理は私が包丁を持つ事を母が激しく拒んだため(けがをしたらという事らしい)出来ない。
掃除と洗濯は祖母が教えてくれたので今なんとかなっている。
キルトは母が針やミシンが危ないと言ったが、祖母がなんとか説得してくれて私の「趣味」として母が「許してくれた」
その祖母も祖父が数年前に亡くなり、後を追うように亡くなった。
そして、祖母が亡くなった3年後に母が・・・。

あと通帳の金額が20万となった時にさすがの私もこのままでは駄目かもしれないと思った。
でも、今更どうすればいいのかわからない。
働くにしても私に一体何が出来るのだろう。
相談する相手もいない。
ぼんやりと考え、でもそういえばこの前見た布で欲しいのがあったなと思い出し、買いに行くことにした。
欲しい物は欲しい。

母は良く言っていた。
「アカネちゃんが私のすべてなの。いつもアカネちゃんの事を一番に思っているわ」と。
それならば、私がこうなるのがわからなかったのだろうか。

立ち上がった時にインターホンが鳴った。
出てみると若い男性が立っていた。

「どなたですか?」と。
するとインターホンから返って来たのは
「あなたの弟です」

目が飛び出そうなぐらいびっくりした。
開けようかどうか迷ったが、カメラ越しにとても線の細い男性の姿が見え恐る恐るドアを開けた。

「どういった事ですか?」と問うと
「あなたのお祖母さんから手紙を預かっています」と1通の封筒を差し出した。
「アカネちゃんへ」と書いてある筆跡は確かに祖母の手に似ている。

とりあえず男性を玄関に招き入れその場で手紙を開けた。

『アカネちゃんへ。
この手紙は、あなたのお母さんがもし万が一亡くなった時にあなたが一人になってしまうのを心配してあなたのお父さんに託しました。
実は、あなたの事をずっと心配されていてたまに連絡を取り合っていました。
あなたは、ずっとひどい父親だと聞かされていたでしょう。
確かに若かった時は未熟な事もあったかもしれませんが、それはあなたのお母さんにも言えることで、原因はお母さんにもかなりありました。
こちらに帰ってきてからのあの子は、あなたに固執し私から見ても歪んだ育て方をしていました。
でも、その事を言うとあの子がパニックになり手が付けられなくなり、そのままにしてしまった事をあなたに謝らないといけない。
私はいずれあなたが一人になってしまう事をずっと心配しています。
見ていると友達もなく、学校から帰ってくると母親とべったり。
このままではいけないと思いあなたのお父さんにアカネが一人になった時に手助けをしてやってほしいと頼むことにしました。
私も親族がいなくまたお祖父さんの親族とは疎遠です。
あなたが唯一頼れるのは実の父親だと思います。
あなたを守ってやれなかったお祖母さんを許してください。
そうそう、あなたには「タクミ」君という弟がいます。お母さんと分かれてお父さんが再婚して出来た子供さんです。祖母より』

読んであっけにとられている私に若い男性は言った。

「俺はタクミっていう。親父があんたのお母さんと離婚して、その後に再婚して出来た子だ。今、大学生だ。親父からこの手紙を預かった。この手紙の後の数年後からあんたのお祖母さんに連絡が取れなくなったと言っていた。その後にあんたのお袋さんが亡くなったと聞いたらしいが、親父はその頃から病気になって連絡が出来なくなった。親父も病の末にとうとうこの春になくなったんだ。あんたに残したお金と一緒に持ってきた」

私は「タクミ」から私名義の通帳と印鑑を受け取った。
そこには、そこそこの額の金額が入っていた。
「あんたの母親が養育費を受け取らなかったからずっと貯めていたらしい。」

私は正直少しほっとした。
何故ならお金がなくなりそうだと思っていたところだったから、父親が亡くなったと聞いたのに何故か笑みが浮かんだ。
私にとって父親とはいない存在だったから。
するとその途端にタクミの顔色がかわり、手が伸びて私が持っていた通帳を取り上げた。

「おっと!親父の心配していた通りだな。あんたこれ持っていても多分すぐに使ってしまう。俺は親父に頼まれたんだ。あんたを助けてやってほしいって」

そういって「タクミ」はにやりと笑った。

                                     <つづく>

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続くんです(笑)
最初、前編と後編にしようと思ったんだけど、それじゃあおさまりがつかなくなって。
更新日は、水曜日にしようかと。
早く書けたら次に更新するけど、まあゆっくりと。
今度は未完で終わらないようにしようと。

次は、働きに出ます。
どこに働きに出そうかと思っていたんだけど、自分がいた環境がいいかと。
最初はコンビニにしようかと思ったけど、コンビニって知らない分野。
電気量販店の社員だったけど、そこでこの「アカネ」は無理。
で、前の会社のようなところに。

この話は、いろいろとごっちゃになって出来た話。

主人公を女性にしたのは、姪が一人っ子で旦那さんのお姉さん(かなり年上)の方には子どもが居ず、将来親族として頼る人が、かなりいない事をずっと心配しているので。
親族はうちだけだ。
うちの息子には、いずれ姪が困った事があったら力をかすんだよとは言っているけど。
ただ、この主人公は姪をモデルにしたのではなく自分自身の事もそうだし、知人や先輩、妹や姪や自分の家族の事も合わせている。

長くの自分のテーマでもある生涯で必要なもの。
お金もそうだけど、人付き合いもそう。

この「アカネ」32歳で「人」や「家族」そして「働く」という事について考える。

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「葉村晶」のシリーズの


を読み終えた。
やっぱり作を重ねていくうちに読みごたえがあり、面白い。