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世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

5.祭り会場

2018年08月02日 | 夏の物語
 祭り会場に着いたのはいいが、人が多くて、ヨシオと途中ではぐれてしまった。
 先にヨウコを探しているのかもしれない。
 【ここから先祭り会場入り口】という看板を通り、中に入ると、当たりくじや焼きそばなど屋台がずらっと並んでいて、プーンとたこ焼きのソースの焦げた匂いがしてきた。
 ドーンドーンと海に近い奥の方で、花火が上がっている。
 真下で見る花火は、迫力があり、綺麗だった。
 ボーと夜空に咲く花火を見ていると、「あれっ?サトル君じゃない?」と後ろで声がして、振り返ると、花火の刺繍がしてある青い浴衣を着たヨウコだった。髪はツインテールで結んでいる。その姿は、今上がっている花火よりも美しすぎて、唾を飲み込んだ。
 プールで話していた事を思い出して、ドギマギした。
 「今来たの?もう花火終わりそうだよ。」ヨウコがふと、上っている花火を見た。大きな目の中に綺麗な花火が浮かんだ。神秘的で幻想的な花火だった。花火よりもヨウコとあった事が奇跡でびっくりした。
 「プールで泳いで来たから遅くなって、そー言えばヨシオ見なかった?」
 「ヨシオ君も来てるの?今日は、見てないなー。」というと、綿あめを手に持っている女友達から呼ばれて、「もう行くよー。」と言って、先に行っている。
 「じゃーまた、登校日でね。」バイバイと小さく手を振って、後ろを振り返った。浴衣の帯にさしてある祭と書いてある団扇が見えた。
 何か言わなくちゃならない事がたくさんあったような気持ちだったが、まずヨシオを探さなくてはならない。
 屋台を通り過ぎて、砂浜があり、みんな夜空の花火を見ていた。
 最後の大きな花火がドーーンと上がり、パチパチパチと火が目の前まで迫ってくる。
 それが終わると、一呼吸置いたスタッフが「皆様、本日は暑い中お越しくださいましてありがとうございました。お気をつけてお帰り下さい。」とまた、スピーカーから流れてきた。出口の方に一気に人が歩き始める。
 仕方なくサトルも出口へと向かう。
 ふと焼きそば屋台の隣の石段を見ると、ヨシオが半袖を腕まくりして、呑気に焼きそばを食っている。
 「ヨシオどこに行ってたんだ!!」
 「ちょっと腹が減っちゃってさ。」焼きそばを一口食べた。
 「お前、焼きそばなんか食ってる場合じゃないぞ。」
 「何がだよ。」
 「いや、花火も終わったし、ヨウコもいたんだぞ。何やってるんだ。告白するんじゃなかったのか?」
 「そうだった。今ヨウコはどこだ?」焼きそばを全部口に入れた。
 「知らないよ。女友達と帰ってるんじゃないか。」
 「よし、どっちが先にヨウコを探すか競争だ!!」思い出したかのように大声で言った。
 「そればっかりだな。」サトルが突っ込んだ。
 
 

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