夕日が綺麗な海に沈んでいく。見ていると悲しかった事や辛かった事が夕日と共に沈んで行くように忘れていく。
私が海の砂浜を歩いていると、おばぁさんが鳥に餌をあげていた。おばぁさんの周りを海鳥達が囲んでいた。
鳥達が囲んでいるおばぁさんがチラッと若く見えた。目をこすって見たら年寄りの姿に戻っていた。海の光で若く見えたのかもしれない。
カモメや鳩が餌を取りに来ていた。三十羽くらいいた。もっといたか . . . 本文を読む
夜になると冷たい風が吹いている。遠くから鈴虫が鳴いているのが聞こえてきた。鈴虫の鳴き声が夏の終わりを告げているかのように寂しく聞こえた。夏が終わるかと思うとせつなくなる。
夜の空を真ん丸い月が照らしていた。
近くにある銭湯から帰っているヒロシとリョウコは、肩を並べて歩いていた。ヒロシはタオルを頭に乗せていた。
リョウコと付き合ってもう長い。かれこれ三年くらい経った。お互い結婚を意識する歳な . . . 本文を読む
最近八年同棲していた彼女が出て行った。
この前、泣きながらケンカをしたのが原因だろうか。まさか出て行くとは思いもしなかった。
そういえば、いつも仕事から帰ってきたら彼女の姿があった。笑顔でお帰りと迎えてくれる彼女が好きだった事が改めて分かった。
いなくなって初めて寂しさや孤独を感じた。世界にただ一人取り残されたような感じがした。心にポッカリと穴が空いたようだった。
なぜ彼女は帰ってこない . . . 本文を読む
部屋の掃除をしていると、押入れの奥の方から綺麗なビー玉がコロコロと転がって出てきた。ビー玉を見ていると、お嬢様といわれていた女の子を思い出した。
私が小学三年生の頃、近くの公園で男友達三人と野球をしていた。野球とはいっても、ピッチャーとキャッチャーとバッターで分かれて遊んでいた。
私が打席に立って、おもいっきりバットを振ったら、ボールにあたり、大きな塀を越えて家の中へと入っていった。みんなは . . . 本文を読む
今日、高校の頃の女の友達から久しぶりに電話がかかってきた。
「元気?」明るい声に私も元気が出た。女の子から久しぶりに電話がかかって来たので、うれしかった。
この彼女は、高校の頃よく遊んでいた唯一の女友達だった。
彼女はAクラスの学級委員で私はBクラスの学級委員だった。学級委員の集会があって、知り合ったのだ。
その時に、彼女と目と目が合って、話してみて気があった。
好きとか嫌いとかじゃな . . . 本文を読む
毎日、子供が泣いている。朝から晩まで泣いている。何をそんなに泣いているの。私が泣きたくなった。
旦那は、会社へ行っていつも家にいない。家に帰ってきたらきたで「メシ、フロ、ネル」の言葉しか言わない。
休みの日は、会社の上司の接待役。ゴルフや飲み会に行っている。私を構ってくれない。いつ構ってくれるの。セックスは、三ヶ月していない。時々、家族を捨てて逃げたくなる時がある。
一人ボンヤリと洗濯物を . . . 本文を読む
季節はすっかり秋。イチョウの並木道を散歩するのが日課になっていた。真っ直ぐな道なりに黄色のイチョウの木がずらっと並んでいる。
走っているおじさん。イチョウの葉っぱをかき集めている少年。手をつないでいるカップル。セーラー服の女学生。
その中を私は、静かに歩いていた。イチョウの葉っぱを数えるように。秋だなと呟いた時に、見慣れた女性が前から歩いて来た。赤いコートを羽織った女性は、並木道で一番目立っ . . . 本文を読む
夏が来るたびに思い出す。照りつける太陽。蝉の鳴き声。空いっぱいに広がる入道雲。プール開き。
今日は金曜日。中村先生が来る日。すごく楽しみで、化粧をして、めいいっぱいお洒落に気を使った。中村先生は、塾の先生で、将来本当の教師を目指すために金曜日だけ教えに来ている19歳の先生。
私は、中村先生が大好きで、先生の授業の時、ドキドキして胸が熱くなった。先生からあてられるとキュンとしてしまう。目と目が . . . 本文を読む
髪を黄色に染めて、耳にはピアスが三個両サイドについている。制服のズボンはずり下がり、上のブレザーのシャツはだらんとだらしなく出している。ネクタイもちょこっと巻いているだけだ。カズは高校一年生。
私とは相性が合わない。話しかけようとすると「だりー」「きちー」「ねみー」の一点張りだ。新任教師だから舐められているのかもしれない。この前も掃除をしないから叱った。ふて腐れて「だりー」といいながらしていた . . . 本文を読む
私は、あなたの事を先生と呼ばない。あだ名で呼んでいた。毎日毎日メールでやり取りしていた。悲しい事やうれしい事。何でもメールで話していた。
エロい話もまざっていた。時々暴走する癖がある先生。とまる事を知らない。時々本当に先生なのかと心配になった。
だけど、超優しい。私の事となると真剣に聞いてくれる。こんな人は他にはいない。純粋で、他人の為に心から、心配して、何よりも愛を語るのが好きな人だ。
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