それから3年後。
準は、ビシッとしたスーツに身を包んで、よりこの成人式に出席していた。
三年前の約束を果たすためだ。
文化センターの館内は広く、千人くらいの成人がこの日を迎えていた。市の偉い人が何人か挨拶があった後、よりこが成人代表でスピーチをしている。
振袖を着ているよりこは、読者モデルのように綺麗だった。
挨拶が終わると、市長が礼をして、よりこがステージから私たちの方を見て、微笑 . . . 本文を読む
サンタクロースが今にも目の前を通り過ぎていきそうな夜。行きかう人は何かを忘れているかのような錯覚をして、この年が無事に過ごしてきた事を感じる。
準は、小さな白いショートケーキを買った。
亜矢子とクリスマスを祝う為だ。時間通りに彼女はやってくる。歯医者が終るのが8時で、心の準備をする時間はタップリあった。
今日こそは、亜矢子に告白をすると準は密かに思っていた。
BARのドアが開くチリンチリ . . . 本文を読む
北風が通り過ぎていく。紅葉が色づく並木道を通り、鉄平は大学の学園祭のステージで熱唱していた。
駅で歌っていた甲斐もあって、先輩からバンドをするからボーカルしないかと誘われてこうやって歌う事が出来た。
歌手になる夢の前座だと思えばやる気が出た。
鉄平が歌を歌い終わると拍手が鳴り止まないくらいに凄かった。思ったよりお客のウケがよかった。
アンコールをもう一曲歌って、鳴り止まない拍手の中ステー . . . 本文を読む
ジメジメとした梅雨が終わると、入道雲がモクモクと上がり、蝉の声が聞こえてくる夏になるのだった。
白の半そでにチェックのミニスカートの学生服を着ているよりこは、学校の帰り、コンビニによってファッション雑誌を立ち読みした。木村タクヤが表紙でかっこよかったので目についたからだ。
大人の恋愛について書かれてあった。
私にはよくわからないと雑誌を置き、一通りドリンクまで一周して、何も買わずにコンビニ . . . 本文を読む
純は、朝は高校の非常勤講師をしている。大学の頃に国語の教員免許を取っていたからだ。近くにある高校に一日2、3時間の授業を受け持っている。子供が好きだという事と、教師に憧れを抱いていた事が関係があるのかもしれない。
夜になると実家がBARを開いている事もあり店を手伝っていた。
夜の7時から開くBARは、長いカウンターがあり、店内では静かなジャズが流れていた。親父がジャズが好きなので、流している . . . 本文を読む