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世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

3.夏休み

2022年08月13日 | 夏の物語
 入道雲がもくもくとソフトクリームみたいに上がっていた。
 家の近くに小学校の運動場がある。渡り廊下を抜けて、石段の階段があり、木々が生い茂っている所で、蝉を取っていた。木のおかげで日陰になり、真夏の暑さが1度ほど低く、涼しく感じた。
 運動場では、ソフトボール大会の練習があっている。
 ケンボーが木にとまっている蝉を見つけると、網でゆっくりとかぶせようとしたがおしっこをかけられて、逃げられた。田中は横で、虫捕りカゴを準備して、すぐ蝉を入れるようにしていた。
 ケンボーが「きたっねー。」と言って、服の袖で顔を拭っている。
 「蝉捕まらねー。」飽き飽きしている田中が地面に寝そべった。
 「蝉取り止めて、お化け見に行かないか?」
 「面白そうだな。」
 二人蝉取りをやめて、横に倒していた自電車に乗り込む。
 立ちこぎして行くと、側に運動公園がある。
 近くに大きな家があり、周りは草が伸び放題であれていて、壁は苔だらけだった。
 その家で、女の幽霊が出てくるっていう噂が学校中で広がっていた。
 自電車を玄関の前に止めて、田中が先に入る。草が体にまとわりつく。
 ケンボーも後ろをついていく。
 玄関前に来て、イヤホンを鳴らしたが、壊れているのか鳴らなかった。ドアも開かなかった。誰もいないみたいだ。
 横の窓は黒いカーテンが閉まっていた。
 田中が横の窓のカーテンの隙間から覗き込むと、「わぁー」と言って、尻もちをついた。ケンボーも急いで覗き込む。
 ケンボーも声を上げて、倒れた。
 隙間から見えたのは、血走った大きな目玉だった。
 外の光が遮って、カーテンのせいでよく見えなかったが、確かに大きな目玉がこちらを見ていた。
 二人とも倒れると、雷が鳴り、さっきまで、晴れていたのに、大雨がザーと降り出した。
 怖くなり、ずぶ濡れになりながら、自電車に乗り、猛スピードでその場から逃げた。
 「あれはなんだ。」
 「目玉だったよな?」
 「こえー。」と言って、逃げた。また、ピカッと光り、ドーンと雷が近所に落ちた。
 ゴロゴロとなっている。自電車を放り投げて、急いで、近くの郵便局の屋根で雨宿りした。
 「ここなら大丈夫。避雷針があるからな。」田中が言った。
 「そうだな。急に雨が降るなんてついてない。」大雨になったら、あの鳴いている蝉達はどこに帰るのだろうか?とふと思ったが、大雨を見てるとどうでもよくなった。
 夏休みが明けて、学校がはじまると、妖怪目玉が出た話をケンボーがみんなにしていた。
 担任の先生が、夏休みの友を返している。
 田中が書いた大きな目玉の絵と大雨が降り続く家の絵と蝉取りがうまくいかなかった日の日記の所には、担任の先生から「よくできました。」の赤い判子と「良い夏休みでしたね。」と一言添えられていた。
 それを見た田中は、「どこがだよ!!」と思った。

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