タカシは、学校で受けたテストの答案が悪くて家に帰りづらかった。
そろそろ辺りも薄暗くなって来ている。一歩一歩と足に鎖がついているみたいに重かった。下を向いて歩いていると山道に入り込んだ。
そういえばこの道は通ったことがない。昔の言い伝えで入ってはならないと聞いた事があった。
今夜は綺麗な月が出て、獣道を照らし影を作っている。タカシは大きくなっている自分の影を踏みながらもっと奥の道に入ってい . . . 本文を読む
自分の部屋に戻ると疲れていたのかいつの間にか寝ていた。
君と出会ったのは、五年ほど前になる。もうそんなになるのか。
海が見える家に住んでいたね。
俺が海で声をかける女の人から振られるのを見ていつも君は笑っていた。
毎日毎日その姿を見に来ていたから、三日目くらいに声をかけたんだ。
「そんなに笑う事ないだろう。」
「だっておかしいんだもん。」
「何がだよ。」
「やり方がまずいんじゃな . . . 本文を読む
住んでいる都会から車で一時間行った所に海が見える田舎町がある。そこを抜けると大きな墓地がある。戦争で死んだ人が埋まっていると聞いた事があった。
墓地の上の方に段差があり、小さな墓石がある。側の海が見える展望台があり、静かな波の音が聞こえてくる。
薔薇の花束を持って墓の前にいる綾小路寿久。茶色のジャケットが海の風に揺れていた。
「久しぶりだな。ここに来るのは何年振りだろう。だけど、君を片時も . . . 本文を読む