恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

5.観音様

2023年10月15日 | 物語
 毎日毎日、残業である。14連勤は当たり前、過労死寸前で、疲れていても眠れない。  上司からは罵られ、殺したくなる。  不眠症になってどれくらいたっただろうか。  1年、いやこの会社に入ってからだから3年くらいだろうか。鏡を見ると死んだ親父にそっくりで、頬はこけて、目の下にくまが死相の様に出来ている。  フラフラと会社を後にして、帰る。  深夜1時、この時間だと電車もバスもないだろう。  家まで、 . . . 本文を読む

4.踊るサンタ

2022年12月24日 | 冬の物語
 ジングルベルの音が聞こえてくる12月24日クリスマスイブ。  2階の部屋にいるケンタが枕元に靴下を置いて、寝る準備を始めた。窓からは、ヒンヤリとした空気があり、雪がフワフワと降っていた。1階では、サンタに扮した父親がプレゼントを押し入れから出して、椅子の上に置いて準備をしている。  夜中を0時回った頃、もうそろそろ寝ただろうと思い2階の部屋のドアを少し開けると布団にくるまっているケンタの姿が見え . . . 本文を読む

3.夏休み

2022年08月13日 | 夏の物語
 入道雲がもくもくとソフトクリームみたいに上がっていた。  家の近くに小学校の運動場がある。渡り廊下を抜けて、石段の階段があり、木々が生い茂っている所で、蝉を取っていた。木のおかげで日陰になり、真夏の暑さが1度ほど低く、涼しく感じた。  運動場では、ソフトボール大会の練習があっている。  ケンボーが木にとまっている蝉を見つけると、網でゆっくりとかぶせようとしたがおしっこをかけられて、逃げられた。田 . . . 本文を読む

2.蓮の花

2022年08月11日 | 夏の物語
 子育てに悩み、あてもなくブラブラと子供3歳と5歳を連れて、歩いていた。  古びたバス停があり、子供は椅子に座らせた。  裏に溜め池があり、蓮の花が所々に咲いている。私はガードレールから蓮の花を見ていた。  ふとバス停の中を見ると、おばぁさんがいつの間にかいて、子供に「あんた何歳ね?」と話しかけて、飴を渡していた。  子供は私の顔を見て、もらっていいの?みたいな顔をして、私はおばぁさんにお辞儀をし . . . 本文を読む

1.祭囃子

2022年07月07日 | 夏の物語
 君に会えるのは、一年に一度の祭りの日。  屋台が並び、焦げた香りが周りを包んでいる。中にある神社の鳥居前での待ち合わせ。  君は先に来て、立っていた。髪は長くて、白色と水色の模様が入った浴衣を着ている。どこからか祭囃子の音色が聞こえてくると、君はそれに合わせるかのように鼻歌を歌った。  屋台の前を一緒に通り、綿あめを買ってあげると喜んだ。  山を少し登ったところにお参りするところがある。君は、手 . . . 本文を読む

20.可惜夜 ~あたらよ~

2022年06月25日 | 若い恋
 居酒屋で友人たちとちょっとした集まりがあり、話していると、カウンターにいた先輩が「ちょっと店が忙しいので、駅に妹を迎えに行ってくれないか?」とバイクの鍵を渡した。  集団はあまり好きではない。その事を察してくれたのか、先輩が気を利かせてくれたのかもしれなかった。ドアを開けると、葦簀の間から南風が吹き込んできた。  外に止めてあったバイクに乗り込む。二人乗りでヘルメットも2個ついていた。  妹は確 . . . 本文を読む

19.走馬灯

2022年05月15日 | せつない恋
 40年ぶりの同窓会の帰り、タクシーで急に胸が痛くなり、意識が朦朧としている中で、救急病棟についた。    木漏れ日の中、教室の窓から差し込む南風が心地よい。白いカーテンが揺れている。  黒板に何かを書いている先生。隣には、レミがいた。  ポニーティールに髪を結び、一生懸命先生の言っている事をノートに書いている。  そういえば、レミはこんな感じで、いつも横顔ばかり見ていた。  ちらっと私の方を見た . . . 本文を読む

18.おばあちゃんと孫

2022年01月15日 | 家族
 大好きなおばあちゃんは、私が20歳の成人式を見ることなく亡くなった。  地方の大学に合格して、おばあちゃんの家から近いという事で、1人暮らしのおばあちゃん家から通うようになった。  おばあちゃんは、快く迎えてくれた。  一軒家で、広々とした畳の部屋があり、仏壇が置かれてある。家に入ると、ツンとしたお香の香りが漂っている。  おばあちゃんの匂いだ。  大学で嫌なことがあったり、アルバイト先のコンビ . . . 本文を読む

17.クリスマスの幽霊

2021年12月20日 | 冬の物語
 リビングに長いテーブルが真ん中にあり、クリスマスケーキが置いてある。  妻がキッチンの方にいて、ゆうたが隣に座っている。  私は、向かいに座って見ていた。ケーキの隣には、さっき食べたチキンの残骸が残っている。  私がケーキの上にろうそくを立てて、火を点けた。それを見た妻が電気を消して、ゆうたが、息を吹きかける。ろうそくの火が全部消えた。  「メリークリスマス。」と言うと、妻が部屋の奥からプレゼン . . . 本文を読む

16.定食屋

2021年12月19日 | 冬の物語
 コロナが少し治まり始め、うちの店もやっとお客が戻りつつある。国の助成金を申請しているが、なかなか下りない。政治家たちは、何もしなくても、一日百万円の臨時交通費などが支払われていて、ムカついていた。  暖簾をくぐり、作業着をきているごつい男の人がスキンヘッドにタオルを鉢巻をして、店に入ってきた。  「いらっしゃいませ。一名様ですね。」  「兄ちゃん、定食いっちょうね。」とカウンターに座り、頼んだ。 . . . 本文を読む

15.文化祭

2021年10月21日 | 若い恋
 放課後の学校は、生徒がいるにもかかわらず、なぜか薄っすらとしている。  夕暮れ時で、野球部の「さーこーい。」という掛け声が時折、運動場から聞こえてくる。  もうすぐ文化祭で、居残りで準備をしていた。出し物はよく分からないばぁさんが毒リンゴを持って、狼を退治するような喜劇のようだった。段ボールで、木を作ったり、葉っぱを形どったものがざっくばらんに散らばっていた。  隣の男子は、段ボールを刀に見立て . . . 本文を読む

14.粉雪

2020年12月24日 | 冬の物語
雪が今にも降りそうな夜、 「子どもが幼稚園の教室に入らなくて困ってるのよ。」母親が心配して父親に話している。 「そうだな。せいやは人見知りで、友達がいないのが心配だな。明日朝、俺が幼稚園に送りに行って様子見てくるよ。」 次の日の朝、せいやがいきたくなさそうな顔をして、俯き、靴箱の前に座っている。 何とか手をつなぎ「真っ赤なお鼻のトナカイさんは~」と歌を歌いながら、幼稚園に向かう。 先生に挨拶をして . . . 本文を読む

13.金木犀の香り

2020年10月25日 | 秋の物語
朝8時にパンパンパンと澄んだ空からピストルの音が聞こえてきた。 今日は、運動会。赤色の鉢巻きをはめ、体操服を着て、学校に向かう。 ひんやりとした秋風が学校の通り道にある枯れ木を揺らし落としていた。 走るのが苦手な僕は、この日は気が重かった。 運動場に着くと、全校生徒集まってて、校長の挨拶があり、ファンファーレが響き渡って始まった。 その後、玉入れ競争や、応援団の演目があって、次に僕が出る教室対抗 . . . 本文を読む

12.お母さん

2020年04月27日 | 家族
 都会から、久しぶりに故郷に帰って来たのはいいが、母の様子がおかしかった。  家の鍵を閉めたかどうかを何度も聞くし、鍵の場所も何度も探している。  父は、物心ついた時にはいなかった。私が小さいころ愛人と逃げたようだった。母には父親の事を色々聞きたかったが、知らぬふりをしていた。  母一人で、私を育ててくれたのはよかったが、子供の頃から迷惑ばかりかける娘だった。  暴走族の総長と仲良くなり、バイクに . . . 本文を読む

11.ラーメン屋

2019年11月05日 | 家族
 ラーメン屋の店内は、天井や壁紙は油で色あせ、無造作に置かれたストーブは、壊れてるのか、ウィンウィンと変な音が鳴っている。真ん中に汗まみれの店主が競馬新聞を広げて座って、貧乏ゆすりをしていた。  親父と入ると、「いらっしゃいませ。」としわがれた声で競馬新聞をたたんで、横に置いた。  古びたカウンターがあり、席に着くと、壁に貼られている油がついたメニュー表が一枚ずつ目につく。印刷してある字なのか、自 . . . 本文を読む