恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

14.夏の美少女

2009年07月18日 | 夏の物語
 照つける太陽。モクモクと上がる入道雲。
 額から流れ落ちる大量の汗。
 古びた駅のホームで仕事帰り電車を待っていた。
 派遣社員という立場はどうもシックリ来ない。
 机に向かい、ひたすら書類作成。コピーをとり、専務、常務の機嫌取りをして、何が楽しいのだろうか。
 前の会社でリストラになる前はよかった。
 仕事も順調で、何もかもが輝いていた。不景気、経済後退。総理大臣何をやっているのか。もうウンザリだ。
 このまま、電車に向かって飛び降りてもいい。俺一人死んでも誰も悲しむ奴なんてこの世にいないだろう。
 電車が中々来ない。確か一時間に一本だったか。こんな田舎じゃ当たり前か。
 駅の中にある木のイスに座って、線路の中の揺れている蜃気楼を見ていた。
 何分かじっと見ていると、いつの間にか隣に女子高生が現われていた。
 多分、学校帰りか何かだろう。ブレザーの制服で、ミニスカートがよく似合っていた。バックを両手で前に持っている姿が可愛かった。
 私がもう少し若ければ、あんな子と恋をしたかったけどなと思っていると、さっきまで晴れていたのに雷が鳴った。
 「キャー。」と叫びかがむ女子高生。
 「雷苦手なの?」話しかけると女子高生は、「とっても苦手です。」と答えた。ギコチナイ返事が、自分の歳を感じた。
 「そうなの。俺も苦手だよ。」と言うと、女子高生は、笑った。その笑みは、クスクスと漫画でありそうな上品な感じだった。
 もう一度雷が鳴り、雨がザーと降り始めた。
 「まさかこんな雨が降るとは思わなかったね。」
 「えぇ。私も傘持ってきてない。」二人少し濡れて駅の屋根の下へとうつった。
 私がハンカチを女子高生に貸すと、「ありがとうございます。」と言って、顔と首筋を拭った。
 その姿を見て、不埒な考えが横切った。それをごまかす様に、線路の方へと目をやった。
 「ハンカチ可愛いですね。今度洗って返します。」
 「いや別にいいよ。あげるよ。」
 「優しいんですね。」と言って、二人ひたすら降る雨を見ていた。
 「電車がホームに入ります。白線の内側にお下がりください。」というアナウンスが流れ、その後にゆっくりと電車が入ってきた。
 二人で雨をよけ、電車に飛び乗った。
 電車の中で会話は一切なかった。何かを話したかったが、これ以上話さないほうがいいような気がしていた。
 一駅、二駅と過ぎて、隣の女子高生が小さな声で「じゃ、ここで降ります。」と言って降りた。
 私がシドロモドロで頷いた。
 ドアが閉まり、窓越しで、女子高生がハンカチを握りしめ何度も振っていた。
 帰り道、雨に濡れている女子高生の笑顔がずっと頭から離れなかった。
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2 コメント

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せつないですね・・・ (ぽゆ子)
2009-07-28 13:49:59
蝉の声が降り注ぐ中

郊外の風景を思い浮かべています。

この男性の心持ちが

今のわたしにはわかる気がします。

これ以上話さない方がいい。

そんな奥ゆかしさが

とてもせつなく
でも

それがよいのです。

深くてやさしい。

そういうものを

誰もが忘れてはいけないのです。

しみじみと

そんな想いを

抱きしめています

・・・・・。


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美少女 (kibooo)
2009-07-30 20:39:37
 常夏の島で、美少女に抱かれたいなんて、妄想を抱きながら夏を過ごしています。(笑)
 
 朝、電車が一緒の可愛い女子高生に好意を抱いていますが、中々難しいところです。
 私の方を恥かしそうに見るんですよね。
 私がずっと見ているからか(笑)

 私はもうオジサンですから、歳を考えないといけないですよね。
 どうしましょう。
 
 もう夏だというのに、彼女が出来ていない。
 さぁもう一度夢を見る事にしよう。
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